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総務の仕事。「アウトソーシングの活用」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務の仕事。「アウトソーシングの活用」

アウトソーシングが遅れた理由

前回のコラムで記した業務改善の方法、「やめる、減らす、変える」。その中での「変える」とは、担当する人を変える、という意味も含まれます。総務業務の全てを総務のメンバーが行う必要はなく、誰でもできる仕事や専門家に任せた方が良い仕事をアウトソーシングする、という方法があります。

むしろ戦略総務的には、作業や管理業務をアウトソーシングしてしまい、総務メンバーは考える仕事、戦略立案に特化し、会社を変える取り組みを行うべきでしょう。今回はアウトソーシングについて、そのメリット、考慮すべき点など、改めて基本的なところをご紹介していきましょう。

総務の業務の中で世界から遅れているのは、アウトソーシングの活用の仕方と言われます。日本ではアウトソーシングとは言っても、単純作業の外注がほとんどではないでしょうか? これはアウトソーシングではなく「アウトタスキング」と言われます。業務(タスク)を外に出す、業務の実行部分だけを外部に委託することを指します。

世界で言われるアウトソーシングは、戦略立案をはじめ、業務設計、管理責任、業務実行の全てを外部に委託する形態を言います。ですから、世界ではアウトソーシングではなく、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という言葉で表現されます。アウトソーシング戦略を構築するところから、ノウハウを有する委託先を活用することです。

外資系企業の日本法人では、総務部には部長が一人いるだけで、あとは全てBPOの方が常駐して仕事を行う光景をよく見ます。グローバルではそれがスタンダード。日本は業務だけをアウトソースし、世界はアウトソーシング戦略から委託する。この差が30年あると言われる所以なのです。

なぜ日本では、BPOがなかなか進まないのでしょうか? 一つの理由として「何でも自前で対応してきた」というこれまでの経緯があります。ほとんどの社員が無限定社員で、明確なジョブ・ディスクリプションがない中、全て自前主義で対応してきたのです。「外部にお金を払うのであれば、何でも対応してくれる自社の社員に任せよう」という選択になり、社員もそれに応えてきました。特に、総務部門は他の部門がやらない仕事、本来社員がやるべきでない仕事まで引き受けてきたケースが多いのです。

また、総務の仕事に対するイメージにも課題があります。「誰でもできる仕事」「専門性は必要ない」というイメージが根強く、外部委託など検討すらされなかったのです。


BPOのメリットとデメリット

では次に、アウトソーシングを行うメリット、アウトソーシングをする際に考慮しなければならない点、デメリットについて紹介いたします。

メリット

  • 総務内の限られたリソースをよりコアな部分、重要な仕事に集中させることができる
  • 専門企業に蓄積されたノウハウの活用によって業務プロセスを最適化し、効率的な業務運営が可能となる
  • 専門知識やスキルを持つスタッフが業務を担当するので、法改正への対応や、最新のIT技術の導入などが可能となる
  • 業務が見える化され、誰でも対応できるようマニュアルが整備され、業務の継続性が確保される
  • ISMSやプライバシーマークの認証を取得している事業者も多く、適切なレベルのセキュリティが確保される
  • 業務の効率化やスケールメリットにより、コストダウンが期待できる

デメリット

  • 業務がコントロールできなくなる危険性がある
  • 業務を丸投げしてしまい、その業務に精通したメンバーが異動などでいなくなると、アウトソーシングした業務の中身が分からなくなり、ブラックボックス化してしまうことがある。委託しても、しっかりと管理できる体制が必要
  • 緊急対応がしにくくなることがある。内部で対応していれば何とでもなることが、委託先の対応時間などで機能しなくなることもある
  • 情報漏えいなどのリスクが高まる(この点は実際に事件も発生しています)

アウトソーシングをすることのデメリットは、アウトソーシングにより、業務プロセスの分断と外部に任せることのリスクが生じることです。


アウトソーサーとの関係

委託先、アウトソーサーとどのような関係を構築するかも大事なポイントです。目的がコスト削減のみであれば、あるいは単純作業であるならビジネスライクな関係で良いでしょうが、委託業務の改善や改革を望むのであるなら、パートナーとしての関係構築が必要です。

必要な情報は提供しつつ、業務目的を共有しながら、ともに作り上げていく姿勢が必要です。パートナーとして対等な関係で向き合うべきです。その専門性をリスペクトすべきです。そして、アウトソーサーの専門性を十二分に引き出すには、あれやれこれやれと指示をするのではなく、「こういうことが課題である」「これを目指している」と伝え、アウトソーサーに考えてもらう話し方が望ましいのです。むしろその方が、アウトソーサーのモチベーションが上がるはずです。

ただ、どちらにせよ、委託先企業の厳正な評価、積極的な評価による適度な緊張感は必要でしょう。そして、業務に精通した、委託先のスタッフを管理できる人材の育成も必要です。企業を取り巻く環境変化が激しい現在、一度委託した内容がずっとそのまま、ということはあり得ません。変化に応じた要求や改善は、自社の人間により的確に指示しなければなりません。委託先の事業者を進化させることも、自社にとって大切なことなのです。

アウトソーシングを考える場合に必要なのが、企業全体で考えることです。自社に対して総務がやるべきことは何なのか。その業務を行うためには、総務は何を強化すべきなのか。強化のための効率化、外部リソースの活用、そのためのアウトソーシングという流れです。決して自部門だけの視点で考えてはいけません。

そして、アウトソーサーの持つ情報やナレッジ、企業事例を活用するとともに、実際にアウトソースすることで総務にリソースを作り、会社を変える仕事に取り組むのです。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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戦略総務の実現の仕方・考え方

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