総務の仕事。「メンタル不全への対応」
総務から会社を変えるシリーズ
なぜ、自分は上手くいかないのか?
在宅勤務によりメンタル不全が生じているという声をよく聞きます。その大きな原因の一つに、気軽に誰とも相談できず一人で悩みを抱え込む、というものがあります。そこから抜け出せない負のスパイラルに陥ってしまうと、悪化の一途を辿ってしまいます。
日ごろから少しでも悩みを抱えたら声に出し、相談できる先輩や悩みを共有できる仲間がいれば、早期に立ち直ることもできるでしょう。それが在宅勤務ではままならないのです。しかしこの悩みは、在宅勤務が減って出社率が高まれば解決する悩みでもあります。コミュニケーションの機会の問題だからです。一方で、下記のような悩みではどうでしょうか?
「なんで上手くいかないのだろう?」
「どうすれば対応できるのだろう?」
そして、それが繰り返されると、
「なんで自分だけがこのように上手くいかないのだろうか?」
他のメンバーは大丈夫なのに、自分だけがだめなように感じ始めてしまいます。
しかし、決して自分だけが苦しんでいるのではありません。平然と仕事をしている同僚も、今をときめく社内のスーパースターも、同様にもがき苦しんだ時期がきっとあったに違いありません。
社内報の企画に、「みんな悩んで大きくなった」というものがあります。伝説と言われる社内のスーパースターの苦悩の時期をあぶり出した企画です。その当時、何に悩み、それをどのように克服していったのか。悩んだことは、今の自分にとってどのような意味があるのか。インタビュー記事で詳細に記しています。
読者は、こんな感想を寄せています。
「あの先輩も悩んでいたなんて。何か救われた気がしました」
「私が現在悩んでいることなんて、ちっぽけなものに思えました」
「今を乗り切れば、きっと大きく成長できると感じました。思いっ切りもがきます」
会社人生において悩まない人はいません。誰もが当然悩み、そこから大きく成長しているのだ、というストーリーのある社内報企画を展開してはどうでしょうか。きっと若手を中心に元気づけることができるでしょう。
社内SNSで悩みを解決
悩んでいても、はた目には普通に仕事をしているケースもあります。むしろ、気丈に明るく振る舞っているかもしれません。「まさか、彼がそんなに悩んでいたとは」。はた目からはなかなか気づかないことも多くあります。悩んでいる人から、その悩みを表明させる仕組みがあったらどうでしょうか。
今の若手は、リアルなコミュニケーションにおいて傷つくことを嫌います。SNSを通じて、そこはかとなく意志を表明し、共感してくれる人を求めます。SNSで悩みをシェアし、コミュニケーションが始まります。
平均年齢が若い企業で頻発している「トイレ問題」をご存じでしょうか?
仕事で行き詰まり、あるいは仕事でストレスを感じると、トイレに籠り、SNS上でストレスを発散するのです。トイレに行って長時間帰ってこない。トイレに長時間籠ることでいろいろと問題が生じているのです。
社内SNSを運用している会社も多くなってきています。フェイスブックなどと異なり、会社の公式メディアですから、なかなかストレートに本音を吐くことは少ないかもしれません。しかし、ある課題が解決せず、それによりストレスを抱えているのであれば、その課題についての解決策を求めるためにSNS上で表明することは敷居が低いのではないでしょうか。
活用を促すのであれば、まずは先輩社員に積極的に投稿してもらい、先の社内報企画ではないですが、先輩も悩んでいるという実態を見てもらうことが必要でしょう。また、開設当初は、このようなお悩み投稿を、運用事務局から知り合いに頼んでお願いすることがポイントです。「さくら」ですが、当初は必要でしょう。
また投稿されたものについても、事務局側で回答者を個別に見つけて回答の投稿を依頼するなど、ここでも「さくら」作戦を行います。社内SNSは、放っておいても決して活用されません。
投稿する人がいるんだ、投稿すると回答が寄せられるんだ、というイメージ作りをしていけば、自主的に活用する人が出てくるものです。
何者かが分かる名札と人物事典
オフィスの世界ではフリーアドレスが流行っています。コミュニケーション活性化を目的として、多くの企業が営業部門を中心に導入しています。しかし、フリーアドレスにも一つの前提が必要です。今日、横に座った人が誰か分かる、という前提です。つまり顔見知りであることが、フリーアドレスの効果を高めるには必要となるのです。そうでないと、声を掛けられないからです。見ず知らずの人に積極的に声を掛けるのは勇気がいり、いちいち自己紹介しないといけないのであれば、それも面倒なことです。
顔見知りの少ない新入社員と中途社員にとって、フリーアドレスは酷なオフィスであるという話を聞きます。声を掛けようがないからです。それをサポートする意味でも、顔写真の掲載された人物事典を発行しておくのは効果があるでしょう。
紙で発行するかイントラ上に置いておくかは別として、その情報を基に会話をするきっかけを提供しておくのです。職歴や仕事上での得意分野、趣味やマイブームなどのプライベート情報を掲載しておきます。会話はそのきっかけがないとなかなか始められないものです。
また、顔は分かっても氏名が分からない、ということもあるでしょう。隣に座った社員が誰なのか、氏名が分からないと呼び掛けることができません。そこで、大きめの名札を付けるか、大きめのネームプレートを机に置くなどして、自分が誰なのかを明示します。
このような仕掛けをしておけば、誰がそばにいて、その人はどのような経歴があり、きっと私の悩みを聞いてくれるだろう、悩みをシェアしてもらえるだろう、だからちょっと声を掛けてみよう。そんな後押しができるのではないでしょうか。
「ちょっといいですか?」
ちょっと声を掛けてみたいが、ここで悩みは話せない。でも会議室を予約するほどの話ではない。もっと気軽にざっくばらんに話をしたい。そのような声に応えるために、気軽に打ち合わせができる“ちょいミーティングスペース”を設けてはいかがでしょうか。
今、ファミレスタイプの背の高いソファを導入する企業が増えています。社員も好んで使うそうです。さらにその周りを吸音効果の高い間仕切りで囲えば、音が外に漏れないのだとか。あるいは、通路スペースに小さな丸テーブルとパイプ椅子を数多く設置して、誰でも予約なしで使える状態で開放しておく。そんなすぐに相談や打ち合わせができるスペースがあれば、声も掛けやすくなるでしょう。
その他に、リフレッシュスペースの設置があります。コーヒーサーバーや自動販売機が利用できるコーナーです。開放的なスペースデザインにして、声を掛けやすい状態を醸し出します。テーブル間の距離を取り、込み入った話もできるように配慮してあげます。
悩みの相談のため、忙しい先輩や同僚を外に連れ出すわけにもいきません。でもオフィスの中で、仕事の延長で話をするのは気が進まない。そんな声に応えるために、オフィスとは雰囲気の大きく異なる、こんなリフレッシュスペースがあれば、勇気を出して相談できるのではないでしょうか。
いずれにせよ、メンタル不全に対して企業ができることは、コミュニケーション活性化です。日ごろからコミュニケーションが取りやすい状態を仕掛けておくことが大切です。今回は、悩みを抱えた社員が自発的に相談できるような仕掛けを紹介しました。