コンピテンシーとは?コンピテンシー評価のメリットや導入例を解説!
コンピテンシーとは、高い成果を上げている人材に共通する行動特性のことです。パフォーマンスの高い社員にヒアリングを行い、行動を分析し、企業ごとに評価基準を設けて採用活動や人事評価に活用します。
コンピテンシーは、従来のような積極性や責任感といった抽象的な評価基準に比べて、評価者による判断のブレが少ないのが特徴です。また、社員も自らの行動を基準に照らし合わせて評価できるため、改善が行いやすいというメリットがあります。
この記事では、コンピテンシーの定義やコンピテンシー評価のメリット、導入例を解説します。
コンピテンシーとは?
まずは、コンピテンシーの定義と、コンピテンシーが生まれた背景を解説します。
コンピテンシーは、個人のパフォーマンスについて行動特性の面から考える上で有効な評価基準です。
コンピテンシーの定義
コンピテンシーの本来の意味は「能力」ですが、近年は、組織の中で個人がその役割や職務において、安定的かつ継続的に優秀な成果を出すことができる人物の行動特性のことです。
人材育成の分野では、高いパフォーマンスを出す人の行動特性に目を向けて分析し、企業独自のコンピテンシーを見つけて育成する取り組みが行われています。
コンピテンシーと似た用語に、「コアコンピタンス」があります。コアコンピタンスとは、企業の活動に関する用語で、「コア」とは事業の中核を指しています。「コンピタンス」は、競合他社が簡単には真似できないような圧倒的なレベルで、顧客に価値を与える能力を指す言葉です。
コンピテンシーが生まれた背景
コンピテンシーという用語は、ハーバード大学のDavid McCelland教授が1973年に発表した論文「Testing for Competence Rather Than for Intelligence」で注目されるようになりました。
同論文では、学業成績、知能・適性テストは、外交官としての仕事の成果に対する明らかな相関関係は認められなかったと報告され、外交官としての成功を収める確率が高い人は、次の3つの行動特性が認められると結論づけられました。
- 異なる生活文化への豊かな感受性を発揮して、賢く対人関係をこなす
- 困難な相手に対しても動じずに接し、建設的な人間関係を保つ
- 政治的な人脈をすぐに作り出せる
コンピテンシーの5段階レベル
コンピテンシーを設定する際は、社員を5段階にレベル分けします。
レベルが低いほど受け身の行動が多く見られ、レベルが上がっていくにつれて主体性の高い行動が増えます。
【受動行動(レベル1)】
受動行動とは、受け身の姿勢で指示を待ち、指示されたら、そのまま指示の通りに行動することです。非主体的で、常に誰かの指示や状況の強制力によって行動するといった、思考や行動に一貫性がない行動レベルを指します。
【通常行動(レベル2)】
通常行動とは、自主的な工夫をすることはないものの、決められたことをマニュアルや教えられた手順通りに実施する行動です。
同じ状況であれば、誰が行っても同じように実施することが想定される行動レベルを指します。
【能動・主体行動(レベル3)】
能動・主体行動とは、行動の選択肢が複数あるなかで、自分で状況判断をして最適な選択ができる行動です。
一定のルールの範囲内で、より良い結果を出すために、自分で主体的に新しい方法を取り入れられる行動レベルを指します。
【創造・課題解決行動(レベル4)】
創造・課題解決行動とは、状況に合った行動をするだけではなく、課題を解決するために自分から働きかける行動です。
自分でPDCAサイクルを回して、目標達成のために効果の高い行動を考えて実行できる行動レベルを指します。
【パラダイム変換行動(レベル5)】
パラダイム変換行動とは、従来のやり方や考え方に固執せずに、自由な発想で、これまでとは全く異なる方法や状況を創り出すような行動です。
新しい発想にも関わらず、多くの人が賛同するような行動レベルを指します。
コンピテンシーの活用例
コンピテンシーには主に3つの活用シーンがあります。
評価基準が明確なコンピテンシーは、評価する側にとっても、評価される側にとってもメリットがあります。
【人事評価】
コンピテンシーは、成果を出している人の行動特性や考え方を基にしています。そのため、コンピテンシーを人事評価の基準に取り入れれば、社員はそれぞれ、自分が成果を出せる行動パターンを実践するモチベーションが上がり、評価につながるという好循環が生まれます。
【人材育成】
すでに成果を出している人の実践的な行動特性を捉えた上で、具体的に指導を行うことができます。人材育成プログラムの成果の予測が可能になり、うまくいかない場合の対策も立てやすくなります。
【採用面接】
コンピテンシーは、組織で成果を出すための行動特性を、事前にある程度明確にできます。その特性に対する応募者の現状のレベルとポテンシャルを、採用活動における判断基準として活かせます。
コンピテンシー評価とは?
ここでは、コンピテンシー評価について解説します。
似たような用語である「職能資格制度」との違いについても見ていきましょう。
コンピテンシー評価と職能資格制度の違い
コンピテンシー評価とは、あらかじめ定義された具体的な行動特性に対する評価のことです。
コンピテンシー評価で定義されている行動特性は明確で、評価基準が具体的なのが特徴です。
一方で、職能資格制度は、職務遂行上必要とされる特定の知識や能力レベルにあることを認めて、レベルごとに資格を与える制度です。
評価基準が責任感や協調性などの抽象的なものであるため、評価者によって判断が分かれます。
コンピテンシー評価のメリット
コンピテンシー評価のメリットには、次のようなものがあります。
【1. 評価基準が明確である】
評価基準が明確なので、評価者の偏見や思い込みに左右されにくく、より公平な評価を行うことができます。
【2. 評価結果に対する改善策を立てやすい】
評価結果に対して何をどう改善すれば良い評価につながるかが理解しやすく、改善行動につなげやすくなります。
【3. 人材の育成計画が立てやすくなる】
すでに成果を上げている人材の行動が基準となるため、具体的な行動に焦点を当てた内容で育成計画を作成できます。
【4. 社員のモチベーションが管理しやすくなる】
良い評価が得られる基準が明確なので、仕事に対する社員のモチベーションを高めることが期待でき、管理もしやすくなります。
コンピテンシー評価のデメリット
コンピテンシー評価のデメリットには、次のようなものがあります。
【1. コンピテンシーの定義と導入が難しい】
コンピテンシーには決まったテンプレートがありません。そのため、自社で成果を上げている人材の行動を分析し、基準を作る必要があります。人材の特定から行動分析、基準の設定までには多くの手間がかかり、コンピテンシーを導入する障壁になっています。
【2. 定義したコンピテンシーが常に期待する成果を上げるとは限らない】
定義したコンピテンシー通りに実行できても、期待通りの成果が出るかどうかはわからない点もコンピテンシー評価のデメリットです。成果を上げるためには、実態を反映しながら基準を調整する必要があります。
【3. コンピテンシーの定義が具体的であるため、事業環境の変化に弱い】
コンピテンシーは具体的な行動が定義されるため、事業環境の変化に応じて再定義が必要です。常に見直しが求められるため、労力と費用がかかります。
コンピテンシー面接とは
コンピテンシー面接とは、面接の採用基準にコンピテンシーを取り入れたものです。
コンピテンシーの基準は企業によって異なるため、画一的な採用基準と比較して、自社が理想とする行動特性を持った社員を採用できるなどのメリットがあります。
コンピテンシー面接のメリット
コンピテンシー面接のメリットには、次のようなものがあります。
【1. 面接官の個人的なスキルに頼らずに面接を実施できる】
コンピテンシー面接を導入することで、面接官は個人的な面接スキルに頼らず、行動の事実に基づいて面接を進められるというメリットがあります。
【2. 選考上のミスマッチの防止が期待できる】
従来の採用基準である学歴や志望動機とは別に、自社が求めるコンピテンシーを持った人材を採用することができ、ミスマッチの防止が期待できます。
【3. 入社後の成長ポテンシャルを予測できる】
コンピテンシー面接で応募者の行動と思考の両方の傾向やパターンを把握することにより、入社後にどの程度、成長が期待できるかを予測できます。
コンピテンシー面接のデメリット
コンピテンシー面接のデメリットには、次のようなものがあります。
【1. コンピテンシーを実践する社員がいなければ定義できない】
すでに成果を上げているモデルとなる社員がいなければ、コンピテンシーを定義することができません。社員が少ないスタートアップ企業などでは、実施が難しいのがデメリットです。
【2. コンピテンシーを定義するまでの時間と労力が膨大となる】
コンピテンシーを実践する社員を特定し、コンピテンシーの定義を作成するまでのプロセスに、かなりの労力と時間がかかる可能性があります。
【3. コンピテンシー面接だけで採用を決めることのリスク】
自社が求めるコンピテンシーを持っているかどうかだけを優先して選考すると、従来のような学歴や志望動機などの評価軸が見過ごされてしまう可能性があります。
コンピテンシーのまとめ
コンピテンシーの定義やコンピテンシー評価のメリット、導入例を解説しました。
人材育成や面接、人事評価は、企業にとって欠かせない活動です。
しかし、担当者のスキルによって評価基準にブレが生じるなど、従来の方法は評価の均質化に課題がありました。
行動特性に目を向けたコンピテンシーという考え方は、積極性や協調性といった抽象的な概念よりもわかりやすく、評価する側にも、される側にもメリットがあります。
モデルとなる社員を特定して行動分析を実施する必要があるため、導入には手間がかかりますが、自社の人事評価や人材育成に課題を抱えているのであれば、コンピテンシーが解決策のひとつになるかもしれません。
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