ラポールとは? 意味やビジネスにおける効果など基礎をまとめて解説
ラポールとは、互いに信頼し合っている状態を指す心理用語です。
営業活動や社内の人間関係でも要となるのは信頼であることから、近年多くの企業がラポールの形成に重きを置いています。
本記事ではラポールの概要に加え、どのようなときに活用できるのか、さらにラポールを築くために有効な方法などもご紹介します。
ラポールの意味
ラポールとは、フランス語で「橋を架ける」という意味で、元々はカウンセラーと患者が互いに信頼関係を築いている状態のことを指す心理学用語です。
最近では心理学の分野だけでなく一般でも広く使われるようになっており、ビジネスや家庭などにおいて、意思疎通をはかるために重要なものと考えられています。
ラポールはなぜ重要なのか
ラポール形成が行われていない職場だと、部下は常に上司の顔色をうかがい、思うことがあっても意見を控えがちです。
しかし信頼関係があれば、相手が無下に否定したり、拒絶したりしないと分かっているので、遠慮なく意見を言うことができます。
ラポールは相手の警戒心を解き、本音でコミュニケーションを取るためにとても大切なものです。また、信頼関係が築かれた状態だと互いに相手の印象がよくなるため、意見や提案も聞き入れてもらいやすくなるでしょう。
ラポールが生み出すビジネスへの効果
ラポールはビジネスにおいても、よい効果をもたらします。
まず社内ではコミュニケーションが円滑になることにより、活発に意見交換ができるため、効果的な提案や議題解決に繋がります。また、本音や悩みをさらけ出しやすくなるため、上司と部下の間でもよい関係を築けるようになるでしょう。
社外ではクライアントと信頼関係を築くことにより、成約率やリピート率の向上につながると考えられます。特に対面の営業活動では、商品力だけでなく売り手の印象も大きく影響するため、ラポールはとても重要な役割を果たします。
ラポールが活用できるビジネスシーン
ラポールの手法はビジネスでもさまざまなシーンで活用できます。その中でも主なシーンを3つご紹介します。
顧客や取引先への営業活動
ラポールの活用シーンとしてまず思いつくのは、やはり営業活動でしょう。
もちろん商品力も大切ですが、高額なものは特に、よく知らない相手から購入しようとは思えません。信頼できる営業マンが勧めてくれるからこそ、顧客側の警戒心も解け、購入したい、成約したいと思うものです。
顧客から信頼されるには、一方的に自分が話すのではなく、相手が重視する価値観や基準値を上手に聞き出すことが重要です。相手の求めるものが分かれば、こちらのアプローチもしやすくなり、成約率も向上するでしょう。
人材育成などのコーチング業務
コーチング業務の第一歩はラポールの形成と言っても過言ではありません。
なぜなら教えられる側が聞く姿勢を持っていなければ、いくら役立つことを教えたとしても、本当の意味で身につかないからです。
教えられる側から信頼を得るには、一方的に話をしたり、威圧的な態度を取ったりせず、ときには相手の話にも耳を傾け、反応を見ながらコーチングを進めていくとよいでしょう。そうすることで相手は認められていると安心し、本音を打ち明けてくれるようになります。そうした信頼関係の土台があれば、表面的なコーチングに留まらない、生きた知識を伝えることが可能になるでしょう。
会議やプレゼン業務
人は信頼している相手の話は聞き入れやすくなります。そのため会議やプレゼン業務においても、事前にラポールが形成されていると、内容に説得力を持たせることができます。
説得力がある内容のほうが、当然採用されやすくなるため、プレゼンの成功率も向上するでしょう。
ラポールを形成する代表的な5つの手法
ラポールを構築するためには、心理学で使われるさまざまな手法が有効です。ここでは代表的な5つの手法についてくわしくご紹介しましょう。
1. 相手に合わせる「ペーシング」
ペーシングとはその名の通り、相手のペースに合わせてコミュニケーションを取ることです。
それは相手の声のトーンや口調、話す速度といった言語情報に限らず、しぐさや間の取り方などの非言語情報も含まれます。
相手のペースに合わせることで、相手は無意識に自分との類似性を感じ取り、警戒心を緩めて心を開きやすくなります。一体感が生まれることで、互いに打ち解けることができ、本音での会話が可能になるでしょう。
2. 相手を真似る「ミラーリング」
ミラーリングとはペーシングのひとつで、まるで鏡で映したかのように相手の動作やしぐさを真似ることを言います。
例えば相手がお茶を飲んだら自分もお茶を飲み、メモを取ったら自分もメモをする、ほかにも呼吸や声のトーンなどを合わせることで、相手に自分との類似点を認識してもらいます。
これは自分と共通点がある相手には警戒心を解きやすいという、人間心理を利用したコミュニケーション手法です。
ただし、ミラーリングはあからさまにやりすぎるとかえって相手に警戒心を抱かせてしまいます。あくまで真似をしていると相手に気付かれないよう、さりげなく行うことがポイントです。
3. 声の調子を合わせる「マッチング」
マッチングもペーシングのひとつで、主に相手の声に着目し聴覚の情報を合わせる手法です。
会話中に相手の声が大きすぎるなどして、不快になった経験がある人は多いでしょう。このように会話の調子やテンポが違いすぎると、上手くコミュニケーションを取れないことがあります。
マッチングでは声のボリュームやトーン、速度や高低を合わせることで、相手のペースで話せるように促し、警戒心を和らげていきます。そうすることで、相手との距離が縮まりコミュニケーションがスムーズになります。
マッチングは特に電話対応など非対面のコミュニケーションにおいて効果的な手法です。
4. 相手の言葉を繰り返す「バックトラッキング」
バックトラッキングとは日本語で「オウム返し」とも呼ばれる、ペーシングの手法のひとつです。
例えば相手が「今日嬉しいことがあったの」と言ったとき、「そうなんだ」と返すより「嬉しいことがあったんだね」と返すほうが、相手は話を聞いてもらっている印象を受けるのではないでしょうか。
バックトラッキングは、話をしっかり聞いていることを相手に伝え、さらに自分の言葉を再認識してもらうために効果的な手法です。
そのやり方もさまざまで、伝えられた事実をそのまま繰り返す場合もありますが、「楽しい」「悲しい」など相手の感情を意識的に繰り返したり、話が長くなってくると要約したりすることもあります。
いずれにせよ、バックトラッキングで重要なのは、必ず相手が使った言葉を繰り返すことです。そのため、会話の中の単語はしっかり聞き取り、記憶するようにしましょう。
5. 心理状態を読み取る「キャリブレーション」
キャリブレーションは、言語以外の情報から相手の心理状態を読み取る手法のことです。人はすべてを言葉にするわけではなく、中には本音と裏腹のことを言うときもあります。
例えば、仕事で不安要素があるのに、上司に言い出せず「すべて順調です」と言ってしまうといったことは、会社ではよくあることです。そんなとき、相手の表情や顔色、しぐさなどから心理状態を読み取り、適切な声がけやフォローを行うことが大切です。
ラポールが崩れてしまった場合の対応方法
一度築き上げたラポールが駄目になってしまったら、まずはこれまでのやり取りを振り返り、どのような点で相手と認識のずれが生じたか突き止めることが大切です。
上司は手取り足取り教えたいが、部下はもっと任せてほしいと思っているなど、認識のずれは多くの場合、ラポール形成が充分でない場合に起こります。
揺るがない信頼関係を築くためには、より強固なラポールを再構築しなければなりません。
そのためには、キャリブレーションの手法を活用すると効果的です。目線や表情、しぐさなどから深層心理を読み取り、適切な働きかけを行うことが重要になります。
ラポールは企業がさまざまな活動を行う上で、土台となる重要なものです。日頃のコミュニケーションの中で少し意識を変えるだけでも違ってくるので、ぜひ実践できるよう心がけるとよいでしょう。
まとめ
ラポールを形成すると、コミュニケーションが円滑に進むだけでなく、自分の意見が聞き入れやすくなったり、成約率が向上したりといったメリットも期待できます。
ラポールを形成するには、本記事でご紹介したようなテクニックを使うのもよいでしょう。
しかしそれに頼りすぎると、かえって相手に不信感を抱かせてしまいます。
ラポールの基本は、相手のペースを尊重し、受け入れることにあります。テクニックだけに頼るのではなく、相手の話を聞くことや言語以外に現れる心理状態にも留意しながら、相手が打ち解けられるコミュニケーションを心がけましょう。