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試用期間中の従業員を解雇にしても問題ない? 不当解雇にならない理由を詳しく紹介

試用期間中の従業員を解雇にしても問題ない? 不当解雇にならない理由を詳しく紹介

経営者に解雇通告はつきもの。できればそうならない従業員ばかりであればいいのですが、結果的に解雇するという苦渋の判断に至る場合もあるでしょう。

それがもし、試用期間中であったらどうでしょうか。解雇が可能になるのか? あるいは本採用になってからなのか?

ここでは、試用期間の解雇について解説します。

また、解雇の理由や仕方によっては不当にあたる場合もありますから、理由が不当にならないポイントも実例を挙げながら詳しく説明します。


この記事の監修者
きた社労士事務所  代表 

試用期間の解雇は可能?

まずは、試用期間でも解雇ができるのかを説明します。

試用期間でも解雇はできる

結論からすると、試用期間であっても解雇は可能です。しかし、試用期間だからという理由で安易に解雇ができるわけではありません。

そもそも試用期間とは、継続した雇用を前提として採用した従業員に対し、適性の有無を見極めるための期間です。労働基準法第21条により雇用を開始してから14日以内であれば解雇予告は必要ありません

しかし、試用期間中であっても勤務を開始してから14日を過ぎている場合は、30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当の支払いが必要となります。つまり、試用期間中の従業員を解雇する場合であっても、解雇の仕方によっては不当解雇にあたる可能性もあるということです。

試用期間の労働契約

試用期間中は「解約権留保付の労働契約」とみなされ、企業側が雇用契約を解除できる権利を保有している状態となります。

しかし、企業側の一方的な理由で解雇できるわけではありません。

基本的には本採用と同様に、解雇理由に妥当性があり、社会通念上相当であると認められなければ、その解雇は権利濫用とされます。

試用期間中であっても労働契約を締結した以上、解雇のハードルは高く、安易に解雇はできません。

参考:長野労働局|解雇に関する相談


試用期間の解雇事例

過去の判例を見ていきましょう。試用期間の従業員の解雇に妥当性があるかどうかの判断基準にしてください。

試用期間中の解雇の事例1

ある企業では、従業員の能力不足により試用期間3カ月目で解雇しました。

具体的な理由は以下のとおり。

  • 顧客が緊急を要した依頼に速やかに応じなかった
  • 面接時に「パソコン使用に精通している」と言ったが、実際には簡単なPC作業もできなかった
  • 必ず出勤することになっている業務日に休暇を取得した

裁判では業務に適性がないことや、企業側が指導を行ったのにも関わらず改善されないなどの理由で、本案件の解雇は解雇権濫用にあたらないとされました。

このように、能力不足などを理由として解雇が有効となるには、労働者に対する教育訓練が十分であったか労働者の能力が発揮できる代替職場はなかったのかがポイントになります。

試用期間中の解雇についても、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として認められる場合にのみ有効とされます。

参考:全国労働基準関係団体連合会|ブレーンベース事件

試用期間中の解雇の事例2

ある企業では、新卒社員を勤務態度が不適当として試用期間4カ月目で解雇しました。

具体的な理由は以下のとおり。

  • 睡眠不足で注意力を欠き、注意しても改まらない
  • 研修中の門限を破る
  • 就業規則には「見習い期間の途中または終了時に、能力、勤務態度、健康状態等に関して不適当な者は、定められた手続きによって解雇する」と規定されていた

裁判では、企業側が注意・指導を繰り返し行ったにも関わらず改善が見られなかったことにより、本件解雇は解雇権濫用にあたらないとされました。

本案件は新卒採用の技術社員を解雇した事案ですが、技術社員としての資質と能力の適正不足改善可能性の少なさから、解雇は有効とされています。

参考:全国労働基準関係団体連合会|日本基礎技術事件


試用期間における解雇理由

試用期間における解雇理由は、本採用の従業員と何ら変わりはありません。個人的な感情や理由で解雇すると不当解雇にあたります。どのような理由なら解雇を認められるのか、ポイントをまとめました。

規則を守らない

そもそも規定を守らない従業員は解雇が認められます。解雇事由は就業規則に記載されており、原則その事由に該当する場合は解雇しても問題ありません。

ただし、状況によっては不当解雇になる可能性もあるので、慎重な判断が必要です。たとえば、「業務命令に従わない」という理由で解雇した従業員が、実はパワハラを受けていたというようなケースです。

このような場合、業務命令自体に問題があるため解雇は認められません。

遅刻や欠勤が多い

遅刻の常態化や正当な理由のない無断欠勤など、勤務状態が著しく悪く、改善の見込がない場合は解雇が認められる可能性は高くなります。

ただし、数回の遅刻・欠勤だけでは認められません。

遅刻や欠勤があった場合でも、まずは注意・指導を行ったうえで、一向に改善されない状態が続けば、解雇の検討を行いましょう。

スキル不足

期待していたスキルを満たしておらず、今後の活躍の見込みがない場合は、試用期間の解雇理由として認められる可能性があります。ただし、ほかの従業員と比べて能力が低いという理由だけでは、その解雇は認められません。

試用期間中にスキル不足が見えたとしても、指導や教育が行われるべきであり、安易な解雇は不当解雇になる可能性が高くなります。

勤務態度に難あり

上司の指示に従わなかったり、反抗的な態度を繰り返したりなど、勤務態度に難がある従業員は試用期間の解雇理由として認められる可能性があります。ただし、従業員が反抗的な態度を繰り返す理由が企業側にある可能性もあることから、慎重な判断が必要です。

単に反抗的な態度をとったからといって解雇するのは、不当解雇になる可能性が高いでしょう。

企業側も従業員に対して注意・指導を徹底して行い、改善が見られないのであれば、解雇の基準を満たしていると考えられます。

経歴詐称が発覚した

試用期間中に重大な経歴詐称が判明した場合は、解雇理由として認められる可能性があります。ただし、単に経歴詐称があったからという理由で解雇できるわけではありません。

経歴詐称があったとしても、業務に影響がなければ解雇は無効と判断される場合もあります。

たとえば、税理士の資格を持っていると偽って経理に配属されたとしても、経理業務を問題なくこなせるのであれば、解雇は無効になる可能性があります。

しかし、トラックの運転手として採用した従業員が大型免許を持っていなかったなど、業務に支障が出る場合は解雇は認められる可能性は高くなるでしょう。

参考:厚生労働省|労働契約の終了に関するルール


不当解雇になる試用期間の解雇理由

では、どのような解雇理由が不当解雇にあたるのでしょうか。いくつかの例を挙げながら見ていきましょう。

予告なしの解雇

試用期間中であっても、予告なしの解雇は原則認められません。なぜなら、労働基準法第20条で企業が従業員を解雇するには、少なくとも30日以上前から解雇予告をしなければならないと定められているからです。

しかし、従業員の重大な過失がある場合は解雇予告の必要はありません。

たとえば、2週間以上の無断欠勤による解雇や、横領・盗難を理由とする解雇などが重大な過失に該当します。

改善の機会を与えない解雇

能力不足や勤務態度の悪さがあれば、注意・指導をしなければなりません。注意・指導をせずに解雇することは、不当解雇になる可能性が高くなります。求めていた能力よりも低い場合でもすぐに解雇はせず、業務に対する指導や勤務態度の注意によって改善の機会を設けることが優先です。

たとえ試用期間中であっても企業側が改善の機会を与えず、解雇することは不当解雇にあたる可能性があります。

客観的証拠のない解雇

試用期間であっても従業員を解雇する場合は、客観的な根拠が必要です。

たとえば、「就業規則の解雇事由に該当する行為をした」「重大な経歴詐称があった」などです。

単に「気に入らないから」「仕事ができないから」では客観的に合理的な理由を欠き、不当解雇になる可能性が高いでしょう。

参考:厚生労働省|労働契約の終了に関するルール


試用期間の解雇を円満に行う方法

できれば解雇は、揉め事なく円満に行いたいものです。そのためには、法律に則って順をふむ必要があります。

試用期間の解雇を円満に行うためのポイントは次の2点です。

  1. 法律に則って解雇予告を行う
  2. 就業規則に解雇事由を明記する

1.法律に則って解雇予告を行う

試用期間中でも、14日以内に解雇しない限りは解雇予告が必要です。

実際には14日以内に解雇するケースは少ないため、基本的には30日以上前の解雇予告、もしくは解雇予告手当の支払いが必要と考えておきましょう。

また、労働基準法第22条第1項により、解雇した従業員が希望した場合は、従業員の解雇理由を証明する解雇通知書や解雇理由証明書の発行が必要です。

しかし、希望しなかった場合でも、書面を発行したほうが解雇を円満に行えると考えられます。

2.就業規則に解雇事由を明記する

従業員を解雇するには、解雇する理由が就業規則にある解雇事由のいずれかにあてはまっていることが前提となります。

そのため就業規則がない、もしくは解雇事由が書かれていない場合は、その解雇は無効となる可能性があります。

つまり、就業規則で解雇事由を具体的に列挙し、就業規則を整備しておくことが解雇を円満に進めるために大切なことです。


試用期間の解雇についてのまとめ

試用期間中の従業員の解雇について解説しました。まとめると、以下のようになりました。

  • 試用期間中であっても解雇は可能である
  • 試用期間の解雇は、理由によっては認められないものもある
  • 試用期間であっても、解雇は円満にしたほうがよい

たとえ経営者であっても、独断の偏見で解雇をしては不当解雇と訴えられることもあります。

なるべく円満解雇となるよう、法律に則って解雇予告をしましょう。

ぜひ、この記事を参考にしてください。


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監修者プロフィール

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北 光太郎

きた社労士事務所 代表

2012年に社会保険労務士試験に合格。

勤務社労士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。

2021年に社会保険労務士として独立。

労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。

法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアでも労働法や社会保険の情報を提供している。

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