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ストックオプションの制度とは? メリット・デメリットと導入手順を解説

ストックオプションの制度とは? メリット・デメリットと導入手順を解説

ストックオプションの制度は、インセンティブを与える施策として有効な一方で、種類によって税制上の扱いが異なることや、株価下落を招くリスクがあるなど、注意すべき点もあります。

本記事では、ストックオプションの概要や種類、メリット・デメリットを紹介します。導入手順やその注意点も解説するので、検討している方は参考にしてください。


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ストックオプションの制度とは

「ストックオプション」とは、株式会社に属する役員や従業員が、自社株を決められた権利行使価格で購入できる報酬制度のことです。

購入する権利を持つ従業員は、株価が上昇したタイミングで権利を行使することで、市場価格よりも低価格で株式を取得できます。そして、この株式を市場価格で売却すれば、行使価格に対する株価上昇分の差額を利益として得られます。

この制度は、権利を付与された従業員にとって企業の業績向上に対する大きなインセンティブになるのが特徴です。とくに、時価総額の低い上場前のタイミングで権利を付与するケースにおいて効果を発揮するため、スタートアップ企業と相性が良いでしょう。

起業時の実施のほか、成長途上にある企業が従業員のインセンティブを高める施策として導入に至るケースが数多く存在します。


ストックオプションの種類

ここでは、ストックオプションとして分類される5つのタイプについて解説します。

ストックオプションは、シンプルなものから内容が複雑なものまでさまざまです。導入を検討する前の知識として、それぞれの特徴を確認・理解しておきましょう。

有償ストックオプション

有償ストックオプションは、権利を付与したタイミングにおける株価で新株予約権を発行し、将来的な新株購入を義務とする制度です。

この制度では、権利行使時の株価から権利行使価格を控除した額が、新株予約権の発行されたタイミングの価格を上回っている場合に、その差額分が権利を付与された従業員の利益として支給されます。

一方で、権利行使時の株価が権利を付与したタイミングから下回っている場合には、損を被ってしまう可能性があります。あくまでも、有償である点がポイントであるため、権利を付与する従業員に対して、制度の概要と起こり得るリスクについても説明しておきましょう。

無償ストックオプション

無償ストックオプションは、発行されたストックオプションを無償で付与する制度です。

この制度では、権利を行使する従業員が、株式の売買において損を被ることがありません。また、売却前に先行課税されないため、税負担に関する仕組みが分かりやすいなどのメリットもあります。

しかし、発生した利益は税制乗給与所得とみなされるため、高い税率で課税されることに注意が必要です。これにより、株式を金融商品として扱える有償の制度と比較すると、課税額のぶん得られる利益が小さくなります。

権利を付与する従業員のニーズを汲み取った上で、どちらを選択するか決めましょう。

株式報酬型ストックオプション

株式報酬型は、権利行使価格をきわめて低価格(1円など)に設定し、権利行使のタイミングにおける株価が実質的に報酬となる制度です。つまり、株価の上昇が権利行使時の報酬に直結します

その特徴から、「1円ストックオプション」とも呼ばれ、退職金や慰労金、役員のボーナスなどとして利用されることが多い制度です。とくに、株価上昇に対して大きなインセンティブが作用するような制度となっています。

この制度を導入した場合、企業が退職金やボーナスを用意する必要がなくなりますが、従業員はストックオプションのほかに退職金などが用意されていると誤認する可能性があります。そのため、制度における報酬の取り決めを事前に行い、十分な説明とともに入念な調整をしておきましょう。

税制適格ストックオプション

税制適格ストックオプションは、従来から用いられる最も一般的なもので、この方式のみを指してストックオプションと呼ばれることもあります。権利行使のタイミングで、権利付与時より株価が上昇していれば、その差額分が報酬となる制度です。

また、税制適格条件を満たしていれば、権利行使のタイミングでは課税されず、株式を売却するタイミングのみの課税で済みます。したがって、権利付与者から見ると利益確定のタイミングで課税されるため、納税の原資を担保できるのが特徴です。

しかし、担保した原資を別の事業に投資してしまうなど、管理を怠ると納税のタイミングで現金化できなくなるといったケースに陥るリスクもあります。そのため、経理・会計部門の担当者は、注意が必要です。

信託型ストックオプション

信託型ストックオプションは、発行したストックオプションのすべてをまとめた上で、一括して信託へと預け、満了期間まで保管する制度です。

いわゆる有償ストックオプションのひとつとして考えることもできます。信託の期間が満了するタイミングで、企業での在籍年数や役職、これまの貢献度に応じてストックオプションが付与されるのが特徴です。

割当先を後から決められるため、業績や個人の成果に対して大きなインセンティブが作用します。いわゆる積立金のような制度ですが、会社の業績不振や倒産などによって消失してしまうリスクは否めません。したがって、低いリスクであっても、従業員への説明は詳細に行うようにしましょう。


ストックオプション導入のメリット

ストックオプションは、株価に対応して収入を得られる仕組みになっているため、「成果を挙げた分だけ収入が得られる」といった考えにつながるなど、従業員のモチベーション向上に寄与します。

また、自社のストックオプション制度を対外的にアピールすることで、将来的な株価上昇に期待する優秀な人材が自社に応募する可能性が高まります。

一般的に、優秀な人材の確保には多額の資金が必要となりますが、ストックオプションを有効的に活用すれば、資金がない状況でも優秀な人材が集めるためのインセンティブを用意できます。

さらに、ストックオプション制度に魅力を感じた従業員は「権利行使の前に辞めると、将来得られるはずの利益がなくなってしまう」といったマインドになることが予想されます。すると、転職や退職をためらう従業員の割合が増えるため、離職率の低下にも寄与します。


ストックオプション導入のデメリット

社内の従業員向けにストックオプションを発行する場合、既存株主の保有する株式の価値が低下します。株式の価値が低下してしまうと、保有する株を売りに出されてしまい、結果的に株価が下落するリスクが想定されます。また、株価が安いままでは、権利行使しても利益が得られず、また株価を上昇させられる展望がなければ、従業員のモチベーションが低下するリスクも考えられます。

さらに、ストックオプション制度は、株式公開が前提となるため、経営目的が株式の公開になってしまう企業があるのが実態です。そのため、ストックオプション導入前に明確な経営計画を事前に立てておかなければ、株式公開後の経営戦略が杜撰になってしまいます


ストックオプション導入手順

それでは、ストックオプションを導入するための手順について解説します。スムーズに導入できるよう、必要な手続きと流れをしっかりと把握するようにしましょう。

1. 募集事項の決定

はじめに、ストックオプションの募集要項を決めます。この段階では、権利行使する際の価格と数量、権利が有効な期間を具体的に設定します。

加えて、ストックオプションとの引き換えでキャッシュの払込が必要なのかどうかで、取り決め内容が変わります。内容としては、不要な場合の理由、必要な場合は「払込額、割当日、算定方法」などです。

また、募集要項が取締役会で決議された場合、割当日より起算して2週間以内に、株主への公告・通知義務が発生します。

2. 申込者への通知

次は、ストックオプションの申込を行った者に対して、募集要項と株式会社の称号、払込の取り扱い場所(必要な場合のみ)を通知する必要があります。

そして、申込者は氏名・住所、予定数量を記載した書面を提出しなければならないため、その旨も併せて周知しましょう。

3. 付与予定者と割当数の決定・発行をして登記

そして、申込者それぞれに対する割当数を設定していきます。

その後、新株予約権原簿を作成し、割当日より起算して2週間以内に法務局で登記を行います


ストックオプション制度の注意点

ストックオプション制度の導入にあたって、とくに注意すべき点が2つあります。

ひとつは、「株価の安いタイミングで発行すること」です。

上場したてのスタートアップ企業であればとくに問題ありませんが、株価が安定している企業が株価の高いタイミングで発行すると、利益を得られる確率が下がり、利益幅も小さくなります。

権利行使時の価格よりも株価が上昇しなければメリットを享受できない制度であるため、実施するタイミングに気を付けましょう。

もうひとつは、「ストックオプションの発行数を注視すること」です。

既存株主にとっては「株式価値の低下」につながる制度のため、ストックオプションの発行数が過大になってしまうと、既存株主にとってデメリットでしかありません。

株式会社である以上は、多くの株主に支えられていることが根底にあるため、ストックオプションの発行数を注視し、株価のバランスを考慮しながら運営するのが重要です。


まとめ

ストックオプション制度とは、従業員や役員が、自社株を決められた権利行使価格で購入できる報酬制度です。

導入により従業員のインセンティブを高められるなど、多くのメリットを享受できる一方で、株式価値の低下を招くといったリスクもあります。

安易に導入すると既存の株主から反感を買う可能性もあるため、自社内のみならず外部との調整にも十分に配慮しましょう。

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