ナレッジマネジメントとは? 手法や活用シーン、実際の導入事例をご紹介
会社で働く従業員は、日々の業務を通じて新たな知識や経験を蓄積しています。
しかし、従業員個人が持つ知識や経験は属人化しやすく、会社の資産として活かすためには知識を共有・管理するための仕組みが必要です。
この記事では、従業員が持つ知識を会社の資産に変えるための仕組み作りであるナレッジマネジメントの手法や活用シーン、導入事例を紹介します。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、従業員が日々の業務を通じて蓄積した知識や経験を、自社の資産として活用できるよう管理する仕組みのことです。
従業員が持つ知識や経験は属人化しやすいため、一か所に集約して活用できるよう仕組み化しなければ、自社の資産として活かしていくことはできません。ナレッジマネジメントは、そのための仕組みを作ることを意味します。
組織でナレッジマネジメントを行う際に重要なのは、共有して集めた知識の活用方法を考え、どのように組織全体としての価値を生み出すことを目指すのかという点です。
組織内の暗黙知や形式知といった知識資産を、「とにかく共有すればよい」と考えてしまうのは、ナレッジマネジメントの典型的な失敗例です。
定義付けを正しく行い、目的意識を持って進めることが重要といえます。
ナレッジマネジメントの手法
ここでは、ナレッジマネジメントの具体的な手法を解説します。
1. 知的資本集約型
製造技術や営業手法といった、普段は無意識に行われている業務や知的財産を社内の各部署から集め、形式知や暗黙知を顕在化させる手法です。
形式知とは、具体的な言語・図・数字などで表現され、誰が見ても理解できるような形で示されているものをいいます。
暗黙知とは、言語や図などで明確に表現されていない、特定の誰かにしか実施できない技術や、暗黙の了解的に実践されている方法・手順などを指します。
顕在化した形式知や暗黙知を、相互作用や予想外の組み合わせによって創造することで、事業に新しい付加価値を生み出すことを目指します。
2. 顧客知識共有型
知識の対象を社内ではなく顧客に向けた手法です。カスタマーサービスやコールセンターといった対顧客の業務を行う部署の知的資本を有効活用して、よりよいサービスを創り出すことを目指します。
具体的なナレッジとして、顧客の声や対応履歴などがあげられます。
顧客のニーズは多種多様である一方で、同じような内容の問い合わせや依頼も少なくありません。担当者が誰であっても同じ品質の対応ができるように、顧客対応に関する知識を効率よく迅速に共有することが求められます。
3. ベストプラクティス共有型
社内の各部署で実践され、生産性や顧客満足度などの向上が見られた成功事例をベストプラクティスとして取り上げる手法です。
手法や重要なポイントなどを他部署にも積極的に共有することで、組織全体の生産性や目標達成を目指します。
ベストプラクティスを共有すると、組織全体でベストプラクティスの実践を目指し、奨励する文化が生まれます。パフォーマンスの向上が見込めるだけでなく、所属チームの手法がベストプラクティスと認められることでモチベーション向上につながるメリットがあります。
4. 専門知識型
従業員が個々に持つ各専門分野の高度な知識をデータベース化し、データの関連付けを行う手法です。組織のあらゆる課題に対する解決案を、より効率的かつ迅速に導き出すことを目指します。
専門的な技術や知識は特定の従業員に偏って蓄積されるケースが少なくありません。ナレッジマネジメントのシステムを活用し、そのようなノウハウや知識を意図的に組織全体の知識として、くみ上げることが大切です。
組織全体のレベルの底上げを目指すことは、専門性の高い情報や知識を扱う事業には不可欠です。
ナレッジマネジメントの具体的な活用シーン
ナレッジマネジメントで得られた資産は、どのように活用できるのでしょうか。具体的なシーンを見ていきましょう。
1. ナレッジマネジメントを活用してマニュアルを作成
収集・分析した情報を、対象部署の作業や業務フローに合わせてマニュアル化します。誰が業務を実施しても効率よく、かつ同じ成果を得られるようにするのが目的です。情報が古くなることも想定し、マニュアルの更新条件や時期も決めておきましょう。
2. ナレッジマネジメントを活用して人材育成プログラムを構築
人事関連の情報を、新しく業務に加わった従業員の育成プログラム構築に役立てます。
社内キャリアパスの構築や育成計画について部署間で共通の基準を設け、必要に応じて部署ごとに調整を行います。全体的な方向性は、組織の経営戦略に沿っていることが重要です。
社員一人ひとりのスキル・経験・ポテンシャル・キャリア志向など、さまざまな点からナレッジの蓄積を積極的に行いましょう。これからの時代は、本人のエンゲージメントやモチベーションを高める要因を把握することが、組織の成長にもつながります。
3. ナレッジマネジメントを活用して新規事業の候補となる構想をまとめる
既存の商品やサービスのライフサイクルにおける、あらゆる情報やデータを駆使し、さまざまな角度から検証します。新しい事業になりうるテーマを検討するための切り口をできるだけ多く見つけて、有望な新規事業の候補となる構想をまとめましょう。
多様性が求められるこれからの時代には、全従業員の知恵・知識・経験を結集し、新しい収益の柱となるような事業の構想を創造していく必要があります。そのようなナレッジマネジメントシステムを構築することは、重要な経営課題のひとつといえます。
ナレッジマネジメントを活用する際のポイント
ここでは、ナレッジマネジメントを活用する際のポイントを解説します。
1. 可視化や共有したい情報源を明確に設定する
対象を特定せず、何でも可視化して共有することがナレッジマネジメントではありません。
どのような情報やデータを可視化し、共有すべきかを明確に設定し、その設定に従ったマネジメントを行う必要があります。何のために可視化や共有を行うのかが組織全体で明確になれば、質の高い情報を効率よく集められます。情報の管理も容易になるでしょう。
2. ナレッジマネジメントの目的を明確にする
ナレッジマネジメントの目的について、組織全体で共通の認識を持ちましょう。目的意識が薄い組織では可視化や共有の作業が行われなかったり、精度にバラツキが生じたりするリスクがあります。
例えば、顧客サービス向上のためのクレーム処理にナレッジマネジメントを導入する場合、単にクレームを減らすためという漠然とした目的だけでは、従業員の行動として適切な情報やデータの収集は促進されません。
顧客が報告したクレームの内容をそのまま蓄積するだけではなく、「どのような情報を蓄積して可視化すれば、クレームを減らすことにつなげられるのか」をあらかじめ検討し、仮説を立てる必要があります。
その仮説に基づいて、具体的な情報の活用方法や、計測する指標とともに目的を設定しておきましょう。
組織内で共通の認識を持たせるには、目的の達成度合いが可視化できるような単位や指標を使い、時間の経過と共に目的意識が薄れないように、組織内でその推移をモニターできるようにすることが大切です。
3. シンプルな方法で可視化と蓄積を管理する
知識やデータの可視化や収集の手順が複雑になると従業員のモチベーションが上がらず、ナレッジマネジメントのサイクルを継続的に回すことは難しくなります。可視化や蓄積の作業は、誰でも比較的簡単に行えるよう、手順を標準化して管理することが求められます。
ナレッジマネジメントの導入事例
ここでは、企業におけるナレッジマネジメントの導入事例を紹介します。
1. 社内問い合わせにナレッジマネジメントを導入し、業務効率化を図った事例
営業本部に全国の営業所から電話による膨大な量の問い合わせが入り、営業本部の業務に影響が出ていました。そこで、社内向けのFAQシステム(よくある質問と回答をまとめたもの)を導入して社内で利用をうながしたところ、課題を自己解決できる従業員が増え、業務効率化につながりました。
2. ECサイトでナレッジマネジメントを導入し、社員の生産性と売上の向上を実現した事例
ECサイトの問い合わせフォームにチャットウインドウを導入し、簡単な問い合わせに対しては自動応答する仕組みを構築しました。これにより、メールでの問い合わせ件数が減少し、人的リソースをほかの高付加価値業務に集中させることに成功しました。
3. 提案や顧客ヒアリングにナレッジマネジメントを導入し、社員の提案力と業務知識の向上を実現した事例
顧客へのヒアリングや提案の内容をナレッジとして社内で共有することにより、従業員の意識に変化が生じ、顧客に対する個々の提案力と関連業務の知識が向上しました。
ナレッジマネジメントのまとめ
ナレッジマネジメントの手法や活用シーン、導入事例を紹介しました。
ナレッジマネジメントを導入するにあたり、まずは自社の課題を整理しましょう。生産性向上の第一歩としておすすめなのが、テンプレートやマニュアルを活用した業務効率化です。
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