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第1回 何が変わる?サラリーマンにとっての令和3年税制改正

著者:   bizocean編集部

第1回 何が変わる?サラリーマンにとっての令和3年税制改正

2021年度税制改正大綱が2020年12月10日に政府与党で制定、12月21日に閣議決定され、その後、2021年3月に通常国会で成立しました。

本稿では、この税制改正の中で、サラリーマンに関連すると思われる項目を取り上げて解説します。

サラリーマンとは、一般には給与所得を得ている人のことを言います。したがって、税制改正で直接関係する税金は個人所得税と個人住民税となります。

給与所得者の場合、給与にかかる所得税の計算や納税処理は会社で実施しており、個人所得税や個人住民税の増減を強く意識することは少ないことでしょう。

しかし、その内容を知ることで、自分の支払っている税金を実感できるのではないかと思います。

本稿では、そのほか、贈与税や相続税も取り上げます。この改正はサラリーマンに限りませんが、一個人として支払う税金が増えるのか減るのかというのは、大きな関心事ではないかと思います。

ご自身を取り巻く税金の世界がどのように変わろうとしているのか、その一端を理解する一助になれば幸いです。


1.税制改正大綱概要

税制改正大綱は以下の構成になっています。

表題 説明
第一 令和3年度税制改正の基本的考え方 今回の改正に至る背景が説明されています。
第二 令和3年度税制改正の具体的内容 具体的な改正内容です。
現行の税制からの変更点が記されています。
第三 検討事項 今回の税制改正大綱には反映できなかったけれども、今後の税制改正には反映すべきと与党の考える事項がいくつか述べられています。

改正に至る背景から、実際の改正内容の詳細、そして今後の課題、というステップで記述されています。なお、本稿では一般になじみがないと思われる語句については、できるだけ平易な言い方で言い換えるように努めました。その結果として、多少厳密性に欠ける表現になっている部分もありますことを、ご容赦ください。

2.用語の解説

◆主な税金

税目 説明
所得税 個人の所得に対して賦課される税です。所得は10種類(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、山林所得、退職所得)に分類されています。毎年1月1日から12月31日の1年間で得た所得が課税の対象となります。すべての所得から、所得控除を引いた課税所得金額に税率をかけて税額を算出します。この税率は累進課税、つまり課税所得が多い人に高い税率が賦課される仕組みになっています。所得税は確定申告を毎年行って税務署に自己申告するのが原則ですが、サラリーマンは給与所得のみの場合は、計算期間を通して仮金額で算出された額で納税し(天引き)、年末に過不足を精算するという年末調整という仕組みが使えるため、給与所得のみの場合、ほとんどの場合で確定申告を行う必要はありません。(国税庁タックスアンサーNo.1900)
住民税 個人住民税と法人住民税があります。納付先は1月1日の居住地を管轄する地方自治体、納付は6月から翌年5月までとなっています。個人住民税は均等割という居住地で決まる部分と、所得割という前年の所得によって計算される部分があります。サラリーマンの場合、給与天引き(特別徴収)することになっています。
贈与税 財産の贈与を受けたとき、その金額に応じて賦課されます。所得税と同様に額が多くなるほど税率が上がる仕組みになっています。
相続税 相続財産に賦課されます。基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内であれば賦課されません。基礎控除額を超える財産については、各種の控除や特例があって非常に複雑です。基本的に金銭での納付が必要なため、納税資金対策も重要です。

◆その他の用語

用語 説明
課税標準 課税は通常対象となる金額に対して率で賦課されることがありますが、その計算の元になる金額を言います。
課税価格 贈与税や相続税で課税対象となる金額のことを言います。
所得控除 課税対象となる所得から減額される金額を言います。税金を算出する際の課税標準を引き下げるため、所得税を軽減する効果があります。
税額控除 税額を実額で軽減するものです。

3.サラリーマンにとってはここが変わる

個人所得課税

住宅ローン控除

住宅ローンを借り入れて住宅を購入した場合に得られる税額控除です。税制改正大綱では「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別税額控除」と記されています。この控除を受けるためには、サラリーマンでも控除を受けようとする初年度は確定申告が必要です。2年目以降は、必要書類を会社に提出することで、会社を通して年末調整で控除を受けることができます。
現行制度と改正後の制度を整理すると以下の通りとなります。

【現行制度】

  • ①対象物件:床面積50m²以上。
  • ②合計所得金額:3,000万円以下。(要は所得が多い人は対象外ですよ、ということですね)
  • ③税額控除期間:原則は令和元年1月1日~令和3年12月31日までの入居で10年間。
  • ④特例:令和元年10月1日~令和2年12月31日までに入居で、13年間税額控除。(令和元年10月1日に消費税が8%から10%への引き上げられたことに対する需要減を緩和する措置。令和元年度改正。)
  • ⑤令和2年コロナ特例:コロナ感染拡大を受けて適用範囲が広がり、新築戸建て(居住用家屋の新築)は令和2年9月30日まで、分譲住宅、中古住宅、増改築の場合は令和2年11月30日までの契約締結、令和3年12月31日までの入居で13年間税額控除。

【2021年度改正内容】

  • ①対象物件:床面積40m²以上50m²未満という比較的小ぶりな物件も住宅ローン控除の対象に拡大。ただしこれが適用できるのは合計所得が1,000万円以下の世帯です。
  • ②税額控除が適用になる契約締結期限が、新築戸建ては令和3年9月30日まで、分譲住宅、中古住宅、増改築の場合は令和3年11月30日まで、それぞれ1年ずつ延長となりました。(上記の⑤の契約締結期限が1年間延長)
  • ③入居期間は令和4年12月31日までに1年延長されています。

文字で書き連ねると一見しただけではわかりにくいのですが、大まかに言うと、現行制度では期間限定で導入されていた住宅ローン控除が、内容をさらに充実させた上で期間延長された、と言えます。

表にまとめると以下の通りです。

床面積 所得要件 入居期間
(表中の年数は控除期間)
令和元年 令和2年
1/1-12/31
令和3年
1/1-12/31
令和4年
1/1-12/31
1/1-9/30 10/1-12/31
現行 50m²以上 合計所得
3,000万円以下
原則:10年 原則:10年 原則:10年
10年 13年 13年 新築戸建:13年
(R2.9までに契約)
分譲・中古・増改築:13年
(R2.11までに契約)
令和3年度
改正
50m²以上 合計所得
3,000万円以下
10年 13年 13年 新築戸建:13年
(R3.9までに契約)
分譲・中古・増改築:13年
R3.11までに契約)
40m²以上
50m²未満
合計所得
1,000万円以下

なお、一般住宅の場合の特別控除額は以下のように計算されます。
(入居年から10年目まで)

住宅ローンの年末残高(4,000万円が限度)の1%
(入居から11年目から13年目まで)
➀住宅ローンの年末残高(4,000万円が限度)の1%、あるいは②住宅取得の税抜対価(4,000万円限度)の2%を3で割った金額(消費増税2%分の一部負担軽減)のいずれか小さい額。

住宅ローン控除については、勤務する会社に必要書類を提出すれば、年末調整に組み入れられます。上限(4,000万円)はありますが、住宅ローンの残高が多い人ほど多くの還付が受けられることになります。

税制改正要綱には、「平成30年度決算検査報告において、住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れているケースが多く、その場合、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払い利息額を上回っていること・・・(中略)・・・等の指摘がなされている」とあり、控除額が多すぎるのではないか、という問題意識が示されています。令和4年度にこれを是正することが記載されていますので、控除額や控除率の縮小を検討されていることが伺えます。

参考資料

令和3年度税制改正大綱 自由民主党・公明党(令和2年12月)
令和3年度主な税制改正 要望の概要(令和2年9月)
令和3年度税制改正の大綱の概要
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)

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