Excelで簡単データサイエンス①「データを使って一歩先の経営を!」
近年、データサイエンスやビッグデータへの注目が高まっています。
一方で、データを多数保有する大手企業ならまだしも、中小企業においては全く実感をもって語られていない言葉であることも事実です。売上データや顧客データを集めることまではしていても、十分に活用できていない企業が多いのではないでしょうか。逆に言えば、うまくデータを使うことでライバルに差をつけることができるとも言い換えられます。
本稿では、データサイエンスに馴染みのない中小企業経営者の方にも簡単に取り組めるデータサイエンスの方法を、Excelを通じて解説していきます。まずはできることから、経営にデータを生かして、一歩先の経営を目指していきましょう。
1.データサイエンスとは何か?
データサイエンスとは、統計学や情報工学など様々な分野の手法を用いて、データから価値を引き出すアプローチのことです。企業に蓄えられているデータを死蔵させることなく、売上アップやコスト改善などの価値に結び付けることと言い換えることができます。
データサイエンスは比較的新しい分野で、2012年にハーバード・ビジネス・レビュー誌が「データサイエンティストは21世紀で最もセクシーな職業」と題した記事を掲載したことから『データサイエンス』という言葉がバズワードとして広がり、認知度も一気に高まりました。
データサイエンスが近年特に注目されている理由としては、データが比較的集めやすくなったということです。スマートフォンやIoTデバイスの普及により大量のデータが入手できるようになりました。また、データ処理の手法やIT基盤技術が高度化し、従来扱えなかったような大量のデータが分析できるようになってきました。
さらには、ディープラーニング(深層学習)といった高度な機械学習技術により、データの特徴を人間が指定することなく、自ら特徴を捉え分析の精度を上げることさえもできるようになりました。
2.データサイエンスは大企業だけのもの?
ここまでの内容を自分たちには縁遠い世界でのできごとと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
大量のデータを扱わず、高度な情報技術を持っていない中小企業には、データサイエンスは関係のない分野なのでしょうか?ディープラーニングなどの高度ITが活用できなければ、データサイエンスとして意味をなさないのでしょうか?
答えは、『NO』!
データサイエンスは、「データを価値につなげること」に意義があります。
大規模データがなくとも、高度ITの活用がなくても、今ある(もしくは今後集める)データを活用し、新たな価値を生むことができるのです。その観点では、データサイエンスは大企業だけのものではなく、中小企業においても活躍の可能性を秘めています。むしろ、今までデータを活用してこなかった中小企業には、使われることなく眠っていたデータの宝の山が眠っているかもしれません。
3.データ活用のメリット・デメリット
人材が潤沢にいて定期的な配置転換を行っている大企業とは異なり、中小企業では特定分野のベテラン担当者が長年の勘に基づいて業務を行っているケースが多くあります。
では、その長年の勘は果たして正しく、会社の利益に貢献しているのでしょうか?利益に貢献しているかどうか検証できるのでしょうか?データを用い、冷静な目で判断していくことが競争の激化した現代社会を生き抜く一助となる可能性もあります。
近年、未曽有の災害や新技術、新しいビジネストレンドといった今までにないような外部環境変化が起こり、長年の勘だけでは対応できない世の中になっています。非連続な環境変化に対し、データを活用し予兆を捉え経営判断を補強し、変化に適応していくことが求められます。
また、別の観点では今後日本社会はますます高齢化が進みます。そのような中、ベテラン社員から次世代へのノウハウの継承が求められます。長年の勘といった暗黙知を、データにより可視化し、形式知化していくことも求められているのではないでしょうか。
このようにデータの利活用には、
- 勘に頼らない経営ができる
- 非連続な環境変化を予兆し、判断をサポートすることができる
- 世代交代への対応ができる
といったメリットがあるのです。
逆に、データを利活用することによって生じるデメリットはないのでしょうか?
まず、挙げられるのはコストの問題です。データサイエンスを担う人材がおらず、データを活用する際に人材の育成や外部機関へのアウトソースが必要となる場合にはコストが発生します。
しかしながら、コストがボトルネックになる以前に経営者自身もデータを活用し価値を生み出すといった思想自体を持っておらず、データサイエンスを経営に生かすといった発想自体がない場合の方が多いのが現状ではないでしょうか。
4.Excelでデータサイエンスを始めてみよう
データサイエンスに全く馴染みのない方にとっても手軽に始められる方法として、Microsoft OfficeのExcelを活用するのがおすすめです。
本格的なデータサイエンスにはPythonやRなどのプログラミング言語が必要となりますが、Excelでも基本的な記述統計から仮説検定、回帰分析などデータサイエンスの入口をカバーすることができます。Excelのメリットはなんといっても難しい数式やプログラミングをしなくても、いくつかの手順を踏めば簡単に結果がわかるといった点です。
次回、今回の記事に引き続き具体的な手法について解説をしますが、まずは具体的な手法に入る前にExcelでデータサイエンスを行うための準備をしましょう。
Excelでデータサイエンスを行うには、『データ分析ツール』を有効化する必要があります。『データ分析ツール』は最新のExcel2019ではもちろんのこと、Excel2003でさえ実装されているツールですので、かなり古いバージョンであっても使うことができます。
『データ分析ツール』の有効化は以下の手順で行います(以下はExcel2019での方法)。
1.メニューバーにある「ファイル」をクリック
2.左側に表示されるファイルメニュー「オプション」をクリック
3.オプションメニューの中から「アドイン」を選択
4.アドイン一覧の中から①「分析ツール」を選択した状態で②「設定」ボタンをクリック
5.有効なアドインから「分析ツール」にチェックを入れた状態で「OK」ボタンをクリック
ここまでで、エクセルメニューへのデータ分析の追加が完了です。メニューの「データ」タブの右側に「データ分析」の項目が表示されていれば設定は成功です。一度設定してしまえばファイルを閉じたとしても改めて設定する必要はありません。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は中小企業でデータサイエンスを行う意義からExcelでデータサイエンスを行う準備まで解説させていただきました。データサイエンスというとなんだか難しく、自分の会社には関係ないことと考えてしまいがちですよね。身近なExcelといったツールを使い、まずは「データを価値につなげる」ことに馴染むところから始めてみましょう。
次回は、具体的な事例を挙げながら実際にExcelを使ったデータサイエンスについて解説してみたいと思います。