小さな開業の勧め
副業の話題を耳にする機会があるのではないでしょうか。
厚生労働省は、働き方改革の一環で副業・兼業を推進しています。
これにより「自分がやりたいこと」を副業で実現しやすい環境が整ってきました。
今回は小規模で資金をあまりかけずに開業する「小さな開業」について説明していきます。
1.日本における開業の状況は?
日本の開業率は1988年の7.4%をピークとして下落傾向にあり、2019年の開業率は4.2%となっています。
国際的な水準においても、日本の開業率は低い状況が続いています。アメリカの開業率13.5%と比較すると、日本はアメリカの3分の1程度の水準に留まっています。
では、日本の開業率が低い要因はどこにあるのでしょうか。
2014年中小企業白書に「起業家が感じる不安」として、次のようなことが挙げられて
います。
- 「収入の減少、生活の不安定化」
- 「事業の成否」
- 「事業に失敗した時の負債の返済」
このデータは2014年度の中小企業白書に掲載されたものですが、現状においても起業家が感じる不安はあまり変化していないと思います。
2.「小さな開業」の勧め
起業の際には、将来への不安は必ずあります。
最近ではコロナウイルスの影響により起業家が感じる不安は強くなっており、独立開業に抵抗を感じる事業者も多いと思います。
しかし、こうした状況の中でも、小規模で資金をあまりかけずに開業する「小さな開業」が増えています。
ここでは「小さな開業」が増えている要因やメリットについて解説していきます。
(1)副業による開業の増加
起業家が感じる不安には「収入の減少、生活の不安定化」「事業の成否」という回答が多いです。現在勤めている会社を辞めて独立開業する場合は、当然「事業の成否」や「収入の減少」を不安に感じる事業者は多いでしょう。
こうした状況だからこそ、いきなり独立するのではなく、副業による開業を行う事業者が増えています。
副業による開業であれば、現在勤務している会社を辞めずに自分がやりたい事業を行うことが出来るため、収入減少の不安は和らぎます。また、将来的には独立開業をしたい事業者も、まずは副業により事業を行い、ある程度収入を得られるようになった段階で独立することで「事業の成否」という企業家が感じる不安を解消することが可能です。
(2)外部環境の変化に対応しやすい
経営環境は常に変化していきます。最近ではコロナウイルスの猛威により、企業が大きな影響を受けたことは言うまでもありません。
外部環境には、追い風となる「機会」もあれば、逆風となる「脅威」も存在します。
追い風となる機会に乗って売上を伸ばす、また逆風となる脅威にさらされた際も会社として素早い対策を取る必要があります。つまり、「迅速な意思決定」「臨機応変な対応」が求められます。
大企業では組織が大きすぎるために意思決定までに時間がかかり、迅速な意思決定をすることが難しくなります。それに対して、小さな開業ではあなたの考えをすぐに行動に移すことにより、臨機応変な対応が可能になります。
(3)オンラインの普及
開業にあたり立地条件の問題は大きいです。集客力を高めるには、地方よりも比較的人口が多い都市圏の方が有利に働くケースが多いです。
しかし、コロナ禍においてZoomなどが広く知れ渡った結果、オンラインを使ったビジネスが多く登場しました。オンライン教室、オンラインセミナーなどが代表格です。オンラインであれば会場の確保などのコストや手間が不要であり、自宅に居ながらビジネスを行うことが可能になりました。
もう一つ、SNSの普及も小さな開業を推し進める要因になっています。FacebookやTwitter、Instagramなど個人から発信する情報が話題になるケースも多いです。またコストをかけずに宣伝広告できる点では小さな開業に向いているプロモーションと言えます。
3.小さな開業で勝負するための考え方
副業により開業しやすい環境になりましたが、ただ闇雲に開業をしても成功する確率を上げることは難しいです。
ここからは小さな開業を行う際に、気を付けるべきことを解説していきます。
(1)商品・サービス
あなたは開業によりお客様に商品やサービスを提供します。
しかし、開業にあたり認識しなければならないことは、「世の中には既に様々な商品やサービスが溢れている」ということです。
既に世の中に出回っている商品やサービスと同じものを提供して、あなたのビジネスは競合との勝負に勝てるでしょうか?
競合と真っ向勝負をして、競合より優れた品質の商品・サービスを提供出来れば、それは素晴らしいことです。ただし、品質が同じ程度の商品・サービスであれば、あなたの提供する商品・サービスに乗り換えることは難しいです。
「あなたの商品・サービスが選ばれる理由は何か?」という視点は、あなたのビジネスを構築する上で常に考えなければならないことです。
また商品やサービスには、独自性や個性があることが求められます。どこかで見たことがある商品では、他の競合商品に勝てる見込みは少ないでしょう。
(2)ターゲット
商品・サービスと同時に考えなければならないことはターゲットです。
つまり「商品を誰に売るのか?」「誰にサービスを提供するのか?」を決めることは非常に大切です。
小さな開業においては、ターゲットを極力絞り込むことが重要です。
ターゲットを特定しない場合は、一般大衆向けに幅広く販売することになります。この場合、一般大衆向けに幅広いニーズを持った商品・サービスの提供が必要になります。
しかし、一般大衆向けの商品は既に多くの企業が参入し、厳しい市場競争を繰り広げています。このような競合がひしめき合い、厳しい市場競争を繰り広げている市場を「レッドオーシャン」と言います。
レッドオーシャンは市場参入が容易であり、次々と競合が参入してきます。競合がひしめき合っているために、値下げによる価格競争が起きやすいことが特徴です。
新たに開業するあなたは、この競争が厳しいレッドオーシャンで勝負を挑んでいきますか?また、多くの競合と真っ向勝負をして、勝ち目はあるのでしょうか?
レッドオーシャンに対して、競合があまり参入していない市場をブルーオーシャンと言います。大企業では採算が合わずに進出が難しい市場でも、小さな開業であれば採算が合う市場が必ずあるはずです。小さな開業ではブルーオーシャンを探すことが成功の鍵となります。
(3)マーケティング
マーケティングについては、SNSを活用することがポイントになります。
大企業はテレビCMなどコストをかけて大々的に宣伝を行うかもしれません。しかし、今はTwitter、Facebook、InstagramなどのSNSを活用することで宣伝広告を行うことが出来ます。しかもSNSから拡散され、ヒット商品が生まれることも多々あります。
小さな開業では独自性のある商品・サービスを提供することを述べました。つまり他社にはない話題性のある商品・サービスということになります。
独自性・話題性のある商品・サービスはSNSでも拡散される傾向が強いです。
今の時代にSNSの活用は欠かせないものとして、認識しておくべきでしょう。
あとは顧客からの口コミも強い宣伝効果があります。既存顧客のリピート及び口コミによる新規顧客獲得などあまり資金をかけずにプロモーションを行うことも大切です。
全てのニーズに応えるマスマーケティングではなく、特定のニーズに訴えかけることを意識していきましょう。
4.最後に
「小さな開業の勧め」ということで、あまりお金をかけずに開業する方法や考え方を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
「自分の好きなこと」「自分のやりたかったこと」を「小さな開業」により実現しやすい環境が整ってきました。この記事が、あなたならではのビジネスを実現する第一歩になることを願っています。