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創業時の事業計画書策定のポイント②

著者: 中小企業診断士  髙岡 健司

創業時の事業計画書策定のポイント②

「創業時の事業計画書策定のポイント」について解説するシリーズも2回目になりました。

今回は、「取扱商品・サービス」「取引先、取引関係等」について解説していきます。

なお、本シリーズは日本政策金融公庫の創業計画書を基に説明します。


1. 事業ドメイン

まずは、あなたが新たに始めるビジネスの基本方針である「事業ドメイン」について整理しましょう。

事業ドメインとは、ビジネスを「誰に」「何を」「どのように」展開していくかを決める経営戦略です。

事業ドメイン

「誰に」:ターゲット

「何を」:製品・サービス

「どのように」:価格、プロモーションなどの販売手法

なぜ事業ドメインを定めなければならないのでしょうか?

なぜなら、世の中には既に様々なビジネスがひしめき合っており、漠然としたまま創業しても成功確率は低いからです。

あなたの事業が注目されるためには、「差別化」の視点が重要です。

既に世の中に出回っている「製品・サービス」と全く同じものを提供しても、注目される可能性は低いです。また、ターゲットを決めずに商品・サービスを幅広く提供しても、ライバル企業から顧客を奪うことは難しいです。

「誰に」「何を」「どのように」というドメインの設定をしっかり行うことが、実現性の高い事業計画書を策定するポイントと言えます。


2. 取扱商品・サービス

(1)取扱商品・サービスの内容

取扱商品・サービスは、事業ドメインのうち「何を」に該当する部分です。

商品・サービスはあなたの始めるビジネスの核とも言えるでしょう。

商品・サービスを提供する上で、「ベネフィット」を意識しなければなりません。

ベネフィットとは「利益」「便益」「恩恵」という意味ですが、ビジネスにおいては「商品やサービスの提供を受けた満足度」という意味で使われます。

あなたが「商品・サービス」を提供した対価として、お客様からお金を頂きます。あなたが

提供する商品・サービスで、お客様にどのようなベネフィットを与えることが出来るでしょうか?またお客様からいただく対価に見合う商品・サービスになっているのでしょうか。

これを徹底的に考えることで、あなたが取り扱う商品・サービスのコンセプトが決まってきます。

(2)セールスポイント

セールスポイントについては、「なぜあなたから商品・サービスの提供を受けるか」ということを考えてみましょう。

競合であるライバル企業が既に提供している商品・サービスと全く同じものを取り扱っても、創業したばかりのあなたから商品・サービスの提供を受けることは難しいと思います。

「あなたの今までの経験やスキルを活かしている」強みや「今までに経験したことが無い」独自性がある商品・サービスであることが望ましいことは言うまでもありません。

(3)販売ターゲット・販売戦略

事業ドメインにおいて、販売ターゲットは「誰に」、販売戦略は「どのように」に該当する部分です。

ア.販売ターゲット

販売ターゲットについては、取り扱う商品・サービスと密接な関係があります。

ターゲットを広く設定すると、商品・サービスもそれぞれの年代のニーズにあったものを取り扱う必要があります。しかし、各年代のニーズにあった商品・サービスでは独自性が失われる可能性が高く、「あなたらしい」商品・サービスではなくなります。

また、各年代のニーズにあった商品・サービスは大手企業が既に提供しています。創業する際には、ターゲットを極力絞り込むことにより、大手企業と真っ向勝負しないような市場のターゲットを見つけることが成功の鍵になります。

イ.販売戦略

販売戦略は、「プロモーション」と「価格設定」を意識しましょう。

プロモーションをテレビCMで大々的に行うことは、創業したばかりの企業では難しいことは明らかです。まずは、商品・サービスを体験してもらうところから始まります。商品・サービスを知ってもらうために、お客様と接点を持つことが重要です。

「お客様に商品やサービスを体験してもらい、リピート購入してもらう」「既存のお客様からの口コミにより商品・サービスを知ってもらう」などの地道な営業活動が必要です。

また、今の時代ではSNSによるプロモーションを考えるべきでしょう。Twitter、Facebook、Instagramなどによりコストを掛けずにプロモーションすることが可能です。あなたが扱う商品・サービスが他社と差別化されたものであれば、ネット上で拡散されて話題になる可能性も多いにあります。ただし、闇雲にSNSによるプロモーションを行っても、ターゲットに届かなければ意味がありません。ターゲットに情報を届けるために、どのようなプロモーションを行うか検討することが必要です。

(4)競合・市場など企業を取り巻く環境

近隣の競合企業についての分析は必須です。特に近隣の競合企業の商品構成やターゲットを把握しておくべきでしょう。競合との差別化を意識することが特に重要です。

競合と全く同じ商品・サービスを揃えても、あなたから商品・サービスを購入することは難しいでしょう。やはり競合とは異なる商品・サービスを揃えることで、競合との真っ向勝負を避けることが基本路線になるでしょう。

近隣の競合企業からターゲット顧客を奪うことも考えられますが、これは競合企業との力関係によるところが大きいです。

それ以外に市場全体の動向についての分析も必要です。

自社の市場が成長しているのか?自社に追い風となる機会があるのか?この先脅威となることは無いのか?などの外部環境については十分に分析しておきましょう。


3. 取引先・取引関係等

次に「取引先・取引関係等」欄について解説していきます。

(1)販売先

販売先については、自社で定めた「ターゲット」と合致していることが必要です。

既に販売先が確約している場合、創業後に安定した売上を確保する見込みがあるということになります。見積書や契約書などが既に存在すれば、金融機関にエビデンスとして提出すれば更に信憑性が高まります。

「シェア」については、取引が一社に集中するよりは分散することが望ましいです。販売先が一社に集中している場合は、販売先の業績により売上が左右される可能性が高いからです。

「回収条件」については、資金繰りに影響を与えます。売上を現金で回収出来るのであれば問題はありません。しかし、法人相手のビジネスにおいては、売掛金といって1ケ月分の売上を後日まとめて入金する回収方法の方が一般的です。売掛金が入金されるサイトは販売先との力関係によるところが多いです。サイトが長ければ手元に売上金が入ってこない状態が続き、資金繰りは厳しくなります。これは販売先との交渉をする時点で意識しなければなりません。

(2)仕入先

事業計画書を策定する段階で、ある程度は仕入先を決めておくことをお勧めします。

いざビジネスを始めても、仕入先が決まっていない状態では安定した仕入が出来ません。

また支払条件についても大切です。売上金は早めに回収する方が資金繰りにおいて有利に働きますが、支払条件は支払を遅くした方が資金繰りは楽になります。ただし、支払条件をあまりに先延ばしにする交渉を行った場合、会社の信用状態を疑われる可能性があるので注意して下さい。

(3)外注先

外注先は仕事のパートナーです。

創業当初から外注を使うほど注文を確保することは実際難しいかもしれません。

しかし、仕事のパートナーである外注先を確保しておくことは、今後事業を進めていく上で有利に働くことも多いです。


4. 最後に

今回は、「取扱商品・サービス」「取引先、取引関係等」について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

「誰に」「何を」「どのように」という事業ドメインを充分に検討することで、「取扱商品・サービス」や「取引先、取引関係等」が決まってくることが分かったと思います。

また「取扱商品・サービス」はビジネスの核となる部分ですので、顧客ニーズを踏まえて絶えず検討を繰り返す必要があります。

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著者プロフィール

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髙岡 健司

中小企業診断士

PROFILE

ライター,コンサルタント

1975年生まれ,栃木県足利市出身。埼玉大学経済学部卒

2020年中小企業診断士登録

地方銀行を24年勤務後、コンサルタント事務所に転職。

得意分野は財務支援、資金繰り支援。

お問い合わせ先

株式会社プロデューサー・ハウス

Web:http://producer-house.co.jp/

Mail:info@producer-house.co.jp

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