成果を出すためのマインドセットとは|活用法やコツについて解説します
マインドセットを企業の人材育成に活用する動きが増える中、その具体的内容や取り組みについて気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、マインドセットの意味や考え方を見た上で、ビジネスシーンへの導入方法および効果を解説します。人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
マインドセットの意味と注目が高まる背景について
マインドセットとは、経験や教育などから形成される思考パターン、心理状態を指します。わかりやすく言い換えるなら、無意識の考え方のことです。価値観や先入観、信念、思い込みなどがそれにあたり、英語では「mindset」と表記します。
このように捉えると個人レベルの心の在り方と思われがちですが、マインドセットは企業などの組織内にも存在します。企業におけるマインドセットは成り立ちや来歴、ビジョンなどから形成され、社風や組織文化として表出します。
近年、多くの企業がマインドセットに注目し、従業員への教育として導入しています。その理由は、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代、VUCA(ブーカ)の時代を企業が生き抜くためには、不確実性に耐え、主体的に挑戦し続けられる人材が必要不可欠だからです。
マインドセットは何を考え、どう動くかに影響します。従業員のマインドセットが変われば、その意思決定や行動も変化し、結果的に企業の業績に大きく影響する可能性があります。また、マインドセットは周りの人間にも影響します。
ポジティブな従業員がいれば、それが周囲に浸透し、目標にポジティブに突き進む企業へと変化していきます。企業が困難を乗り越え、持続的に成長していくためには、従業員のマインドセットをプラスの状態に保つことが重要です。
マインドセットは大きく2つに分けられる
マインドセットは、「成長マインドセット」と「固定マインドセット」の2つに分けられます。
多くの人は両方のマインドセットを持っており、状況によってどちらかに変わることもあれば、自分の意志で変えることも可能です。
では、それぞれの特徴を見ていきましょう。
成長マインドセット
成長マインドセット(growth mindset)とは、自分の能力は努力次第で成長させられるという考え方のことです。こうした捉え方のできる人は、挑戦を恐れず、自ら進んで努力する傾向があります。向上心があり、失敗してもくじけにくいのが特徴です。
ビジネスにおいて、成長マインドセットを身に付けることは非常に重要です。成長マインドセットがあれば、集中力や忍耐力が向上し、目標を成し遂げられるようになります。また、目標を達成するまでの困難と果敢に向き合い進歩できるようになります。
企業全体に努力次第で成長できるという姿勢が広がっていけば、その企業はポジティブな組織へと変化し、成功にたどり着きやすくなるでしょう。
固定マインドセット
固定マインドセット(fixed mindset)とは、能力はもともと決まっており、変わらないという考え方のことです。成長マインドセットとは正反対のネガティブな思考といえます。
能力をこのように捉える人は思考停止しやすく、周囲の視線を非常に気にしてしまいがちという特徴があります。
固定マインドセットは普段の人間関係だけでなく、ビジネスにおいても望まれません。
考え方が硬直しているため、ミスを犯したときに不正を働いたり、自分より劣る人を探したりと問題解決から目を背ける傾向があります。
自分の能力は自分次第で成長させられるものだと思っていれば、ミスと向き合い、問題解決に取り組めます。
主体の違いによるマインドセット
しばしば、「個人のマインドセット」と「企業のマインドセット」といった使い方をされます。それぞれを説明します。
個人のマインドセット
生まれてからこれまでに経験してきたことは、個人のマインドセットに強く影響します。
成功した経験は自らの考えや行動に対する肯定感を生みますが、失敗した経験は挑戦することへの抵抗感を生みます。努力して成功した経験が多ければ自然と成功マインドセットを持てるようになり、一方、失敗し続け、努力しても成功できなかったという経験が重なれば固定マインドセットに陥りやすくなります。
経験の他にも、価値観や信念など様々な要素で個人のマインドセットは構築されています。
その一つの要素である先入観は、なかなか変えることができません。その内容によっては、周囲に負の影響を与えてしまうこともあります。
先入観は、生まれ育った環境や関わっている人、情報によって形成されます。偏見や差別を生むような先入観が形成されてしまった場合、多様性を許容できず、周囲との軋轢を生んでしまいます。
企業・組織のマインドセット
このマインドセットは、それぞれの企業・組織の形態によって異なります。
例えば、ベンチャー企業では社員が自ら考え行動することが求められますが、大手企業ではトップダウンで組織的に動くことが求められます。
扱う製品や事業の特性などによっても異なり、医療や健康に関する企業であれば従業員の健康を意識した施策がとられますが、IT関連企業であれば、スピードや効率を重視した環境が構築されるようになります。
同じ企業内でも、部署の違いなどにより仕事内容が異なれば、それぞれの価値観も異なります。転職や部署移動など、環境が変化すれば、それに合わせたマインドセットの構築が必要となるでしょう。
成長型マインドセットをビジネスに取り入れるコツ
では、成長マインドセットをビジネスに取り入れるにはどうしたらいいのでしょうか。
ここからは、成長マインドセットをビジネスに取り入れる方法をご紹介します。
企業の中で共通の目標を定める
まず、業務を通じて叶えたい目標を定めましょう。
明確な目標や目的がないままだと、業務へのやる気が起きず、マイナスな結果に繋がる行動をとってしまいがちです。目標を設定すれば、将来への希望を感じやすくなり、高いモチベーションで業務に取り組めるようになります。
また、目標は明確に言語化するよう心がけましょう。
言語化することで、将来を具体的に想像でき、意識に定着させやすくなります。スケジュールなども決めて言語化すると、さらに効果的でしょう。
マインドマップを作成し、個々のマインドセットを理解する
目標を言語化したら、今度はそれを達成する手順をマインドマップに落とし込みましょう。
マインドマップとは、ある目標に対し、それを達成するための思考やアイディアを書き出したものです。マインドマップを作成し、頭の中にあるものを可視化することで、自分自身を見つめ直し、自らのマインドセットを理解できるようになります。
このとき、目標達成の障害になりそうなものも同時に書き出すようにしましょう。そうすることで、自分にとってマイナスなマインドセットも可視化できます。
必要なマインドセットを身に付ける
マインドマップを作成したら、目標達成のために自身に足りないマインドセットを身に付けたり、自分の中で固定マインドセットになっているものを成長マインドセットに切り替えたりしていきましょう。
その際、マインドセットは「変えられる」「広げられる」「選べる」と認識し、意識的にマインドセットを転換すると良いでしょう。
マインドセットの導入によって期待される効果とは
マインドセットをビジネスに取り入れる方法をご紹介しました。
ここからは、マインドセット教育の導入によってどのような効果が期待できるのか解説していきます。
自分に自信が持てるようになる
成長マインドセットを獲得すると、自分に自信が持てるようになり、行動に対する姿勢も能動的になります。努力によって能力を伸ばせる、成長できると考えるようになるからです。
目標に対して前向きに取り組み、努力と思考を積み重ねれば、さらに自信を高めることができます。
また、自信がつくことで、失敗を恐れなくなり、結果として高い目標を達成できます。失敗しても努力すれば成功できるという自信は、次々に現れる課題をクリアし、高い目標を達成することに貢献するでしょう。
キャリアに対して前向きになれる
成長マインドセットを獲得した従業員は、高いモチベーションで業務に取り組むようになります。
責任のある業務も積極的に受け入れ、上司からの期待に応えようと努力し出すでしょう。管理職など、重要なポジションへのキャリアアップにも前向きになるため、管理職の希望者が少ない企業では、マインドセット教育によって主体的な管理職を新たに獲得できる可能性があります。
周囲に価値を与える人材の獲得に繋がる
成長マインドセットは、適切な判断や意欲的な挑戦を促し、周囲にもプラスの影響を与えます。また、成長マインドセットを持つ従業員は、周囲に価値を与える人材になり、成功を収める傾向があります。
マインドセット教育で成功を収める人材を育成・獲得し、活躍してもらうことで、企業の将来的な成長が期待できるでしょう。
成長のスピードが早くなる
ビジネスにおいては、マインドセット次第で成長スピードが変わります。
同じ業務でも、成長マインドセットの人は意欲的に取り組みますが、固定マインドセットの人は失敗を恐れてなかなか手を付けようとしません。また、成長マインドセットを持つ人が多ければ多いほど、PDCAサイクルも素早く回るようになるはずです。
反対に、固定マインドセットを持つ人が多いと長期的にPDCAサイクルを回すことが困難になり、途中で頓挫してしまいかねません。
マインドセット教育で押さえておきたいポイント
マインドセット教育は企業の成長に大きく貢献するため、ぜひ取り入れたい施策です。
ここからは、マインドセット教育を導入する際のポイントをご紹介します。
リーダーの持つマインドセットの重要性
リーダーはチーム全体の生産性や士気に影響を及ぼすため、特に優れたマインドセットが必要です。
固定マインドセットを持つリーダーは、部下の育成に苦戦し、自身の指導方針にも自信を持てません。問題が生じた際には、それを部下のせいにし、自身は問題から逃げるといった行動をとってしまう可能性があります。
一方、成長マインドセットを持つリーダーは、チーム全体にポジティブな考え方を広げ、意見を言いやすい空気を作ります。前向きに挑戦しやすい環境で、課題解決力の高い人材へと部下を育成することが期待できるでしょう。
マインドセットの指導環境を整える
マインドセットの指導環境を整えることも大切です。
優れた講師をそろえることはもちろん、定期的に研修を開催し、フォローアップを実施するといった策も有効でしょう。従業員が自身の能力を規制するマインドセットを取り払い、意欲的に仕事へ取り組むようになることで、企業の成功に繋がります。
リーダーや人材育成担当者に対しては、指導のためのマインドセットを構築する施策をとると良いでしょう。
指導者が成長マインドセットを指導に生かせるようになれば、社員の意欲的な行動に結び付き、企業の成長を期待できます。