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パーパス経営が注目される背景とは? 意味や導入方法について解説

パーパス経営が注目される背景とは? 意味や導入方法について解説

昨今、企業や組織を取り巻く情勢の変化を背景に、「パーパス経営」が注目されています。多くのメリットがあるため、パーパス経営の導入はよい影響が期待できます。

パーパス経営が注目される背景や概要、失敗しない導入方法や事例をご紹介します。


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パーパス(purpose)経営の概要

パーパス経営とは、自社の存在意義を明らかにし、それに基づいて社会貢献しようとする経営のことです。パーパスは本来「目的」の意味を持ちますが、パーパス経営のパーパスとは「存在意義」という意味で使われます。

パーパス経営は、世界最大の資産運用会社ブラックロック社会長兼CEO、ラリー・フィンク氏の行動がきっかけで話題になりました。

彼は、投資先企業のSEOに向けて「A Sense of Purpose(パーパスという意識)」のタイトルでLETTER TO CEO 2018(CEOへの年次書簡2018年版)を送っています。この年次書簡では、パーパスを掲げる重要性を述べていることから、パーパス経営に注目されるようになりました。

パーパスとミッション・ビジョン・バリューの違い

従来から、MVVを明文化している企業は多く存在します。MVVとは、それぞれ下記に挙げる単語の頭文字を取ったものです。

  • M:Mission(ミッション/「使命」)
  • V:Vision(ビジョン/「将来の見通し」や「未来像」)
  • V:Value(バリュー/「価値」)

ミッションとビジョンは類似していますが、意味は異なります。

ミッションは「誰のために何を行うのか」といった企業や組織の指針です。ビジョンは、「将来どのような企業になっているのか」といった将来の企業の姿を考えます。

MVVは企業経営の主な方針です。要約するとMVVでは、企業が「将来どのようになり、どうするべきか、どこに価値を置くか」と未来を見据えることです。

一方パーパス経営は、「自社が社会に貢献できているのか」と現在に視点を置いて考える概念です。


パーパス経営が注目される背景

パーパス経営が注目されている背景として、以下の3点が挙げられます。

  • SDGs達成のために、サステナビリティ経営に注目が集まる
  • ミレニアル世代の台頭
  • DXの導入による企業の変革促進

それぞれについて解説します。

SDGs達成のために、サステナビリティ経営に注目が集まる

パーパス経営が注目される背景として、2015年の国連サミットでのSDGs採択が挙げられます。

SDGsとは、持続可能な開発目標のことで、多様性のある社会実現に向けて世界各国が目標にしています。SDGsを達成するためには、パーパス経営を導入し、自社のあり方を見直すことが有効だといえます。

SDGsを達成するための経営の1つが、サステナビリティ経営です。

サステナビリティ経営は、環境や社会、経済の3つの観点から、持続可能性を検討する経営概念です。これらの観点からサステナビリティ経営を行うためには、「自社のあり方」を定義することが重要です。

ミレニアル世代の台頭

2つ目の背景は、ミレニアル世代の台頭です。

ミレニアル世代とは、1980年代から1995年頃に生まれた世代を指します。ミレニアル世代の台頭がパーパス経営を広める理由には、ミレニアル世代の育った環境や価値観が挙げられます。

彼らは幼少期にバブル崩壊の経験を持ち、2008年にはリーマンショックという金融危機を経験しています。

また、1995年の阪神・淡路大震災や、2011年の東日本大震災を経験しています。環境問題や自然災害によるさまざまな問題を通じて、地域連携や雇用創出の重要性などを子どものころから学び、社会貢献に対する意識が強いことが特徴的です。

社会貢献に関心の高いミレニアル世代にとって、どのように貢献すべきかを明確にするというパーパス経営は納得できるものです。

またミレニアル世代は、消費活動だけでなく企業活動の中心になる世代です。そのため、今後もパーパス経営がさらに普及することでしょう。

DXの導入による企業の変革促進

DXの導入による企業の変革促進も、注目背景の1つです。

DXとは、デジタルトランスフォーメーションと呼ばれ、デジタル技術を活用した業務効率の改善やビジネスモデルの変革を推進する取り組みです。DXは、企業を根本的に変革する取り組みであり、単純にITツールを導入するといった表面的な変化ではありません。

しかし、ITツールを導入するだけで満足する企業も多いことも事実です。なぜなら、DXを導入する目的が明確になっていないからです。DX導入の際は、なぜDXを導入するのかを明確にしたうえでパーパスを定め、自社が社会貢献できる方法を見出すようにしましょう。


パーパス企業が必要とされる日系企業が抱える課題

日系企業は大きく「自前主義」や「計画主義」の課題があるため、パーパス経営が重要な解決策となりえます。

自前主義とは、自社のみで事業を進めようとする経営方針のことです。自前主義を行う場合、必ずしも事業化や収益化に結び付けられるとは限りません。また、日系企業は3年間あるいは5年間を想定した中期計画に固執している傾向が見られます。

今ではコロナ禍などの影響により、計画どおりに経営を進めることは難しい状況です。そのため中期計画にとらわれず、短期と長期両方の視点が大事です。

今の日系企業には、「働きがい改革」も求められています。

なぜなら、働きがい改革を行うことで、社員一人ひとりが熱意をもって仕事に取り組めるからです。

働いている時間のほとんどを「この仕事をやらされている」と思いながら取り組んでいると、熱意が持てず、モチベーションも上がらず、良い成果は見込めません。

働きがい改革で「自分事化した仕事」に取り組めるようになると、仕事は自己実現の場に一変します。すると、社員一人ひとりの意識が変わり、能力を最大限に発揮しようとするでしょう。


パーパス(purpose)経営のメリット

パーパス経営の導入には、主に3つのメリットがあります。

  • 従業員の存在意義が明確になり、エンゲージメントが高まる
  • ステークホルダーから支持される
  • 従業員の方向性が定まり、新たな革新につながる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

従業員の存在意義が明確になり、エンゲージメントが高まる

1つ目のメリットは、従業員の存在する理由が明らかになることでエンゲージメントが高まることです。

エンゲージメントとは、従業員と組織が一体となり、お互いの成長に貢献しあう関係のことを指します。従業員の存在意義が定義され明確になると、従業員が企業における役割を自覚できるようになり、企業を信頼して意欲的に事業貢献ができます。

その結果、従業員エンゲージメントの向上が図れ、企業の成長にもつながります。

ステークホルダーから支持される

ステークホルダーから支持されることも、メリットの1つです。

ステークホルダーとは、経営を行ううえで企業が関わる、あらゆる利害関係者のことです。具体的には、次に挙げる関係者を指します。

  • 株主
  • 経営者
  • 従業員
  • クライアント
  • 取引先
  • 金融機関
  • 行政機関
  • 各種団体
  • 政府
  • 債権者

パーパス経営を導入することで社会貢献の意義を理解してもらえ、ステークホルダーに支持してもらいやすくなります。どのように社会貢献するのか不明瞭な企業に対しては、「何を目指している企業なのだろう」と不安に感じてしまいます。

一方で、社会貢献する方向性を提示している企業は、「この方針を掲げる企業だったら応援したい」と共感を得られることでしょう。ステークホルダーと良好な関係を築くことで、企業の信用獲得にもつながり、企業の発展が期待できます。

従業員の方向性が定まり、新たな革新につながる

パーパス経営は新たな革新につながります。企業のあり方が明確であれば、従業員の目指す目標が定まり企業が1つにまとまります。

従業員がばらばらな方向を向いていると、組織に一体感が生まれず、効果的に経営を進めることはできません。従業員の足並みを揃え、組織に一体感を持たせることで主体性が生まれ、職場環境も改善されます。

その結果、コミュニケーションが活発になり、さまざまなアイディアが生まれやすくなるので、新たな革新につながります。


パーパス経営を行ううえで、注意すべきポイント

このように、大きなメリットが得られるパーパス経営ですが、取り入れる際には注意すべきポイントがあります。

それらは「良いパーパスにするための条件を理解すること」と、「グリーンウォッシュにならないようにすること」の2点です。

良いパーパスにするためのポイント

良いパーパスにするための条件として、次の4つを意識する必要があります。

  • 短くて覚えやすいこと
  • パーパスの内容と自社の企業活動に一貫性があること
  • 社会に向けてのメッセージであり、同時に社内に向けて社員を奮起させるものであること
  • 必ずバリュー(行動指針)も同時に作ること

短くて覚えやすいパーパスはわかりやすいため、社内に浸透しやすいというメリットがあります。従業員一人ひとりがパーパスに基づいて行動するためには、覚えやすい言葉選びの意識が大事です。

また、パーパスと企業活動に一貫性を持たせる必要があります。一貫性のあるパーパスは組織の一体感を生み出し、従業員の自律性を高められます。

パーパスは社会に対して価値を明確化するものであるため、社会に向けた内容にすることが重要です。さらに、社内に向けて社員を奮起させるものにすることで、社員のモチベーションやロイヤリティが高まり、パフォーマンス向上が期待できるでしょう。

パーパスを作るときにはバリュー、行動指針も同時に作ることをおすすめします。行動指針を定義することで、組織の一体化が期待できるからです。行動指針があれば、従業員は1つの方向性に向かって行動できるようになり、企業文化の醸成にもつながります。

グリーンウォッシュにならないように防ぐ

パーパス経営を行う際、グリーンウォッシュにならないように意識することが大事です。

グリーンウォッシュとは、「環境に配慮していると見せかけて、実際は配慮していない」状態のことです。パーパス経営の場合、グリーンウォッシュは「パーパスを掲げておきながら、実際の企業活動と一貫していない」パーパスウォッシュとも言えます。

グリーンウォッシュの状態が続くと、ステークホルダーからの信頼を失ってしまいます。グリーンウォッシュを防ぐには、先述した「良いパーパスにするためのポイント」を意識すると良いでしょう。


パーパス経営の事例

パーパス経営を取り入れている、以下3社の事例をご紹介します。

  • 食品メーカー:ネスレ
  • アパレル会社:パタゴニア
  • 総合電機メーカー:ソニー

食品メーカー:ネスレ

ネスレが掲げるパーパスは、「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します」です。

このパーパスを実現するために、ネスレは次の3つの観点から、2030年までの長期目標を設定しています。

  • 個人と家族
  • コミュニティ(農村開発)
  • 地球(環境)

たとえば「個人と家族」では、母乳育児ができない乳児のために、低アレルギー性の調整粉乳を提供しています。

コミュニティの観点では、昨今問題になっている児童の農業への従事問題を解決する活動を行っています。ネスレカカオプランの契約農業では、児童の労働を禁止して学校を整備し、児童に必ず学校に通ってもらうという活動を行っています。

地球の観点からは、環境配慮を考慮した活動が行われています。たとえば、未使用プラスチックの使用削減や、リサイクル可能な軟質プラスチック導入の取り組みです。また、カカオサプリチェーンにおける森林破壊を防ぐために、コートジボワール、ガーナ両政府との協力で、森林の保全と再生も行っています。

アパレル会社:パタゴニア

パタゴニアは、「我が故郷、地球を救うためにビジネスを営む」をパーパスに掲げています。

活動の一例として、自然環境の保護や回復のために、売上の1%を非営利環境保護団体に寄付しています。

さらに団体は、サステナビリティに特化した世界中のNPO団体に再寄付しています。特に同社では、地球を救うためのビジネスの一環として、気候変動を自分たちのビジネス課題と捉え、製品の製造を抜本的に見直す行動を起こしています。

同社がパーパスを実現するために「環境的責任プログラム」として公表している目標は、次の3つです。

  • 2025年までに石油を原材料とするバージン繊維を使わず、環境に望ましい素材のみを使用する
  • 2025年までに、全パッケージを再生可能・再利用可能なもの、家庭内コンポストで分解できるもの、容易にリサイクルできるものにする
  • 2030年までに、ビジネス全体においてネットゼロを達成する

これらの目標を1つずつ達成することで、パーパスの実現を目指しています。

総合電機メーカー:ソニー

ソニーグループのパーパスは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」であり、以下4つのバリューを掲げています。

  • 夢と好奇心から、未来を拓く
  • 多様な人、異なる視点がより良いものをつくる
  • 倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える
  • 規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす

また、パーパスを浸透させるために、CEO室や人事部、ブランド戦略部や広報部が一体となって、キービジュアルを作り全世界にポスターを配布しました。ビジュアルで理解するためのビデオも作成し、パーパス浸透への取り組みが行われています。

「自社が社会に貢献できているのか」を常に考えるパーパス経営を導入すると、企業のさらなる成長が期待できます。パーパス経営を導入し成功に導くには、わかりやすく浸透しやすいパーパス作りを意識することが大事です。

今回ご紹介した事例も参考にしながら、さっそくパーパス経営導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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