シナジー効果とは? 意味や種類、企業が得られるメリット、注意点を解説
自社の経営・事業に課題を感じ始めたとき、「シナジー効果」を狙うのが有効かもしれません。
シナジー効果とは「相乗効果」という意味です。他社との連携やM&Aによってシナジー効果を発揮させることで、大きな利益や企業としての成長の機会を得られる可能性があります。
シナジー効果の概要・種類から、実際にシナジー効果を生み出すために行うべきこと、注意点まで詳しく解説します。
シナジー効果とは
シナジー効果とは「相乗効果」のことを言います。ある要素を組み合わせることで、単純な足し算のように増えるのではなく、「1 + 1が2以上」になる効果を指す言葉です。
シナジー効果は、企業内での多角化戦略を始めとした新事業展開、M&A、企業同士の連携などで得られます。例えば企業同士の連携により、単独での経営より大きな売上や利益獲得につながることが挙げられます。
企業に求められる理由・背景
シナジー効果の発揮は、効率的に成果を挙げることに直結します。
前述の通り、シナジー効果を発揮することで「1 + 1を2以上」にできます。つまり、シナジー効果が発揮されれば、少ない投資・資源でも投入した以上の効果を出すことに期待できるのです。
事業の不確実性が高い昨今では、シナジー効果を高めて生産性を向上させる取り組みや業務の効率化を図る手法に注目が集まっています。
シナジー効果の主な種類
シナジー効果には、内容の異なる5種類があります。
売上シナジー
直接、売上に関係するシナジー効果を「売上シナジー」と言います。
例えば何かの商品を販売するときに、企業が単独で販売するのではなく他社と連携しセット商品や共同キャンペーンを実施することで、各社が単独で販売する以上の大きな売上を達成できることがあります。これが、売上シナジーです。
コストシナジー
シナジー効果がコスト削減に結び付くものを、「コストシナジー」と言います。
企業の連携やM&Aなどにより生産能力が向上すると、企業の経済規模が拡大します。その結果、コスト削減が可能になり、シナジー効果が発揮できる場合があるのです。
また、企業同士が連携することで、1社あたりの負担コストが軽減します。コスト面で諦めていた開発に着手できることも、コストシナジーと言えるでしょう。
財務シナジー
企業間の連携やM&Aにより、余剰資金の有効活用や財務基盤の強化をすることを「財務シナジー」と言います。
債務を抱える企業をM&Aで買収する場合をイメージしてください。利益額を圧縮して節税対策となると同時に、自社に必要な新規事業や技術を持つ企業を獲得できます。これが、財務シナジーの一例です。
ブランドシナジー
「ブランドシナジー」とは、企業同士のブランドや自社のブランドを連携させてブランドイメージを強化させ、売上増加を狙うものです。
自社ブランドのイメージアップや、他社ブランドとの連携によって自社ブランドを知らない顧客層に周知を図り、販路拡大の効果が期待できます。
マイナスシナジー(アナジー)
「マイナスシナジー」は、文字通りシナジー効果を狙った連携がマイナスの影響を及ぼしてしまうことです。
例えば、シナジー効果を期待しM&Aを行ったものの、企業体質が大きく異なっていたために混乱が生じ、生産性が下がってしまうことが挙げられます。
他にもブランドシナジーを図り他社と連携したものの、それぞれのブランドイメージを毀損してしまい、マイナスの効果になってしまう例も挙げられます。
企業がシナジー効果を生み出す手法
企業がシナジー効果を生み出すための手法としては、「M&A」「多角化戦略」「グループ一体経営」「業務提携」の4つが考えられます。
M&A
M&Aによるシナジー効果は、様々なものが考えられます。
例えば、足りない資源や技術・人材をM&Aにより統合すれば、新しい設備や経営資源を導入し、社員を教育するコストを省けます。企業として、効率的な新展開も可能となるでしょう。また、他社との統合によるブランド力の強化も図れます。
多角化戦略
多角化戦略は企業が持つ経営資源を活かし、新しい事業分野へ進出することを言います。多角化戦略により、新しい分野に進出し、収益率や価値向上を図れるでしょう。
多角化戦略には、既存事業と関連のある分野へ進出する「関連多角化」や、全く新しい事業分野へ進出する「非関連多角化」などの種類があります。
多角化戦略は大きなシナジー効果も狙えますが、経営資源が分散されるためリスクもあります。そうしたことも念頭に置いて、計画することが重要です。
グループ一体経営
親会社と子会社のように、一定のつながりを持った企業グループで連携した経営を「グループ一体経営」と言います。
グループ一体経営では、グループ会社で顧客やノウハウを共有して、グループ全体でシナジー効果を発揮可能です。また、親会社がシナジー効果を狙いグループ全体の戦略を立てるケースもあります。
業務提携
業務提携は、企業同士の経営資源やノウハウを共有することでシナジー効果を発揮します。自社とは異なるサービスや技術を持つ企業と提携し強みを強化し弱みを補う、似た技術を持つ企業同士が提携しスケールメリットを活かすといったことが挙げられます。
例えば、お互いが持っている技術を活かし、共同で新商品開発や研究を行うことは業務提携の一つです。
シナジー効果の発生によって得られるメリット
シナジー効果が発生することには、経営面において複数のメリットがあります。
商材拡大・売上増加
シナジー効果の発揮によって、ブランド力の強化・新規販路の開拓が見込めます。また、シナジー効果を利用し、新たな商品を開発して商材拡大も可能です。これにより、売上増加にもつながるでしょう。
時間・コストの削減
シナジー効果の発揮により業務を効率化できれば、時間・コストの削減も可能でしょう。
自社が単独で実施する場合と比較して時間・コストが大幅に削減でき、大きなシナジー効果の発揮が期待できるのです。
また、M&Aや業務提携などで自社にない技術を導入することで、技術やノウハウ、設備の導入コストを削減する効果も見込めます。
企業の組織力が向上
組織のマネジメントノウハウや人材の共有により、組織力が向上することもシナジー効果として期待できます。
一方で、M&Aや業務提携などで複数の企業が関わる場合には注意が必要です。指揮系統の混乱や組織体質の違いによる摩擦といった懸念から、マイナスシナジーに転じてしまう可能性もあります。
企業がシナジー効果を発揮するための注意点
メリットの多いシナジー効果ですが、よい面ばかりではありません。経営側が注意すべき点も、いくつか存在します。
従業員の流出リスク
業務提携を行ったことで労働環境・条件が変わり、提携先に従業員が流出してしまうリスクが懸念されます。また、M&Aや多角化経営などに不安を覚えたことでも、従業員が流出してしまうかもしれません。
シナジー効果には、大きなインパクトが期待できます。しかし、従業員への丁寧な説明や人材流出の事前の防衛策には注意を払う必要があります。
現状と方向性の明確化
現状と方向性を明確化し、シナジー効果を最大限に発揮できる方法の検討・準備が重要です。
シナジー効果を生み出す方法をただ行っただけでは、シナジー効果を発揮できないばかりか、マイナスシナジーになるリスクもあります。
情報管理の徹底
業務提携のように、他社と連携してシナジー効果の発揮を図る場合には情報管理の徹底が重要です。
他社と連携しシナジー効果を発揮するためには、他社との情報共有が不可欠です。しかし、共有できない・してはいけない情報、秘密情報も多くあるでしょう。
そのため、他社と共有する情報と、流出してはいけない情報、自社の企業秘密をしっかりと整理し、情報管理を徹底する必要があります。
シナジー効果に関するまとめ
企業がM&Aや業務提携などをすることで、単独で経営しているだけでは到達できない売上を得られたり、技術力・組織力の向上が見込めたりします。しかし、企業体制の大きな変化が伴うことも多いため、シナジー効果を得たい場合は様々な配慮も必要となるでしょう。
シナジー効果を得たい一心で動いた結果、従業員や情報が流出してしまっては元も子もありません。自社の成長のためにも、入念な準備をしたうえでの行動を意識しましょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】