人事考課制度の必要性と導入方法を分かりやすく解説
人事考課制度とは、賃金や賞与、職位を決めるための重要な制度です。明確で納得してもらえる制度を構築して、社員のモチベーションを上げていきましょう。
必要書類としては、目標設定シートや評価シートがメインになります。
このコラムでは、人事考課制度の導入方法から作成のポイントまでを詳しく解説していきます。
人事考課制度の目的。重要性とメリット
人事考課制度とは、上司が部下の業務実績や貢献度を公正に評価し、その内容を賃金や昇進などに反映することです。
また、公平・公正な評価ができるだけでなく、個々の目標を明確化することで職務の完遂ひいてはモチベーションアップにもつながります。配置転換の材料にもなり、明確な人事考課制度を構築することで組織は活性化されていきます。
その目的と重要性について、以下で詳しくご説明します。
会社の方向性を浸透させる
まず、人事考課には会社の方向性を社員に浸透させる効果があります。
評価基準を可視化して示すことが出来る機会なので、会社の方針や理念などに基づき「どのような社員を求めているのか」を改めて共有し、どの会社でも通ずるような評価と共に「この会社ではこれを大事にしている」という評価の内容を組み込む事が大切です。
社員のモチベーションアップに役立つ
次に、社員のモチベーションアップです。目標を設定して、それを達成する事で自信がつきます。その上、それを第三者(上司)に評価してもらえると、自分自身を認める気持ちが大きくなり、さらなるモチベーションのアップにつながります。
そのため、「どのような事についてどう評価します」といったしっかりとした基準を決めておくことで「それを目指そう!」というやる気を持ってもらう事ができるでしょう。
人事考課制度の導入方法
しっかりとした人事考課制度をつくるためには、以下の6つのステップを踏みましょう。
構築するための6つのステップ
1.経営理念・ビジョンの明確化
まずは自社の経営理念・ビジョンを明確化し、〇〇業界シェアNo.1を目指すのか、どのような形で社会貢献していくのかを経営陣自らが発信して社員に浸透させます。
2.経営戦略の立案
掲げた経営理念・ビジョンを基盤に、主要製品を打ち出すのか、新規開拓に力を入れるのかなど、経営戦略を打ち出します。
3.人事戦略の立案
打ち出した経営戦略を実現するためにはどのような人材が必要で、社員にどんな能力を求めるのか、あるべき人材像を確立します。
4.人事考課制度の構築
ここまできて、ようやく人事考課制度が構築できるのです。あるべき人材像を想定して、今の部門、職務内容でどれだけ力量が発揮できているのか、基準があってこそ初めて評価をすることができます。
5.処遇決定
人事考課制度でつけられた評価に基づき賃金・賞与を確定し、異動や配置転換などの処遇を決定します。
6.人材教育
人事考課で見えてきた力量に応じて、足りない部分の知識を強化し、より高い視座にもっていくために人材教育を実施していきます。
すでに人事考課を導入している企業でも、このように1本筋の通った人事考課制度を実現できている会社はそう多くはありません。確立されるまでには時間を要しますが、確実にすすめていくことによって社員の信頼につながりますのでステップを踏んですすめていきましょう。
人事考課制度の評価基準
1.業績(成績)考課
業績考課とは、一定期間の目標に対する達成度を客観的に評価することです。
成績考課や成果考課といった呼ばれ方もします。
この観点では、成果を生み出すまでのプロセスは考慮されず、結果が評価として直結し反映されます。
したがって、シンプルで分かりやすい評価ではありますが、過程が評価されないことや、経済状況・社会情勢などの外的要因によって業績を上げられず、評価が左右される可能性もあります。
そのような場合に、次に説明する「能力考課」や「情意(態度)考課」が重要になります。
2.能力考課
能力考課とは、社員の持っている知識やスキル(能力)を正当に評価することです。
しかし、知識や経験・能力というのは可視化できないため、それらを発揮して得た結果で判断することになります。
例えば、難易度の高い仕事の達成、緊急時のイレギュラー対応や結果が評価される対象となります。
それぞれの業務内容によって変わってくるため、職能規定を定めた上で業務の中身を点検し、評価する必要があるでしょう。
3.情意(態度)考課
情意考課とは、仕事への意欲姿勢や態度を評価することです。
意味通り、態度考課、行動考課、執務態度考課などといった呼ばれ方もします。
例として、遅刻早退などの勤務態度、モラルに関する起立性やチームワークなどの協調性があげられます。業績考課や能力考課と比較して主観が入りやすい項目ではありますが、上司だけでなく、同僚や部下など複数人で評価し合う体制をつくることで、より正確な評価をすることができるでしょう。
人事考課表の具体的な作り方
人事考課表は、会社の職務分掌などと照らし合わせて、実際の業務内容に即した内容で評価項目を設定していきます。
職種によって仕事内容が異なるため、部門によって異なる評価項目を設定すると良いでしょう。総合職、一般職、級職や号俸によって給与テーブルも異なりますので、それも考慮したフォーマットを作ります。
そして、公平な評価を行うためにも評価は2名以上で行います。さらに業績考課会議を開いて最終的な評価を決定することになります。
人事考課表の項目
人事考課表には下記の項目を盛り込みます。
- 考課期間(年度・期)
- 所属、等級、職種、役職など
- 評価項目、内容
- 評価欄(数字もしくはアルファベット)
- 所見(評価内容について)
自己申告書の書き方・例文
人事考課には、社員自身が評価をつけてから続けて直属の上司が評価をする『自己申告書』というものもあります。この自己評価は、過大評価しても過小評価しても正しい評価がされません。社員が率直な自己評価をできるよう、シンプルな内容、且つ当然知っていなければならないような的確な評価項目を入れるようにしましょう。
チェック項目は、会社が求める理想の人材像を元に設定することを意識してください。
以下がチェック項目の一例です。
- 職務の改善に努力したか
- 職務に積極的にとりくんだか
- 職務に対する責任感はどうだったか
- 組織の一員として行動したか
- 勉強、向上心は旺盛だったか
社員への人事評価を行うときに意識すべきこと3つ
いくら完璧な人事考課表を作成しても、実際に人事評価を行う時に社員の事を見ていなければ意味のないものとなってしまいます。ここでは、人事評価時評価する側が注意すべきことを紹介します。
会社の事ばかりでなく社員個人を見る
初めに説明をしたように、人事考課には「会社の方向性を浸透させる」意味もあります。そのような理由もあり、どうしても会社主体の「この会社にどう貢献するか、どれくらい会社へ利益を出したか」という部分に目が行ってしまいがちです。
もちろんそういった事も大切ですが、あくまでも評価をする対象は「部下自身」。
社員個人をしっかり見て、「どれだけ部下が成長したのか、立てた目標を達成したのか、コミュニケーションは周りととれているか」などをまずは評価するようにしましょう。
部下が納得できるように公平性や透明性を高める
1人の人間が評価を行うと、どうしても何らかの偏りが出てきやすい物です。評価を行う時には、2人程度の上司からの評価を行うと共に、「何をどのように評価するのか」といった評価方法などを全社に認知させる事が重要です。それにより、「自分のこういったところはどういうロジックで評価されているのだ」というのが本人にもわかります。このような仕組みを作る事で、部下からの不満を最低限抑えられるのではないでしょうか。
評価を信頼してもらうため普段から部下とコミュニケーションをとる
これは直接的に人事評価を行うことには繋がりませんが、その前段階で、「この人にならば評価されても大丈夫」という信頼感・安心感を部下に持ってもらうための人間関係や仕事上での関りを構築しておきましょう。どんなに第3者から見ても適正な評価であったとしても、部下との関係性がよくないと評価される側としては納得をしたくない、という気持ちが働いてしまいがちです。
仕事上の関係を越えて仲良くしたり、部下を贔屓したりする必要はもちろんありませんが、上司としてのマネジメントなどを日々意識して部下と接する事が何より大切です。
まとめ
人事考課制度の構築は、従業員の公正・公平な評価をするために必要不可欠です。会社の上層部や上司の裁量だけで人事評価されるような環境では、不公平感が募ります。
それどころか本来会社の外にいるお客様に目を向けなければならないはずが、上司に気に入られることばかりを考え、社内に目が行ってしまう事態にも陥りかねません。そういった事態を防ぎ、十分に実力を発揮できる環境作りができるのが、人事考課制度です。
それが確立されれば効果的な配置転換や昇進を決定することができます。人事考課表フォーマットを参考に人事考課制度を構築して、会社の活性化に役立ててください。