賃金規定の書き方
賃金規定とは、別名給与規定とも呼ばれ、その名のとおり賃金・給与に関する取り決めを記した書類になります。
会社の締め日、給与支払(振り込み)日、残業代やその割増率など細かい規定を定義します。
項目の抜け落ちがあると大きなトラブルに発展するので、雛形を使いつつ、重要なポジションの方に回覧して作ることが大切です。
賃金規定が就業規則と分けられる理由とは?
労働基準法により職場に常に10人以上の従業が働いている企業(事業所や工場などの事業場単位)は職場での働き方を規定した就業規定を作成し、最寄りの労働基準監督署に届け出ることが定められています。就業規則は策定後変更する場合も、同じような手続きが必要になります。
ただ条件として、就業規則の作成・変更時ともに、企業はその職場の半数を超える従業員が所属する労働組合(労働組合がない場合には半数を超える従業員を代表する者)の意見を聞かなければならないということが定められています。
就業規則で決めておく事項は以下の3つに分類できます。
- 必ず定めておかなければいけない事項
- 制度を設けた場合には定めなければいけない事項
- 記載してもしなくてもよい事項
給料に関して定める規定は、たとえば給料はどのようにして定められるか、等から、給料の計算や支払の方法給料の計算期間や支給時期、昇給の条件や方法などにまで及びますが、それらは必ず就業規則に記載されなければならないと労働基準法に記載されています。
しかし、賃金の計算方法など極めて技術的な内容まで就業規則にすべて記載しようとすると、就業規則自体の内容が膨大なものとなり、とても読みづらいものになってしまいます。また就業規則制定後の改訂や追加も煩瑣で面倒なものとなり、特に紙ベースで管理している場合には非常に手間暇がかかってしまいます。そこで就業規則本体には主要な規定のみとし、手続きや技術的な規定、また正社員とは異なる取扱いをするパートタイマーやアルバイトの就業規則などは別規定に定めることが一般的に行われています。
賃金については詳細に定めることが必要であるため、就業規則本則には、賃金については特に詳細にはさだめず、賃金規定において詳しく定める旨、規定しておくことになります。
賃金規定に必要な項目
賃金規定は先に挙げた計算及び支払いの方法といった絶対的必要記載事項も含め、概ね一般的には次に掲げる内容が項目として記載されます。
就業規則のどの条文から委任されて規定されたものかという制定根拠を目的としてまず掲げます。次に誰に適用される規定であるかという適用範囲を示し、さらに賃金の構成として賃金の種類及び体系を掲げます。賃金は通常の勤務時間内で支払われる賃金基準内賃金と基準外賃金に分かれます。基準内賃金とは残業代として計算されない基本給と手当のことで手当には役付手当や、皆勤手当などがあります。基準外賃金として時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、家族手当、通勤手当、子女教育手当、別居手当などが定められています。ここに掲げられた賃金項目についてはそれぞれ別途条文を設けて明確に定義することが必要です。給与項目の支払い根拠を明らかにし、その支払いにつき疑義が生じないようにしなければなりません。
次に賃金の具体的な内容を定めていきます。賃金の支払いとして、計算期間、賃金の支払日、賃金の支払方法、臨時支払いの可否などを定めます。次に賃金の計算基準としては出勤率の計算の仕方、中途入社・退職・復職・休職者の賃金計算の方法、端数処理の方法などを定めます。
給与項目としては、給与の根幹である基本給に始まり、手当として営業に従事する者に支給される営業手当、職務に応じて支給される職務手当、所定時間外に勤務した場合に支給される時間外勤務手当、休日に勤務したことにより支給される休日勤務手当、深夜勤務に対して支給される深夜勤務手当、年休取得時に支給される賃金、役職を与えられている者に支給される役付手当、配偶者など扶養家族に対して支給される家族手当、住居設営に対して支給される住宅手当、会社に通勤する際かかる通勤交通費に対して支給される通勤手当、出勤成績に応じて支給される皆勤手当、従業員が単身赴任する際に支給される別居手当などがあります。
これら各手当は定義を明確にして列挙して規定していきます。昇給に関する規定は絶対的必要記載事項ですので必ず記載しなければなりません。賞与は労働基準法で支給が定められているわけではありません。そのため、会社が支給方法を自由に定めることができます。
項目 | 内容 |
---|---|
賃金の構成 | 基本給・手当など項目の定義を明確にする。 |
賃金の支払い | 計算期間や、支払日、支払方法、臨時支払いなど具体的に定める。 |
賃金の計算基準 | 出勤率の計算、中途入社、退職者、復職者、休職者の賃金計算、末端処理などを規定。 |
基本給 | 給与額の設定について規定。 |
手当 | 営業手当、職務手当、時間外手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、年次有給休暇中に支払う賃金、役付手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、精皆勤手当、別居手当等を規定。 |
昇給 | 昇給の時期や評価項目に関する規定。 |
賞与 | 支給日、支給基準、評価機関に関する規定 |
賃金規定の書き方
賃金規定は就業規則の一部をなし、賃金に関する規定は絶対記載が必要な事項となっていますので、項目を漏らすわけにはいきません。また、賃金は従業員にとってもっとも関心の高い事項です。賃金の定め方一つで、従業員のモチベーションを上げることもできます。誰にでも分るように明確に、もれなく規定してあれば従業員も安心して働くことができます。そのような大事な規定を一から作るのではなかなか大変ですが、雛形があれば簡単に作成できます。手当項目は各社まちまちなので、雛形から適宜取捨選択をして自社の支給根拠に合わせて定義付けをしていきます。また締め日、支給日等は自社の支給方法にあわせ変更するだけで立派な賃金規定を簡単に作成することができるわけです。
賃金規定変更の際の手続き
賃金規定を変更する場合は就業規則の変更と同様の手続きが求められます。賃金規定は就業規則の委任を受けて、本来就業規則に定めるべき事項を規定したものです。ですから賃金規定は就業規則の一部を構成するものとみなされるのです。そこで賃金規定を変更する場合には、就業規則の変更と同じ手続きが必要となるのです。賃金規定を変更する際には、その職場における半数を超える従業員を代表する労働者の意見を聴いたうえで、その変更を最寄りの労働基準監督署に届け出ることが労働基準法に定められています。またその変更は、従業員全員に周知徹底することが求められています
まとめ
賃金規定は間違いや漏れがあるとそれだけで従業員のモチベーションを悪化させ、時に労働問題にまで発展してしまいます。間違いのないよう、漏れがないようテンプレートや例文規定を参照しながら、一条一条細心の注意を払いながら策定していく心構えが必要となります。