マニュアルの書き方・作成法
マニュアルは多くの会社で採用されています。
主に業務の手順・進め方をまとめた「業務マニュアル」、アクシデントや休暇の連絡などの「危機管理マニュアル」、ハード&ソフトツールの操作方法などの「ユーザーズ・マニュアル」、接客対応などの「教育・訓練マニュアル」など、さまざまです。
マニュアルは活用することで何回も口で説明する必要が省けるうえ、個別に見直しもできます。
その利便性から、繰り返して使用するツールや業務のフローがある場合、それが単純なものであればマニュアル化することをおすすめします。
このページでは、作業などをマニュアル化するときに使用できる文書と書き方を紹介します。
何についてマニュアル作成をすればいいのか?
マニュアルの作り方に、「こうすべきだ」または「こうしなければいけない」といった絶対的な原則や定石はありませんが、マニュアルの作成目的や用途などを明確にすることなく、いきなりマニュアル作成に取りかかるのは設計図なしに家を建てるようなもので、最初に描いたイメージと違ったものにでき上がることがあります。
- WHY
- 「なぜ いまマニュアルを作るのか」
- WHERE
- 「達成基準は (最低基準の設定)」
- WHAT
- 「内容構成 (章立、節立)」
- WHEN
- 「いつまでに作るのか」
- WHO
- 「誰が使うのか、その知識、技能水準は・・・」
- HOW
- 「予算、人、手段は」
これは対象とする業務を熟知した人にとっても、マニュアル作成を円滑かつ合理的に進めるためのポイントとなります。マニュアル作成の目的・ねらい・ニーズなどの前提条件を確認・明確化したうえで、マニュアル作成に取りかかるようにしましょう。
マニュアルを書く手順
すぐに書き始めるのではなく頭の中の考えや構成を整理します。前項でマニュアル作成の意義について考えました。次にマニュアルの中身についてイメージを膨らませます。以下のようなマニュアルを作る際の手順を大きく5段階のステップに分けてご案内します。
1.企画工程
求められるマニュアル完成版の目標を明らかにするために5W1Hの観点で整理します。
- WHO
- 誰が使うのか(新人、ジョブローテーション・・・)
- WHY
- 何のために使うのか(結果の品質を上げる、効率を上げる・・・)
- WHEN
- どのような場面で使うのか(作業を覚える段階で、定期的に基本に・・)
- WHERE
- どこで使うのか(研修で、通常の作業工程で・・・)
- HOW
- どうやって使うのか(PC画面を見ながら、本を見ながら・・・)
- WHAT
- どんなマニュアルをつくるべきか(陳腐化しない、使いやすい・・・)
以上の内容が整理できたら、次にマニュアル全体の体系化を検討します。
一冊のマニュアルに数多くのことを詰め込むのは、内容構成も複雑化するうえにページ数も増えるなど、取り扱い上からも好ましいことではありません。
そこでマニュアルの対象業務が広範囲に及ぶ場合や複雑な業務の場合は、作成目的や使用目的別にマニュアルの分冊化、マニュアル全体の体系化を検討します。
2.調査工程
企画段階で検討した項目について、実際の業務を知っている担当者や関係者などから情報収集を行ないます。マニュアルの基本的な役割は、“組織内の標準的な取り決めの文書化”にありますが、コストの低減、品質の向上、コーポレット・ガバナンス(企業統治)を担う内部統制システムのツールという、新たな役割も生まれています。
一方「マニュアルがすべて」というものではありません。個々の社員の持つ知識やノウハウといった暗黙知を「記憶」から「記録」にして組織で共有して行くためでもあります。調査の進め方は現場主義(現場、現物、現実)で調査を進めましょう。
3.設計工程
マニュアルに盛り込む内容構成を検討します。検討手順は、
① マニュアルに盛り込む項目・要素の検討
- 目的、目標(達成基準は何か)。
- マニュアルの範囲をどこまでにするか(業務の領域)。
- 今の仕事に改善の余地はないか、あればその検討も含む。
② 内容構成(もくじ)の検討
- 使用者の知識レベル、技術レベルのどこに合わせるか。
- 章、節の分量に偏りがないようにする。
- 目次の作成。
③ 形態・様式の決定
- マニュアルの装丁、基本様式(フォーマット)の決定。
- 保管媒体の決定(マニュアル本、PC文書データ etc )。
の順です。対象業務の領域ごとに調査工程―設計工程を繰り返して進めて行きます。
調査して収集した情報は整理して文書化・データ化しておくと次の工程で便利です。
この段階でマニュアルの内容構成が「マニュアルの作成目的にかなっているか」、「関連法令・社内基準への準拠性」「業務の効率化・効果への貢献」を検証します。
4.制作工程
○制作方法は、
- ① 担当者自身が作る。
- ② プロジェクトチーム方式の組織横断的な取り組み。
- ③ システム部などの専門部署が作成。
- ④ 外部委託。
の4つの方法に大別されます。
○マニュアル文章の書き方は「わかりやすさ・見やすさ」のポイントから、
- ① 主語と述語の明確化。
- ② 曖昧さの排除(イエス・ノーの明確化)。
- ③ 時間軸をはっきりさせる。
の3点です。
○「わかりやすい、読みやすい文章」の書き方
- 専門用語の使い方は読者の知識・技術レベルで理解できる水準・内容とする。
- 一般的でない専門用語・社内用語は最初に使う箇所で詳しく説明する。
- 一つのセンテンスの中にあれこれと詰め込むのではなく、1つの事柄だけを書く。
○マニュアルへの信頼感や親近感を決める要素の1つに文体があります。
「である調」は事実を正確で簡潔に、歯切れ良く表現することに適した文体です。
ただし、読者に高圧的・威圧的で押しつけがましいといった不快な印象を与えかねません。一方、「です・ます調」は冗長で間延びした印象がある反面、読み手が親近感を持つ表現であることから、読み手の動機づけ・共感を得るのに適しています。
こうした文体の特性から、解説・説明部分は語りかけるような「です・ます調」とします。そして操作手順や指示事項は「である調」で簡潔に言い切るといった工夫が読者の共感・理解を促します。
ただし、ひとつの文章の中に「です・ます」文体と「である」文体を混ぜることは避け、文体は統一します。
5.導入・運用
マニュアルが完成したらすぐに本番で使うのではなく、制作者がそれを使ってシミュレーションをしてみます。当初の目的通り役に立てそうか、達成基準はクリア―しているか、使いやすさはどうかなど、設計工程で決定したことの実現度合いを確認しましょう。この確認作業の中で改善ポイントが見つかれば本番適用の前に修正します。
気を付けておくべきポイント
最初から完璧なマニュアルを書く必要はありません。まずは大きい絵を描くように骨格を作り、そのあとに過不足な点があれば付け足すようにします。
したがって冊子形式を取る場合はページの追加や削除が簡単にできるような工夫を、また、自分だけで作成すると説明を省略したりわかりにくい箇所が出てきたりするので、前項の「導入・運用」に移る前段階でその業務を担当する人に一度見てもらってアドバイスを求めましょう。誤解やミスしやすい部分があれば修正していきます。
マニュアルは業務の土台
日々の仕事の多くはルーティーン作業によって支えられています。そのルーティーンをどれだけ効率化して品質管理をするか、それが仕事のパフォーマンスに直結するといってもいいでしょう。その点からもマニュアルはルーティーン作業を効率化するもので、品質管理に欠かせません。
マニュアルは一度作り上げたら終わりではなく、作業環境が変化したり、業務の達成基準が変化したりする度に内容の改定をしていく必要があります。使えるマニュアルにする為にはP・D・C・Aを止めることなく継続していきましょう。