業務委託契約書の書き方|テンプレートや作成のポイントを紹介
業務委託契約書は、自社の業務を外注するときなどに作成する契約書です。最近はテンプレートを利用して、自社内で作成するケースも増えてきました。そのため、新たに業務委託契約書の作成を任されたという方もいるかと思います。
本記事では、業務委託契約書に必要な記載事項や作成の際のポイント、収入印紙代などについて解説します。業務委託契約書の作成に役立つテンプレートも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
業務委託契約書の書き方
業務委託契約書には、のちのトラブルを防ぐためにも、契約内容について細かく記載しておく必要があります。記載すべき項目は契約内容によって異なりますが、主な項目は以下のとおりです。
- 受託者・委託者の名義
- 委託する業務の内容
- 契約期間や納品日
- 委託料
- 委託料の支払条件と支払日
- 成果物の権利について
- 再委託について
- 契約内容の解除の条件
- 秘密保持について
- 紛争・損害賠償について
- 受託者・委託者の署名欄
- その他必要事項
それぞれの項目に何を記載すると良いのか、くわしく見ていきましょう。
1.受託者・委託者の名義
誰が誰に対して業務を委託したのかがわかるように、受託者・委託者の名称を記載します。業務委託契約書の始まりに、以下のように記載するのが一般的です。
〇〇(以下「甲」という)と、〇〇(以下「乙」という)とは、〇〇に関する業務における業務委託契約(以下「本契約」という)を締結する。
2.委託する業務の内容
委託する業務の内容を記載します。業務範囲でもめることがないように、できるだけ範囲がはっきりわかるように書きましょう。業務の範囲は、業務委託契約書の中ではなく、個別契約書や受発注書で明記する場合もありますが、範囲が曖昧にならないように注意する点は同じです。
委託する業務に関連する内容ではあるものの、今回の業務範囲に含まない業務がある場合は、その対象外の業務についても記載しておくと良い場合もあります。
甲が乙に委託する業務(以下「本業務」という)は、〇〇及び〇〇に付随する〇〇業務とする。但し、〇〇等は本業務に含まれないものとする。
3.契約期間や納品日
業務委託期間や成果物の納期などについて記載します。検品方法や納品方法などに指定がある場合は、その内容も記載しておきましょう。契約更新を行う予定がある場合は、自動更新や途中解約に関する記述も入れておきます。
本業務の委託期間は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までとする。契約満了の〇ヶ月前までに、甲及び乙のいずれからも本契約に関する解約の申し込みがない場合は、当該委託期間の末日の翌日から〇年間を新たな業務委託期間として自動更新されるものとし、以後もこの例による。
4.委託料
委託料や報酬の金額を明記します。消費税や着手金、必要経費、保証金の有無や金額なども必要に応じて記載しておきましょう。
甲は乙に対し、本業務の委託料として〇〇円(消費税別)を支払うものとする。
5.委託料の支払条件と支払日
委託料や報酬の支払条件と支払日も、忘れずに記載しておきましょう。
- 一括か分割か
- 何日締めの何日払いか
- 銀行振込かその他の支払方法か
- 振込手数料は甲と乙のどちらが負担するか
上記のように、委託料の支払いに関する情報を具体的に記載します。請求書の発行が必要な場合は、その旨も記載しておきましょう。
甲による支払いは、毎月〇〇締めとし、翌月〇〇までに、乙の指定する銀行口座に振り込む方法によって行うものとする。振込手数料は甲が負担する。
6.成果物の権利について
委託する業務が何等かの成果物を作りだすような契約で、著作権などの知的財産権が発生する可能性がある場合などは、成果物の権利が甲と乙のどちらに帰属するかを記載しましょう。権利についてあいまいにすると、著作権侵害などのトラブルが起こるリスクがあります。
原則として、著作権は著作物の創作者に、特許権は発明者に権利が帰属します。合意でこれらの権利を移転する場合には、移転の範囲や、移転を実現するために必要な権利処理を定める必要が出てきますので注意しましょう。
本業務遂行により作成された成果物について生じ又は本業務遂行の過程で行われた発明、考案若しくは創作について生じた著作権(著作権法第27条及び28条の権利を含む。)、特許権その他の知的財産権(当該知的財産権を受ける権利を含む。)の一切は、乙に帰属する。
7.再委託について
委託する業務について、再委託(※)を認めるかどうかを記載します。再委託を認める場合、誰にでも再委託をして良いのか、どの範囲まで再委託を認めるのかといった条件も記載しておきましょう。
乙は甲に事前通知することなく、本業務の全部または一部を第三者に再委託してはならない。
※再委託:受託者が自身以外の第三者に業務を委託すること
8.契約内容の解除の条件
委託した業務が遂行されないなど、契約を継続していても意味がない場合などに、契約関係から離脱するために、契約を解除する必要が出てくることがあります。
そのようなときのために、契約内容の解除の条件も記載しておきましょう。解除の条件が複数ある場合は、わかりやすいように箇条書きにします。
甲及び乙は、相手方が本契約に定める条項に違反し、相手方に対し催告をしたにもかかわらず催告後○日以内に同違反が是正されないときは、相手方に書面で通知することにより、本契約を解除することができる。
9.秘密保持について
委託した業務を遂行するにあたり、社内マニュアルや個人情報など、外部に漏らしたくない情報を受託者に共有することがあるでしょう。そうした情報の流出を防ぐために、秘密保持についても記載する必要があります。
なお、個人情報の管理や処理を委託する内容の業務委託では個人情報の取扱いに関する規定を別途設けることもあります。委託者としても、受託者に個人情報保護法などの法令を遵守させる必要があるためです。
甲及び乙は、本契約の遂行により知り得た相手方の技術上又は営業上その他業務上の一切の情報を、相手方の事前の書面による承諾を得ないで第三者に開示又は漏洩してはならない。
10.紛争・損害賠償について
トラブルが起きた場合の対応方法や、損害賠償責任の範囲、免責の範囲などについて記載します。
甲及び乙は、相手方が本契約に違反したことにより自己が損害を被った場合には、相手方に対しその損害を賠償するよう請求することができる。
11.受託者・委託者の署名欄
業務委託契約は、受託者・委託者双方の合意で成立します。その成立を証するために、署名捺印をします。業務委託契約書の最後に、受託者と委託者それぞれの署名欄と捺印欄を設けておきましょう。
12.その他必要事項
業務委託契約書の内容は、委託する業務によって変わってきます。ここまでに紹介した項目のほかに、必要な項目があれば追加しましょう。
たとえば、コンサルタント業務では委託された業務に対しての「報酬や費用分担」について明記されるのが一般的です。製造物供給などの場合は「検品義務」「返品ルール」「品質保証」「第三者による権利侵害への対処」「販売価格や売上の清算時期」などを記載する必要があるでしょう。
業務委託契約書のテンプレート
前述のように、業務委託契約書には多くの必要項目を漏れなく記載しなければいけません。また、委託する業務や契約の内容によって、業務委託契約書の必要事項や形式も異なります。そのため、業務ごとに適した契約書を作成する上で、テンプレートを活用し、適宜カスタマイズするのが効果的です。
ビズオーシャンでは、業務委託契約書のテンプレートを取り揃えています。無料でダウンロードできるものを中心に、様々な形式のテンプレートを公開しているので、ぜひご活用ください。
業務委託契約書を作成する際のポイント
ここでは、業務委託契約書を作成するにあたって、押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
契約書は2通作成する
業務委託契約書は偽造・加筆防止のために、2通作成することが大切です。契約締結後には、トラブル防止のために、委託側と受託側で1通ずつ適切に保管しておきましょう。ここで作成した2通は、どちらも原本として扱われます。
業務委託契約が請負か委任かを確認する
業務委託契約には、様々な取引や業務が含まれます。多くの業務委託契約は、本質を突き詰めると、請負契約か委託契約(ないし準委任契約)かに分類できます。
請負契約とは、受託者が仕事の完成を委託者に約束し、委託者がその仕事に報酬を支払う契約です。一方で、委任契約(ないし準委任契約)とは、受託者が法律行為等、事務処理を行うことを委託者に約束する契約です。
自分が作成しようとしている業務委託契約の内容や、使用している契約書が、どのような性質の契約に当てはまるのか確認しましょう。
例えば、OEM契約が業務委託契約という形で合意されることがありますが、製品というものを作成して納品する業務が目的になっているため、どちらかと言えば請負に分類されます。
一方で、人材コンサルタントやITコンサルタントといった業務を提供する業務委託の場合、情報処理や分析という事務を処理して、アドバイスを行うことなどを目的としており、委任に分類されることが多いです。
請負・委任で民法の原則が変わる
請負の性格が強い契約か、委任の性格が強い契約かで、その契約書の解釈が変わってくるだけでなく、適用参照される民法の規定が変わります。
請負契約と委任契約(準委任契約も含む)の主な特徴の違いは以下の通りです。
|
請負 |
委任 |
参照条文 |
民法632条~642条 |
民法643条~656条 |
受託者の主な義務 |
仕事の完成(結果債務) |
善管注意義務(手段債務) |
解除の効果 |
契約が最初からなかったことになる(遡及効、但し出来高に応じた報酬発生の可能性あり)。 |
解除時点までに生じた契約上の効果については、原則として原状回復を行わない(将来効)。 |
請負契約は、仕事の結果を出すこと自体が受託者の義務です。そのため、契約期間を定めたとしても、仕事が完成していないのであれば、受託者がただちに義務から逃れるわけではありません。
一方で、委任契約は、事務を善良な管理者として注意して処理することが求められており(善管注意義務)、原則として、結果を出すことまでは、受託者の義務に含まれていません。したがって、契約期間が終了すれば、基本的に受託者は事務処理の義務から免れることになります。
原則とは異なるルールを当事者で定めたいのであれば、それぞれの原則の修正を意識して、業務委託契約書に盛り込んでいく必要があります。
業務委託契約書作成時の注意点
業務委託契約書を作成するにあたり、いくつか注意したいことがあります。トラブル回避のためにも、ここで解説する内容を把握しておきましょう。
業務範囲・責任範囲を明確に
業務範囲や責任範囲の記載があいまいな場合、特に受託者側は、契約締結後に追加業務が発生したり、思ってもみなかった責任を取らされたりすることがあります。「まあ、これくらいなら」というような契約や態度はトラブルの元です。契約書作成までの話し合いを思い出しながら、しっかりと確認しておきましょう。
契約の内容ごとに必要な規定が大きく変わる
前述の通り、契約の内容、特に、どのような業務を委託するかで、定めておく必要のある規定が大きく変わります。
本稿では、特にBtoBを前提に解説をしていますが、BtoCの場合、消費者保護法などが適用される可能性があるため、別途の注意が必要です。
委託者として、委託内容や権利がしっかり確保されているか確認したい方、受託者として自己のサービスから生じるリスクを回避するため、自社用の雛形をしっかり備えておきたい方は、テンプレートを持参したうえ、弁護士等の専門家に相談することも一考です。
業務委託契約書を作成する際に収入印紙は必要?
業務委託契約書に収入印紙が必要かどうかは、業務委託契約の種類によって異なります。
業務委託契約の種類は、主に以下の3つです。
- 請負契約
- 継続的取引
- 委任契約
契約内容で収入印紙の金額が変わるケースもあるので、以下で詳しく解説します。
請負契約の場合
請負契約の場合、契約金額によって収入印紙代が異なります。この契約金額とは、委託料のことです。
契約金額と収入印紙代(印紙税額)は、以下の表を参照してください。
記載された契約金額 |
税額 |
---|---|
1万円未満のもの |
非課税 |
1万円以上 100万円以下のもの |
200円 |
100万円を超え 200万円以下のもの |
400円 |
200万円を超え 300万円以下のもの |
1,000円 |
300万円を超え 500万円以下のもの |
2,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの |
1万円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの |
2万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの |
6万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの |
10万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの |
20万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの |
40万円 |
50億円を超えるもの |
60万円 |
契約金額の記載のないもの |
200円 |
継続的取引の場合
継続的取引の基本となる契約書の場合、業務委託契約書1通につき4,000円の収入印紙が必要です。継続的取引とは、契約期間が3か月を超えていて、更に契約更新の定めがある取引のことを指します。
継続的取引の基本となる契約書(通称7号文書)とは継続的取引のうち、以下のいずれかに該当する契約書です。
- 売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱いまたは請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法または再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書
- 代理店契約書などのように、両当事者(営業者には限りません。)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理もしくは媒介の業務または株式の発行もしくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務または事務の範囲または対価の支払方法を定める契約書
- その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約書のうち、一定のもの
(例) 銀行取引約定書、信用取引口座約定約諾書、保険特約書など
(引用:No.7104 継続的取引の基本となる契約書|国税庁)
委任契約の場合
委任契約の場合、印紙税法で定められている課税文書には含まれないため、原則として収入印紙は必要ありません。
ただし、請負契約と継続的取引のどちらにも分類されず、委任契約にも当てはまらない場合、業務委託契約では無い可能性が高いです。その場合は、国税庁のホームページを参考に、収入印紙が不要なケースかよく確認してみましょう。
まとめ
業務委託契約は、意外と暗黙の了解や口頭での約束が多いのも事実です。そのため書き方が分からない方も多いと思います。また種類によっては収入印紙の用意が必要になるため、作成から契約までの過程が複雑なことも少なくありません。
業務委託契約書の書き方や、送付までが不安な方は、しっかりと手順をおって取り組むことが大切です。
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