出勤簿の書き方とは? 保管期間・管理方法も詳しく解説!【テンプレートあり】
労働基準法により作成が義務付けられている出勤簿。
しかし、決まったフォーマットがないため「どう書けばいいのか?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、出勤簿の具体的な書き方や便利なテンプレートを詳しくご紹介します。さらに、出勤簿の管理方法や保管期間についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
出勤簿とは
出勤簿とは、従業員の労働時間や労働日数を把握するための、労務管理の基礎となる帳簿のことです。
労働基準法によって作成・保管が義務づけられており、従業員が退職してからも一定期間保管しておく必要があります。
出勤簿の対象者
出勤簿の対象者は全従業員です。雇用形態に関わらず、給与を支払っている従業員全員分の出勤簿を作成・保管する義務があります。
出勤簿の作成・保管義務があるのは、法人だけではありません。個人事業主であっても、従業員を1人でも雇っていれば、出勤簿を作成する必要があります。
なお、労働基準法で定められている「管理監督者(※)」に該当する従業員については、出勤簿の作成対象外とされています。しかし、管理監督者の労働環境に配慮するためにも、管理監督者の出勤簿も作成したほうが良いでしょう。
※管理監督者とは:事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(労働基準法第41条2号)のこと。役職名にかかわらず、職務内容、責任や権限、職務態様などをもとに総合的に判断する必要がある。
タイムカードと出勤簿の関係
タイムカードは、労働者が自身の出勤や退勤時間を記録するためのツールです。ただし、タイムカードを出勤簿に代用することはできません。
そもそも出勤簿は、労働者の出勤情報や勤務時間を集計し、労働条件や給与の算定、法的な義務の履行などを目的に使用されるものです。
そのため、労働法や労働規則に基づいて、労働者の出勤情報や労働時間を正確に記録することが求められており、個人個人で記録操作を完結できるタイムカードだけの情報では信憑性に欠けます。
したがって、こういったタイムカードも参考にしながら出勤簿を作成し、さらに勤怠管理ソフトウェアなどを併用することでより情報を正確に管理することができます。
出勤簿の書き方
出勤簿には記載するべき項目や、場合によっては記載するという項目もいくつか存在します。ここからは、実際にどのように出勤簿を書くのかについて具体的にご説明していきます。
出勤簿に記載するべき項目
まず、出勤簿には、以下の項目を記載する必要があります。
- 出勤日・出勤日数
- 労働時間と始業・終業時刻(日別)
- 時間外労働をした日時と時間数
- 休日労働をした日時と時間数
- 深夜労働をした日時と時間数
また、有給休暇や欠勤、休業などについても記載しなくてはなりません。ミスなく記載できるように、それぞれの項目に記載する内容について把握しておきましょう。
出勤日・出勤日数
「出勤簿」なので、出勤日や出勤日数は必ず記載する必要があります。従業員がオフィスに出社した日はもちろん、出張や研修、テレワークなどでオフィスには来ていない日でも出勤日として記録しましょう。
- 出勤日: 出勤簿には労働者が実際に出勤した日付が記載されます。これには平日や週末、祝日などが含まれます。特定の休日や有給休暇を除外する必要がある場合もあります。
- 出勤日数: 出勤簿には労働者が出勤した日数が記載されます。これは一か月単位や週単位で集計されることが一般的です。また、欠勤や休暇を考慮して計算されることもあります。
労働時間と始業・終業時刻(日別)
労働時間と始業・終業時間は、日別で記載する必要があります。労働時間は賃金計算の基礎となり、また、労働条件の遵守や労働者の権利保護において重要です。
労働基準法などの法的要件を満たすためにも、正確な時間を把握できるようにしておきましょう。
- 労働時間:労働時間は一日の総労働時間や週の総労働時間など、時間単位で計測されることが一般的です。労働基準法には最長労働時間や休憩時間の規定があり、これに基づいて労働時間が決定されます。
- 始業・終業時刻:労働者が労働を開始する時刻と終了する時刻を示します。また、休憩時間や休日に関する情報が含まれる場合もあります。
時間外労働をした日時と時間数
1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて労働した分は、出勤簿に時間外労働として、日時と時間数を記録しましょう。
- 日時:時間外労働が発生した具体的な日付を正確に記録します。
- 時間数:通常労働時間を超えて働いた時間や、法律で定められた時間外労働の範囲内での勤務時間が含まれます。
ただし、みなし労働時間制などを採用している場合は、時間外労働の計算方法が変わることがあります。正しい計算方法がわからない場合は、専門家に相談してみましょう。
休日労働をした日時と時間数
週1日、または4週を通じて4日と定められている法定休日に働いた分については、出勤簿に休日労働として、日時と時間数を記録します。
- 日時:具体的な休日労働が行われた日付を正確に記録します。
- 時間数:休日や法定休日に労働した時間数を正確に計測し、記録します
なお、所定休日に働いた分は休日労働に該当しないため、間違えないようにしましょう。
深夜労働をした日時と時間数
22時から翌朝5時の間に働いた場合は、深夜労働として出勤簿に記録します。深夜労働については、管理監督者や裁量労働制の従業員でも割増賃金を支払う必要があるため、記入漏れがないよう注意しましょう。
出勤簿に記載されやすい項目
出勤簿には、先ほどの必須項目以外にも以下のような項目が記載されることがあります。これらの項目は、労働時間や出勤状況の詳細把握や管理にも役立ちます。
労働者の情報
もし社員番号がある場合、労働者の識別や特定を目的として、社員番号や氏名を記載することがあります。また、労働者の所属する部署やチーム名を示すことで、組織内での管理や分析がしやすくなります。
所定労働時間、法定労働時間、法定内残業時間
出勤簿に所定労働時間、法定労働時間、法定内残業時間を記載することがあります。
- 所定労働時間:労働契約や労働規則において従業員に対して定められた通常の労働時間を指します。たとえば、1日の所定労働時間が8時間であれば、出勤簿にその時間が記載されます。
- 法定労働時間:法律で定められた労働時間の上限を指します。国や地域によって異なりますが、多くの場合は1日あたりの法定労働時間は、8時間または週40時間とされています。
- 法定内残業時間:法定労働時間内で発生した残業時間を指します。たとえば、法定労働時間が8時間である場合、それを超えない範囲での残業時間が法定内残業時間となります。
有給休暇
有給休暇は労働者が法定の休暇を取得する権利であり、雇用側はその利用状況を正確に把握する必要があります。そのために、出勤簿に有給休暇の日数や利用期間、残日数などの情報を記載することもあります。
また、企業や組織によっては、有給休暇の取得に関するルールや手続き、残日数の繰越や精算に関する規定などもあります。たとえば、勤続年数によっても発生日数は異なる場合もあるため、有給休暇の管理表では勤続年数も記載しておくと良いでしょう。
その他、今年度取得済みの日数、前年度の繰越日数、新たに発生した日数、残日数の記録も必要です。有給休暇を定めた場合は、0.5日としてその管理もしなくてはなりません。
産休・育休
産休・育休の期間は、出勤簿に「産前産後休業(休暇)」「育児休業」などと記載します。欠勤扱いにはならないので注意しましょう。
産休や育休は出産や育児を控える労働者が取得する特別な休暇です。労働者の出勤状況や労働時間を管理するために、出勤簿に産休や育休の開始日、終了日、休暇日数などの情報を記載することが一般的です。
また、企業や組織によっては、産休や育休に関連する手続きや補助金の申請、代替勤務体制の確保なども必要となるため、出勤簿にこれらの情報を記載することで、適切な措置を講じる上で役に立つでしょう。
欠勤
欠勤は労働者が予定された労働日に出勤しないことを指し、病気やケガ、私用、特別な事情などの予期せぬ事態によって発生することが一般的です。
従業員が欠勤した日は、出勤簿に「欠勤」と書いておきます。所定の欄を設けていない場合は、備考欄に記載しましょう。
その他休業
その他の休業として介護休業や病気休暇、忌引休暇(喪中休暇)などがあります。介護休業は、労働者が家族の介護を行うために一時的に仕事を休業できる制度です。
一般的には特定の家族(配偶者、子供、両親など)が介護を必要とする場合に利用することができます。
また、病気休暇は、労働者が病気やケガなどの健康上の理由により仕事を休む場合に記載される項目です。一定の期間の病気休暇が労働基準法で定められている場合もあります。
忌引休暇は、労働者が近親者の死亡による喪に服するために休暇を取る制度です。葬儀や法要、喪主業務などにより、出勤ができない場合に利用できる休暇です。
勤務時間と労働時間の違い
勤務時間と労働時間は、一般的に以下のような違いがあります。
- 勤務時間:勤務時間は、従業員が勤務する時間の総計を指します。これには労働時間や休憩時間、準備や片付けのための時間などが含まれます。勤務時間は、労働日の始業から終業までの全時間をカバーします。
- 労働時間:労働時間は、実際に労働に費やされる時間のことを指します。具体的には、始業から終業までの間に労働者が実際に業務に従事している時間を指します。労働時間には通常労働時間や残業時間は含まれますが、休憩時間は含まれません。
なお、労働時間が一定の範囲を超える場合には残業となり、適切な手当や休息の提供が求められます。
出勤簿の保管期間
出勤簿は労働法令で3年間保存することが義務づけられていましたが、2020年の労働基準法改正にともない5年に延長されました。当面の間は経過措置として3年の保管で良いとされていますが、誤って破棄しないよう注意しましょう。
出勤簿を保管期間内に紛失・破棄してしまった場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金刑に処される可能性があります。
出勤簿のフォーマットと管理方法
出勤簿はフォーマットが決まっていないため、必要事項さえ記入されていれば、どのようなフォーマットで作成してもかまいません。
ここでは、出勤簿の主なフォーマットと管理方法を紹介しますので、どれが使いやすいかを考えてみましょう。
タイムカード
タイムカードは出退勤時に従業員本人が専用の機械に入れて打刻するため、始業・終業時刻を正確に管理しやすいというメリットがあります。
そのため、タイムカードを出勤簿代わりにしている企業もありますが、タイムカードは不正打刻が発生しやすく、集計にも手間がかかるため注意が必要です。
給与管理や労務管理に合わせた書式を利用する、勤怠管理システムを併用するなどすれば不正が起こりにくくなり、事務作業の負担も軽減できるでしょう。
手書き
従業員数が少ない企業や勤務形態が多い企業の場合は、手書きによる出勤簿のほうが管理しやすいことがあります。
ただし、本人現認のもとで記入する必要があり、上司の確認欄がある場合は、毎日上司がチェックしなければならないため面倒に感じることもあるでしょう。
また、従業員が増えたときに対応しづらい、保管スペースを確保する必要があるなどのデメリットもあります。
手書きの注意点
比較的小規模の会社の場合、出勤簿を手書きで記入する方がスムーズという場合もあります。ただし、自己申告制の手書き記入である時点で、改ざんのリスクが伴うことを意識しておきましょう。
正確な時間の記入はもちろんのこと、まず徹底すべきこととしてペンで書くことが挙げられます。鉛筆や消えるペンなどでは改ざんのリスクがより高まるためです。
また、書き直しのときは修正印を押し、誰が修正したのかをわかるようにしておきましょう。さらに、従業員が記入した時間と勤務時間に相違がないか現場でも確認しつつ、出勤簿自体を紛失しないようきちんとした管理も重要です。
出勤簿が何のために使われるのか、従業員にきちんと説明するのも雇用側の責任といえます。
Excel(エクセル)
Excel(エクセル)を使った出勤簿は計算式を組めるため、集計時間が短縮できるうえに、計算間違いも防ぎやすくなります。
セルごとに計算式を設定して、たとえば基本労働時間の他に早出残業があった場合は、その月内の早出時間分だけを抽出して計算されるようにしておきます。その他も同様に、項目ごとに時間を算出させる式を設定しておけば、入力と同時に合計時間が計算されるため、とても便利です。
Excelで作った出勤簿をデータで保管しておけば、保管場所を確保する必要もありません。出勤簿のテンプレートも数多く用意されているので、自社に合うものを探して利用するのも良いでしょう。
≫自動計算できるEXcel形式の勤怠管理表(有料書式)
勤怠管理システム
従業員数が多い企業などでは、勤怠管理システムによる出勤簿が利用されています。
打刻用の機械に社員証をかざしたり、パソコン上でログインしたりすることで出退勤の時刻が登録されるため、集計の手間がかかりません。
最新のシステムでは、指紋認証や顔認証が取り入れられていることもあります。指紋認証や顔認証は、確実に本人でないと打刻できないため、代理打刻などの不正も防ぎやすいでしょう。
すべてデータで管理するので、保管場所に困らないというメリットもあります。ただし、ほかの出勤簿と比較して、導入にコストがかかるというデメリットがあります。
まとめ
今回は、会社の労務管理で必要不可欠である出勤簿のテンプレートと書き方についてご紹介致しました。労働者名簿、賃金台帳、出勤簿は法定三帳簿とも称され、中でも出勤簿は労働者の給与に直結する大切な証拠となります。
漏れなきようにすることはもちろんのこと、ミスのないよう正確に記録管理するように気をつけましょう。