残業時間の管理方法
残業届けとは、従業員が規定の労働時間を超えて勤務する際に、会社へ提出する文書のことです。
残業には、「法定内残業」と「法定外残業」があります。法定労働時間(1日8時間、週40時間)の範囲内であれば、雇用主は割増賃金を支払う必要はありません。法定外残業には、25%の割増賃金を支払うことになっています。
このコラムでは、さまざまな残業に関するテンプレートや書き方についてご説明します。
残業時間の定義
残業時間とは、会社が定めた所定労働時間を超えて働くことをいいます。残業時間の定義を理解するには、労働時間の定義を理解しておく必要があります。例えば、昼休み中の電話当番や着替え時間等も、労働とみなされ残業時間に該当します。一方、通勤時間や出張での移動時間は残業時間には該当しません。では、残業について詳しくみていきましょう。
法定内残業とは
労働基準法では、法定労働時間は8時間と定められています。その時間内で行われる残業のことを法定内残業といいます。例えば会社の所定労働時間が7時間であれば、その後1時間残業した場合は法定内残業となります。法定内残業には割増義務は無く、割増賃金を支払うか否かは会社が決めて良いことになっています。
法定外残業とは
法定外残業は、法定労働時間である8時間を超える時間外労働のことをいいます。法定外残業に対しては、賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。一定の割増率を付加することによって時間外労働を抑制し、従業員が長時間労働を強いられることを防止するねらいがあるのです。
休日出勤と残業手当
残業手当は必ずしも勤務日の残業のみに支払われるものではありません。労働基準法では法定労働時間のほか、法定休日も定められています。使用者は労働者に対し最低週1回以上の休日を与えなければなりません。この法定休日に労働した場合は、前述の25%よりも高い割合の35%以上の割増賃金を支払わなければならないことになっています。
そして法定休日以外に就業規則等で与えられている所定の休日のことを、法定外休日といいます。この法定外休日に対しては35%以上の割増は適用されず、通常の時間外労働として扱われます。そのため、法定外休日に行う労働に関しても、残業手当と同様に把握しておく必要があるといえるでしょう。
変形労働時間について
法定労働時間は、1日8時間、週40時間という定めがあります。変形労働時間は、あらかじめ一定期間内の1週あたりの平均労働時間が40時間を超えなければ、法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。大きく分けて下記4つの制度が挙げられます。
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制の場合
条件を満たせば、1ヶ月以内の期間を平均し1週あたりの法定労働時間40時間を超えない範囲で、特定の日または週の法定労働時間を超えて労働させることができます。その条件は、下記の5点です。
- 就業規則に明記されているか、締結された労使協定を労働基準監督署へ届け出ていること
- 勤務日ごとに始業、終業時刻が明確に特定されていること
- 変形の期間が1ヶ月以内であること
- 変形期間の労働時間が法定労働時間の上限を超えないこと
- 変形期間の起算日が明確に特定されていること
フレックスタイム制の場合
必ず勤務すべき時間帯をさすコアタイムと、設定された時間帯の中で出勤・退勤時間を労働者自身が決められるフレキシブルタイムを設けることで、法定労働時間を超えて労働させることができます。コアタイムを設けず、全てをフレキシブルタイムとすることもできます。
残業届のテンプレートと書き方
世間ではブラック企業のリストも公表されていますが、どの企業も過重労働の防止、時間外手当の削減が課題となっています。残業時間が増えれば人件費もかさみますので、自由に残業したりさせたりすることを抑止するためにも、残業を許可制にしている企業が多くなっています。届出には、ワードのテンプレートが便利です。残業予定日と予定時間、業務内容、残業しなければならない事由を記入します。同内容を用紙の上下に記載し、切り取れるようにしておけば申請後、上司の許可書として残すことができます。
残業時間管理表のテンプレートと書き方
労務管理上、当該月の残業時間を集計しなければなりません。給与に反映させることはもちろんのこと、過重労働がされていないか管理することも重要です。残業時間が月間45時間を超える社員に対してはチェックリストを配布して、必要な従業員には医師による面接指導を受けさせる必要も出てきます。そのため事業者は、従業員の残業時間を把握しておく必要があります。
テンプレートは、自動計算が可能なエクセルファイルが便利です。記載すべき項目は、日付、残業予定時間、実働時間、実際に実施した時間、実際の実働時間、作業内容等が挙げられます。日ごとに上司のサイン欄を設けても良いでしょう。
まとめ
残業時間の管理は、労務面でも健康管理面でも慎重な管理が求められます。過重労働による健康障害からメンタル不調に陥る労働者は年々増加傾向にあります。また、集計ミスや記録漏れ等による残業代未払いが発生するケースも少なくありません。労働者が心身の健康を保ちながら、効果的に成果を上げられる環境を整えられるよう、適切な残業管理を心がけていきたいですね。