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給与明細書の作成・保管方法

給与明細とは、雇用契約における労働対価の金額やその内訳を、項目別に細かく書き出した文書のことです。

一般的に、労働日数や労働時間、残業時間などの給与計算の根拠となる情報と、基本給や手当、交通費などの支給項目とその金額、源泉徴収や社会保険料などの控除項目とその金額、差引支給額の4種類を記載します。

雇用主は、給与を支払う相手への明細発行が法律で義務づけられています。

このコラムでは、給与明細に関するさまざまなテンプレート例や書き方について紹介します。


給与明細の書式テンプレート

給与明細を作成する理由

まず、なぜ給与明細が必要なのかを解説します。

給与明細の役割を知っておくことで、給与明細を作成する業務の重要性を認識できます。

所得税法で義務づけられているから

給与明細を作成する1つ目の理由は、給与支払いに関連する「所得税法」で義務づけられているからです。

所得税法では、給与を支払う人が給与明細書を従業員に交付する義務が定められています。

また所得税や社会保険料、雇用保険料など、給与から控除した場合の項目や控除額を従業員に通知することも義務づけられています。

給与明細の不交付や虚偽は所得税法違反となり、罰則が課されてしまうため注意しましょう。

参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000081190.pdf

従業員の収入証明書になるから

給与明細を作成する2つ目の理由は、従業員やその家族が「収入証明書」として給与明細を使用するためです。

収入証明書として給与明細を使用するシーンには、以下のような例があります。

  • 被扶養認定や医療費控除申請
  • 住宅、車、カードなどのローン申請
  • 保育園の申込み
  • 賃貸物件の申込み

従業員の生活においても重要な書類となるため、給与明細は必ず作成しましょう。


給与明細に記載しなければいけない項目

給与明細の構成は、大きく分けて3つからなります。1.支給、2.控除、3.差引支給額の3項目です。

詳細は下記のとおりです。

1.支給項目

  • 基本給
  • 残業代
  • 勤務時間
  • 手当(住宅手当、役職手当、通勤手当等)

2.控除項目

  • 社会保険
  • 雇用保険
  • 所得税
  • 住民税
  • 財形貯蓄
  • 組合費等その他会社独自の控除

3.差引支給額

1.支給額-2.控除額=手取り給与額となります。

賞与明細についても同様に、上記の構成です。

1.支給項目の箇所が賞与額のみとなりますので、すっきり見えるかもしれません。賞与からも保険料や税金が控除されますので、賞与についても差し引かれた額が支給されます。

給与明細の書式テンプレート


給与から控除されている項目について

控除には、法定控除とその他の控除の2種類あります。

法定控除とは給与から天引きすることが法律で定められているもので、各種社会保険料や税金がこれにあたります。

財形貯蓄や組合費、積立金等は会社が定めているその他の控除です。それでは、法定控除項目について詳しく見てみましょう。

健康保険料

健康保険料は、会社が半額負担しますので、従業員は半額の負担をすれば良いことになっています。その従業員負担額が健康保険料として控除されるのです。

従業員は会社の健康保険組合や協会に加入することで、業務災害以外の疾病やケガ等に関して保険給付を受けることができます。

介護保険料

介護保険料も健康保険料と同様に会社が半額負担します。

40歳以上の従業員が被保険者となり、要介護状態となった際に必要な保健医療サービス、福祉サービスに関わる給付を受けることができます。

厚生年金保険料

厚生年金保険料も会社が半額を負担します。会社に勤める70歳未満の人は全員加入しなければなりません。

自営や従業員が5人未満の個人会社は国民年金への加入が必要です。控除額は、毎月の給与と賞与に共通の保険料率をかけて算出されています。

所得税

所得税は国に納める税金で、1月1日から12月31日までに生じた個人の所得に課税される税金のことをいいます。

年収から控除を差し引いた課税所得に対してかかり、税率は課税される所得金額によって異なります。累進課税制度といって、所得が高いほど税率も上がる仕組みです。

住民税

住民税は、地方自治体に納める税金です。前年1月1日から12月31日までの所得に応じて算出される所得割と、一律徴収される均等割を合算した額が税額となります。

前年の所得に対しての課税となるため、退職した翌年に仮に無収入であったとしても徴収されるので注意しましょう。

給与明細の書式テンプレート


給与明細の作成方法と流れ

続いて、給与明細の作成方法と流れを以下の6ステップに分けてご説明します。

  1. 勤務時間を集計する
  2. 残業代を計算する
  3. 各種手当を計算する
  4. 総支給額を計算する
  5. 各種控除額を計算する
  6. 差引支給額を計算する

細かい計算方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

1.勤務時間を集計する

まずは出勤簿やタイムカードなどの勤怠情報を参考に、労働時間や残業時間を確認して勤務時間を集計します。

休日出勤の日数や有給休暇の日数も合わせて集計し、有給休暇を使用している場合は、休暇の残日数も把握してください。

出張や研修などのように、通常勤務と異なる仕事内容だった場合は、念のためメモしておくのがおすすめです。

2.残業代を計算する

次に、普通残業時間、深夜残業時間、休日残業時間をもとに残業代を計算します。労働基準法で定められた労働時間を超える時間外労働がある場合は、通常の給与に割増率を加えた割増賃金を支払う必要があります。

残業代となる時間外手当の計算式は以下のとおりです。

「時間外労働時間数 × 1時間あたりの賃金 × 割増率」

3.各種手当を計算する

続いては通勤手当や資格手当、家族手当、役職手当、住宅手当など、企業が設定している各種手当を計算します。各手当が非課税所得に該当するか否か、分別しながら計算してください。

中でも通勤手当は、従業員が公共交通機関を利用している場合、1ヶ月15万円まで非課税です。

なお、公共交通機関か自家用車かによって、非課税の上限額が異なります。上限額を超えて非課税として計算することのないよう注意しましょう。

4.総支給額を計算する

次に、手当を一切含まない基本給に、先ほど計算した残業手当や通勤手当、その他の各種手当を加算して総支給額を計算します。

欠勤や遅刻、早退があった場合、その時間分の賃金は基本給から減算してください。欠勤や遅刻、早退などの不就労控除や欠勤控除の対応については、就業規則や賃金規定に明記しておきましょう。

5.各種控除額を計算する

続いて、控除する各種保険料を計算します。社会保険料の計算方法は以下のとおりです。

  • 健康保険料:標準報酬月額×健康保険料率÷2
  • 厚生年金保険料:標準報酬月額×厚生年金保険料率÷2
  • 介護保険料:標準報酬月額×介護保険料率÷2
  • 雇用保険料:給与総額×雇用保険料率

組合費や財形貯蓄など企業独自の控除項目がある場合は、その控除額も計算してください。

また自治体から送付される「住民税課税決定通知書」を確認し、給与明細の控除項目に住民税も記載します。この時は、通知書に記載された額をそのまま使用しましょう。

6.差引支給額を計算する

最後に差引支給額を計算しましょう。差引支給額とは、支給額から控除額を除いた、実際に従業員が手にする金額を指します。

以下の計算式で算出できます。

差引支給額 = 支給額(基本給 + 残業手当 + 各種手当) - 控除額(社会保険料、雇用保険料、介護保険料、所得税、住民税)


給与明細のテンプレートと書き方

給与明細には労働日数や労働時間、残業時間等の給与計算の根拠となる情報を記載した上で、前述した「給与明細に記載しなければいけない項目」の1.支給、2.控除、3.差引支給額の構成で作成します。

項目ごとに各種手当や控除明細を明記していきましょう。

なお、通勤手当等非課税となるものは別の欄に記載し、区別しやすくしておくと良いでしょう。テンプレートは自動計算が可能なエクセルファイルをオススメします。

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給与明細の保管期間について

労働基準法では、法定三帳簿の1つである賃金台帳は3年間の保管義務があります。記載されるべき項目は氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間・残業・休日出勤・基本給・各種手当・控除です。

一方、源泉徴収簿や扶養、保険、控除に関わる書類は国税通則法により、7年間の保管義務がありますので注意が必要です。

ちなみに個人の給与明細は、確定申告をさかのぼってできる5年間が標準的であると考えられています。

給与明細の書式テンプレート


給与証明について

所得を証明する書類として、所得証明書や源泉徴収票等があり、給与証明と混同しやすいので気をつけてください。

給与証明は、勤務する会社でしか発行することができません。支払われた給与を証明する書類です。

住宅ローンやカードローンの申し込み、入居審査、帰化申請等さまざまなケースで提出を求められることがあります。どの書類が必要であるのかをしっかり確認してから発行依頼をしましょう。

また、社員の配偶者控除や扶養控除の申告を行う際、配偶者・扶養者の勤務先から証明してもらう必要が生じることもあります。

給与証明のテンプレートと書き方

給与証明には法定の文書があるわけではないので、任意のテンプレートを使用して構いません。給与証明には対象者の入社年月日、氏名、給与として最近の月収と昨年の年収を記載します。

給与は支払い年月、支給総額、所得税、その他控除額、差引支給額を明記しましょう。

念のため、支給総額には通勤手当等の非課税所得は含めない方が良いかもしれません。含める場合は分けて記載しておくと親切です。

給与のほかには、被扶養者の氏名、続柄、生年月日を記載します。テンプレートはワード文書が使いやすいでしょう。

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まとめ

給与明細には、支給項目と控除項目の内訳を明記して発行しなければなりません。給与から天引きして社会保険や税金を納税する必要があります。

公的機関への証明ともなり得るものですから、遅滞なく正確な労務管理が求められます。テンプレートを利用して、労務管理に役立ててください。

給与明細の書式テンプレート


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