従業員名簿(労働者名簿)とは? 書き方をテンプレート付きで解説!
従業員名簿(労働者名簿・社員名簿)は、労働基準法によって作成・保管が義務付けられている帳簿です。対象者や記載事項に決まりがあり、不備があると労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があるため、正しい書き方や保管方法を理解しておく必要があります。
そこで今回は、従業員名簿の書き方や管理方法などについて解説します。すぐに使えるテンプレートもご用意したので、ぜひ参考にしてください。
従業員名簿とは
従業員名簿は、労働基準法によって作成が義務づけられている帳簿の1つです。賃金台帳、出勤簿と合わせて法定三帳簿とも呼ばれています。
法人・個人事業主のどちらであっても、1人でも従業員を雇っていれば、従業員名簿を作成するよう労働基準法第107条に定められています。従業員名簿は、労働基準監督署の調査が入るときなどに必ずチェックされるため、常に不備がないよう準備しておかなくてはなりません。
従業員名簿を作成していなかったり、記載内容に不備や誤りがあったりすると、是正勧告を受けたり、従業員名簿の作成義務違反として30万円以下の罰金が科せられたりするため注意が必要です。
従業員名簿の対象者
従業員名簿の対象者は、「賃金を支払っている従業員すべて」です。社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなどの従業員も含まれます。
ただし、日雇労働者は労働基準法第107条に「日々雇い入れる者を除く」と記載されているため、従業員名簿に記載する必要はありません。
また、会社の代表や役員も、労働基準法における「労働者」に該当しないため、従業員名簿の対象外です。派遣社員は雇い主が派遣会社であるため、派遣会社の従業員名簿に記載されます。派遣先企業の従業員名簿に記載する必要はありません。
従業員名簿の保管期間
従業員名簿の保管期間は法律で3年と定められていましたが、2020年4月の労働基準法改正により、5年間に延長されました。
当面の間は経過措置として3年で良いとされていますが、いずれは5年間に移行するため、今から保管期間を延長しておいたほうが良いでしょう。
従業員名簿の保管期間の起算日は、当該従業員が退職、または死亡した日です。入社日などと間違えないよう注意しましょう。
従業員名簿の書き方
従業員名簿には、以下の項目を記載するよう定められています。
従業員の氏名・性別・生年月日
従業員名簿の対象となる従業員の戸籍上の氏名・性別・生年月日を記載します。
従業員の住所
従業員名簿の対象となる従業員の住所を記載します。住民票に記載されている住所と、実際に住んでいる住所が異なる場合は、実際に住んでいる住所を記載しましょう。
従業員本人の電話番号や緊急連絡先も記載しておくと、トラブルが起きたときなどに対処しやすくなります。ただし、連絡先は従業員名簿の必須項目ではないので、本人の了承を得たうえで記載するようにしましょう。
履歴
履歴に記載する内容について、法的な定めはありません。一般的には、異動や配置転換の履歴が記載されています。学歴や職歴、保有資格などを記載しておくのも良いでしょう。
業務の種類
「経理」「人事」「営業」など、従業員名簿の対象となる従業員が従事している業務内容を記載します。
従業員数が30人未満の場合、1人の従業員が複数の業務を掛け持ちしていることもあるため、業務の種類の記載を省いてもかまいません。
雇入れ年月日
従業員名簿の対象となる従業員の雇用を開始した年月日を記載します。採用を決めた日ではないので注意しましょう。
退職・解雇・死亡の事由と年月日
対象となる従業員が退職・解雇・死亡した年月日と、その理由を記載します。とくに会社都合による退職・解雇の場合は、トラブル防止のために、年月日と理由を明記しておきましょう。
従業員名簿のテンプレート
不備がないように従業員名簿を作成するには、テンプレートを利用するのがおすすめです。ここでは個人別に記載する従業員名簿と、一覧で管理できる従業員名簿のテンプレートを紹介しますので、ぜひご活用ください。
個人別の従業員名簿のテンプレート
まずは、1人1枚の用紙を使って、個人別に作成する従業員名簿のテンプレートです。
健康保険・厚生年金・雇用保険のそれぞれの記号と番号が記載でき、顔写真も貼り付けられるため、個人が特定しやすく従業員名簿の取り違えを防げます。
一覧で管理できる従業員名簿のテンプレート
従業員名簿は、労働基準法で定められた項目をすべて網羅していれば、1人1枚ずつ作成する必要はありません。
多数の従業員の情報から特定の項目をチェックできるようにしたいなら、一覧で管理したほうが効率が良いでしょう。
従業員名簿はデータで管理するのがおすすめ
従業員名簿は、パソコンでデータとして管理することが認められています。とくに従業員数が多い企業では、保管スペースや情報更新の際の手間を考えると従業員名簿を紙で保管するのは厳しいので、データで保管したほうが良いでしょう。
従業員数が少ない場合でも、紙の従業員名簿は劣化しやすく、記入する人によって文字の巧拙がまちまちで読みづらいため、データで保管するのがおすすめです。
従業員名簿作成時の注意点
従業員名簿を作成するにあたり、いくつか注意したいことがあります。くわしく見ていきましょう。
事業場ごとに作成する
労働基準法では、従業員名簿は「事業場ごとに」作成するよう求められています。本社で一括して全社員分を作成・保管するのではなく、支店や工場ごとに従業員名簿を作成し、それぞれの支店や工場で保管しましょう。
異動や住所変更があったら更新する
従業員名簿の情報は、常に最新の状態にしておく必要があります。従業員が引っ越して住所が変わったときや、結婚して氏名が変わったときなど、従業員名簿の記載内容に変更があった場合は、遅滞なく情報を更新しましょう。
プライバシー保護に配慮する
従業員名簿には、従業員の氏名や住所、連絡先など、さまざまな個人情報が記載されています。情報の使用範囲を定めるルールを策定するなどして、プライバシー保護に配慮しましょう。
従業員名簿にマイナンバーを記載しようと考える人もいるかもしれませんが、マイナンバーは法によって用途が社会保障・税・災害対策の範囲に制限されています。
従業員名簿は社会保障・税・災害対策以外の用途で利用することもあるので、マイナンバーを記載するのは避けましょう。
すぐに出力できるようにしておく
従業員名簿をデータで保管する場合は、すぐに出力できるように環境を整えておきましょう。労働基準監督署から、従業員名簿の原本を提示したり、写しを提出したりするよう求められることがあるためです。
いつ労働基準監督署から指示が来ても良いように、コピー機などを用意しておきましょう。
まとめ
従業員名簿は労働基準法によって作成・保管が義務づけられており、法人でも個人事業主でも、従業員を雇っていたら必ず作成しなければなりません。
記載項目についても法的な定めがあり、不備があると是正勧告を受けたり罰金を科されたりする可能性があるので、正しく作成・保管することが大切です。
また、従業員名簿に記載されている内容は個人情報そのものであり、紙に印刷したものであれ、電子磁気媒体に記録されたものであれ、その取扱いには十分な注意を必要とします。テンプレートを利用しながら、入力や管理がしやすいものを作成しましょう。