AIDMAの法則~活用方法と成功事例~
AIDMA(アイドマ)とは、人が商品やサービスを認知してから購買するまでの購買プロセスを示したものです。
Aは注意喚起(Attention)、Iは興味(Interest)、Dは欲求(Desire)、Mは記憶(Memory)、Aは 行動(Action)となり、それぞれの頭文字となっています。
このコラムでは、AIDMAについて解説します。
AIDMAの法則とは
AIDMAの法則とは、米国のローランド・ホールが提唱した消費行動の仮説のことであり、アイドマと呼ばれています。AIDMAモデルは商売の基本であり、消費者の心理的なプロセスモデルとなっています。AIDMAの5つのプロセスは、3つの段階に分類することができます。1.認知段階、2.感情段階、3.行動段階です。それぞれの段階について詳しく見てみましょう。
- 認知段階
- 消費者が、特定の商品、製品のことを知る段階。 CMや広告で知る、人に教えてもらう、テレビで紹介されていた、等。
- 感情段階
- その商品を使ってみたいか、魅力を感じるか等の気持ちを判断する段階。 興味を持ち、欲しいと思えばその記憶は鮮烈に心の中に残る。
- 行動段階
- 消費者が購買行動を取る段階。
AIDMAの法則では、消費者はこの3つの段階を経て消費行動を取るとされています。この段階に合致したマーケティング戦略を打つことで、消費者の購買へ繋げることができるのです。プロモーションの方策を考える上でも、心理プロセスを理解しておく必要があるといえるでしょう。
AIDMAの具体例
消費者は実際、AIDMAの法則に則ってどのような消費行動を取っているのでしょうか。身近な具体例で挙げてみます。
新型のタブレットが発売されたと仮定します。あるサラリーマンの男性は、通信機器を販売するショップを訪れて、すぐに商品の購入を決めていきました。この人は、なぜ悩みもせずに購入を即決したのでしょうか?購入までに至った経緯をAIDMAのプロセスによる感情の移行とともに見てみましょう。
- A:注意喚起
- TVCMにて新型タブレットの広告が流れる。
- 『新型のタブレットか。新しい機能が追加された上にデザイン性もいいらしい。』
- I:興味
- 日本限定コラボモデルが発表される。
- 『日本限定で○○とコラボしたモデルが発売されるのか。レアだな。』
- D:欲求
- 旧型モデルを持っているが、故障気味で使い勝手が悪い。
- 『今持っているものは使いづらいし、そろそろ新しいものが欲しいんだよな。』
- M:記憶
- 限定モデル、予約の空きはあと少しとの発表がある。賞与が近い。
- 『限定モデルはまだ残っているのか。次の出張時までに手に入れば助かるな。もうすぐ賞与も出るし、金銭的余裕もある。』
- A:行動
- 通信機器を販売するショップを訪れる。
- 『チラシではまだ空きありと表記されていたけど、購入予約できるかな。』
男性は、この心理プロセスを経てショップを訪れました。ショップに足を運ぶまでの間に、すでにA、I、D、M、までの段階が済んでいるのです。あとはAだけを実行すれば良く、ほぼ購入するつもりでショップを訪れています。
自分が買い物をするときの心情を振り返ってみてください。それを実際のビジネスにあてはめれば、どのようにプロモーションをかければ良いかが理解でき、売上アップに繋げることができるでしょう。
AIDMAを活用した企画書の作成方法
消費者の心理プロセスに沿った企画を立てるときは、感情の段階ごとに方法を検討する必要があります。そのため、段階ごとに戦略を立てていきます。AIDMAモデルが表で見られるパワーポイントのフォーマットが便利です。AIDMAの心理段階を縦軸に置き、横軸には手法とそれぞれの予算、企画内容を記載していきます。メリット・デメリットをわかりやすく書き込んでいくと良いでしょう。並べて比較検討し、○×△で表しても良いですね。検証した結果を根拠として、採用したい企画とコメントを沿えた企画書を作成すれば、説得力のあるものになります。
AIDMAを活用し成功した事例
広告業界で、一大旋風を巻き起こした資生堂の成功事例をご紹介しましょう。資生堂の商品であるTSUBAKIは、日本人女性であれば知らない人はいないといっても過言ではないくらい、知名度があるのではないでしょうか。これは、国民的アイドルSMAPがテーマソングを歌い、さらに有名女優陣が出演するという、莫大な予算を投じたキャンペーンによって大きく成功した事例です。
90年代後半から2000年代にかけて、日本女性は、欧米女性の輝くブロンドヘアに憧れていました。そのため、ヘアケア商品は外国ブランドであるパンテーン、ラックスなどが大きなシェアを持っていました。資生堂がシェアを奪還できたのは、日本人女性をターゲットにしたプロモーション戦略の成功にほかならないのです。AIDMAの法則に落とし込んで見てみましょう。
- A:注意喚起
- 大きな予算を投資し人気アイドル、有名女優をTVCMに起用する。
テーマソングは耳に残り、街で耳にしてもTSUBAKIを思い出す。 - 『女優さんたちみんな綺麗だな。見ているだけで圧倒されちゃう。』
- I:興味
- センセーショナルなコピーを全面に打ち出す。
- 『日本の女性は美しい?まぁ、アジア人にはアジア人の良さがあるよね。』
- D:欲求
- ドラッグストアや街頭でサンプルを配布する。
- 『サンプルもらえた!ジムで使ってみよう。なかなか良いかも。』
- M:記憶
- ドラッグストアやコスメストアでPOPを貼り、大量に陳列してもらう。
コンディショナーとセットにして販売し、販促品をつける。 - 『この前サンプルもらったやつ、セットで売ってるんだ。ミニヘアスプレーもつくのか。携帯用にもいいし、お得かも。』
- A:行動
- 消費者が店頭で商品を購入する。
- 『サンプルも使用感良かったし、買ってみよう。』
消費者がこのようなAIDMAのステップを踏んで、資生堂の仕掛けは成功しました。黒髪の美しさを全面に押し出した戦略は、黒髪が似合う日本女性の共感を得ました。本来持つ美しさに気づき、黒髪ブームまで巻き起こしたのです。
衝動買いをしてしまう理由
欲しかったわけでも買うつもりでもなかった商品を、その場で買ってしまうことを衝動買いといいます。後から冷静になって『なんで買ってしまったのだろう。』と思うことはありませんか。これは、AIDMAの心理プロセスにかかる時間が短く、一気にAから最後のAまで進んでしまうことに起因しています。通常AIDMAのプロセスの中で消費者は、Dの欲求が生まれてからAの行動に至るまで、葛藤が生じます。ところが衝動買いの場合、このプロセスを一瞬で通過してしまいます。それは、『今しか買えない』『今日までの特売』『最後の1点』などといった状況が、購入の意思決定を促進するためです。あまり検討に時間がかけられなかったため、後悔することも少なくありません。
まとめ
消費者が商品を購入するときは、必ずこのAIDMAの心理プロセスを辿っています。自分の消費行動を振り返ってみるとわかりやすいのではないでしょうか。消費者の心理的な動きとその要因をつかむことができれば、自社商品の販売戦略に活かすことが可能です。AIDMAのテンプレートを使って、企画書を作成してみましょう。