公正証書の書き方・例文
公正証書とは、売渡証書、金銭消費貸借契約証書、贈与証書、土地交換契約証書といった財産などの移動、記載事項を公に証明する証書になります。
本コラムでは、公正証書の作成方法や公正証書の書き方について解説します。
公正証書とは
公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律に則って作成する公文書のことを言います。高い証明効力があり、公正証書を作成しておくことで裁判所の判決などを待たずに強制執行手続きに移ることが可能です。
効力や強制執行について
公正証書には1.証拠としての効力と2.債務名義としての効力があります。
1.証拠としての効力
訴訟で公正証書は、証拠としての効力を持ちます。例えば金銭の貸し借りがあったとき、その事実は貸主が借金の事実を証明しなければならないのです。証拠がなければ裁判所は借主に対して支払い命令をすることができません。契約書も証拠にはなりますが、偽造された文書ではないという証明を果たしてできるでしょうか?公正証書であれば公文書と認められ、証拠としての高い効力を持たせることが可能です。
2.債務名義としての効力
借主が債務の返済をしない場合、裁判所に申し立てをして強制的に財産を回収することを強制執行と言います。強制執行をするためには、債務名義が必要となります。債務名義は、権利・内容を証明するものです。本来であれば裁判で勝訴をしてから強制執行にはいるのですが、条件を満たした公正証書があれば、裁判の結果を待たずとも強制執行に移れることがあるのです。
公正証書の書き方
公正証書は公証人が作成する公文書ですから、公証人に作成を依頼する必要があります。作成の流れをご説明しましょう。
- 相手方と合意している内容をまとめておく
- 公証役場へ電話して必要な資料を確認する
- 公証人との面談日を予約する
- 公証人に案文を作成してもらう
- 相手方と案文の内容を確認する
- 公正証書に署名押印する
相手方と合意している内容をまとめておく
相手方がいる場合、公正証書にする内容は、相手方と合意していることが必要です。もし合意できていない場合は公正証書を作成することができません。相手方と何についてどのように合意したのかをまとめておきましょう。
公証役場へ電話して必要な資料を確認する
公証役場に電話し、公正証書を作成するために必要な資料を確認します。必要となる資料は公正証書の内容によって異なるため、どのような内容の公正証書を作成したいのか、具体的な内容をメモしたうえで確認するとよいでしょう。
公証人との面談日を予約する
必要な資料が揃ったら、公証人との面談日を予約します。公証役場によっては、面談日の予約と同時に公正証書の完成・調印日も予約できるところもあります。あらかじめ相手方と相談してスケジュールを決めておけば、スムーズに進めやすくなります。
公証人に案文を作成してもらう
公証人との面談日には、作成したい公正証書の内容や相手方と合意した条件がわかる資料を持参します。話をスムーズに進めるためにメモ書きを持って行ってもいいでしょう。公証人はこの面談の内容と資料をもとに案文を作成します。なお、この面談に費用はかかりません。
相手方と案文の内容を確認する
案文が出来上がると、公証役場から内容について確認の連絡がきます。内容に間違いがなければ後日調印することになるため、相手方にも内容を伝えて同意を得ておきましょう。
公正証書に署名押印する
公正証書の作成準備が整うと、契約者と相手方が公証役場に出向いて正式な手続きを行います。まず、公証人が契約者と相手方の本人確認を行い、続いて契約者と相手方が公正証書にする内容を最終確認します。問題がなければ原本に双方の署名・押印をし、最後に公証人が署名・押印をして公正証書が完成します。
作成できる場所
公正証書は、公証役場で作成が可能です。しかし遺言公正証書など、本人が来所できない場合は、公証人に自宅や病院に来てもらうことも可能です。
費用・手数料
公正証書作成には、様々な費用・手数料がかかります。
- 1.公証人手数料
- 文面の内容や記載する金額に応じて費用が異なります。『公証人手数料令』という政令によって定められています。
- 2.収入印紙代
- 公正証書の内容が売買契約や金銭消費貸借契約、弁済契約などの場合は、記載される金額に応じて所定の収入印紙を貼る必要があります。
- 3.謄本取得費
- 交付される正本を含む謄本の証書代が、必要枚数に応じてかかります。
- 4.送達手数料
- 公正証書が契約関係の内容である場合、債務者宛の謄本は公証人の嘱託により、特別送達という方法で送られます。
- 5.その他
- 資格証明やその他必要書類を取得する場合、または行政書士などに依頼する場合は、別途費用がかかります。
必要な書類
公正証書を作成してもらうにあたり、揃えなければならない書類もあります。作成する内容によって異なりますが、基本的には下記のようなものが挙げられます。
- 当事者全員の本人確認書類
運転免許証、認印、パスポート、実印、印鑑証明書など - 戸籍謄本
- 住民票
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産税評価証明書
- 車検証
- 保険証券
- 商業登記簿謄本
- 契約書
- 各種資格証明書
なお謄本や印鑑証明書などは、発行日から3ヶ月以内のものが必要となりますので注意してください。
委任状が必要な場合
公正証書は原則として本人が公証役場へ出頭して作成を依頼するものですが、それが難しい場合は代理人に嘱託することも場合によっては認められます。その際、委任状が必要になりますので覚えておきましょう。委任状は本人が作成します。さらに実印と印鑑証明の他、代理人の実印や認印、免許証やパスポートも必要になりますので事前に確認をしておきましょう。
様々な公正証書の書き方・例
金銭がからむ事案に関しては、相手が約束事を履行しなかったとき、相手にプレッシャーをかける意味でも、公正証書を作成しておくと安心です。不動産・遺言・離婚・金銭消費貸借などのケースで公正証書は作成されます。記載項目例を見ていきましょう。
①金銭消費貸借契約証書
- 借用金総額
- 給与返済額
- 賞与返済額
- 返済開始日
- 完済予定日
- 借主住所・氏名・印
- 貸主住所・氏名・印
②売渡証書
- 不動産所有権が移転した旨
- 売渡日付
- 売主
- 買主
≫売渡証書
③贈与証書
- 不動産所有権が移転した旨
- 契約日付
- 贈与者
- 受贈者
≫贈与証書
まとめ
公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律に則って作成する公文書のことで、高い証拠効力と債務名義としての効力を持ちます。裁判所の判決を待たずに強制執行手続きに移ることができます。公正証書を作成するには、公証人に依頼する必要があります。必要書類や費用などを確認して公証役場に出頭しましょう。本人の出頭が原則ですが、どうしても不可能な場合は代理人に嘱託することも可能です。その場合は委任状が必要となります。公正証書の書き方についてはその内容に応じて、テンプレートを参考に確認しておきましょう。