預り証とは?領収書との違いと書類テンプレを紹介
「預り証」という言葉を聞いたことがありますか?
ビジネスや生活のさまざまなシーンで、預り証を利用する機会があります。しかし、普段から使っている方でも「預り証とは何か?」と聞かれた場合、なかなか説明が難しいのではないでしょうか。
今回は、この「預り証」について、利用シーンなども含めて解説します。
預り証はどんな場面で使う書類なのか
「預り証」は、金銭などを受け取った側が、金銭などを渡した側へ譲渡したことを証するために作成する書類です。例えば、見積書と納品書を交わす間に前払金を受け取った時や代金を受け取った時、一緒に受け取る金銭の中で返還をする金銭を受け取った時などに利用されます。なお、受け取るものは必ずしも金銭には限りません。不動産や預金通帳、衣類や時計の場合もあります。
ちなみに請求書や領収書の「書」と預り証や領収証の「証」に大きな違いはなく、「預り証」と「預り書」は一般的にはどちらもほとんど同じ意味として扱われています。国税庁のホームページによると、厳密には「書」は「証」を含めた大きな分類と定義していますが、実務の面で使い分ける必要性はないので、今回の記事内では、統一して「預り証」を使っていきます。
参考:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
預り証と領収書の違い
「預り証」は基本的に金銭や財産の返還を前提にして発行されるものが多く、「領収書」は商品の受け渡しやサービスの提供に対しての支払いの収受を証明するために発行する書類です。ただ、実際には「預り証」が「領収書」代わりになっているケースもあるため、下記で説明する収入印紙からの判断でも「預り証」や「領収書」という書類の名称ではなく、やりとりの内容による分類になっています。
預り証を発行した際の収入印紙はどうなる?
収入印紙の根拠になる印紙税法は、関連書籍なども少なく、一般的に判断に困ることの多い税法です。これは、印紙税法の条文が短く、細かい規定が少ないため、国税庁からの通達を下に運用が行なわれている背景があるためです。国税庁のホームページには似たような質疑応答がいくつもあり、他の税法にはない特徴があります。
印紙税は、印紙税法に規定された内容の書類一枚ごとに課税されます。同じ書類が何枚もあれば、その枚数だけ印紙を貼らなければなりません。一方で、電子証明を使う場合には課税されませんので、契約書なども電子でやりとりをする会社が増えています。
さて、収入印紙が要るかどうか、いくら必要かの判断ですが、まず、そのやりとりを行う立場が営業かどうかにより収入印紙の必要の有無が決まります。営業でない場合には収入印紙を貼る必要はありません。
※営業…一般に、営利を目的として同種の行為を反復継続して行うこと
参考:国税庁「No.7125 営業に関しない受取書」
また、金銭や有価証券の受け取りではない場合や、物の預かりだけが記載されている場合も課税されません。
参考:国税庁「修理品の承り票、引受票等」
次に収入印紙は、預り証や領収書などの書類のタイトルに関係はなく、その書類の内容で判断することになります。税務上はすべて「受取書」という言葉でまとめられて、それが売り上げに係る受け取りなのか、それ以外の受け取りなのかで税額が決まります。
印紙税は曖昧で専門家でも判断に困る税金です。間違える可能性が高いため、迷ったらその都度信頼できる税理士などに相談しましょう。
預り証の利用シーン
「預り証」は前述の通り、現金や資産を預ける側と受け取った側で取り交わす書類です。この書類が有効になるのはトラブルが発生した際で、第三者へ証明するための書類と考えるといいでしょう。具体的な利用シーンについて例を挙げて考えてみましょう。
1.不動産を賃借する際に敷金を払った
敷金は賃貸マンションやアパートの退去時に、原状回復の費用として入居前にあらかじめ不動産会社に預けておくお金です。貸し主は賃貸契約が解除された際に、修理費用などを差し引いた金額を借り主へ返却しなければなりません。この「お金を預けた状態を証明する」ために預り証を取り交わすのです。
2.自動車の車検を依頼する際に自動車重量税や自賠責保険料を車検代行業社へ先払いした
自動車の車検は2年に1回(新車登録後の初回は3年)受けなければなりません。この際、車検の整備費用とは別に、車検の代行業者に税金や保険料も一緒に支払うのが一般的です。ただし、納税義務者は車の所有者であるため、万が一管轄の役所に納税されていなかった場合は、車検の代行業者へお金の返還を求めることになります。そこで、業者は税金や保険料をいただいた証明として預り証を発行し、本人の代わりに支払うことを約束するわけです。
3.商品の購入前やホテルへの宿泊前などに、代金の一部を前払いした
例えば、洋服の裾や丈の直しをお願いする場合やホテルの予約時など、あらかじめ商品の購入金額の一部を店側に支払うケースがあります。この際、預り証をお客に渡しておくことで、キャンセルなどの支払いにおけるトラブルを防ぎつつ、残りの代金の精算に利用するわけです。
4.銀行の行員へ現金などを渡して手続きを依頼した
時計や電化製品の修理などにおいては一旦商品を預かった証明として預り証を作成します。また、銀行などの金融機関においても現金や通帳を預かった際に作成し、「預り証」と引き換えに返してもらうことになります。万が一、現金を預かった行員が現金を口座に預け入れる手続きをしなかった場合でも、現金を渡した側は、預り証をもって“銀行員へ預けた”ということを主張することが可能です。
5.担保として差し入れた
このケースでは、借り入れなどをした時に資産を担保として渡した時に作成されます。もし、借り入れの返済が約束通りに行われなかった時には、担保として差し入れた資産は取られてしまいます。預り証を作成しておけば、借り入れを返済した後に担保に入れた不動産の抵当権解除を求めることができ、応じない場合には裁判所へ訴えることになるでしょう。所有権の登記のない資産の場合にも、返還がない場合には裁判所へ訴えることになります。
6.積み立ての金銭を預け入れた
積立預金などで金銭を預け入れした時に発行されます。ただし、預け入れのたびに発行されるとは限りません。その場合には通帳など別の記帳があるのが普通です。このケースでは、銀行法などの法律で決められているため、書類が作成されないことはあり得ません。しかし、担当の銀行員を信じて、預り証や通帳を毎回確認していなかったために、多額の横領につながった事件もあったため、注意が必要です。
預り証はどう作成する?
ここからは預り証を作成するにあたってのポイントを解説します。
まず、下記の記載事項は必ず記載するようにしましょう。
- 受け取った側と渡した側の名前、住所(住所は金銭等を受け取った側)
- 受け取った日付(いつ)
- 受け取った金額、もの等(何を)
- 受け取った内容(なぜ)
以上を記載すると、しっかりとした「預り証」になります。この他に返還の条件があれば、簡単な内容については一緒に記載しても構いませんし、いろいろな内容を記載する必要がある場合には、別で契約書や覚書などを作成するようにしましょう。
≫現金預かり証
まとめ
預り証は領収書とは異なり、いろいろな内容を「預り証」として書類にするため、整理が難しい書類です。逆に作成のポイントと収入印紙の税額を間違えなければ、作成は自由ともいえます。
やりとりの内容を考えて、後々トラブルにならないように預り証の作成を心掛けましょう。内容に不安がある場合には、弁護士や税理士などの専門家や税務署に確認をとることをおすすめします。