無断欠勤する社員の対応方法~解雇時の必要書類の紹介
無断欠勤をする社員に対して、頭を抱えているエグゼクティブは意外と多いかもしれません。
たとえ無断欠勤をした社員でも、欠勤後に謝罪の連絡を受けて、会社側も許すことがほとんどのパターンでしょう。
しかし、なかには何度連絡しても“梨の礫(なしのつぶて)”の社員もいます。
そんな社員に対して、即「解雇だ」と伝えないようにしましょう。対応を間違えると不当解雇だと訴えられかねません。
今回は無断欠勤をする社員への対応方法と、解雇する際のトラブルを防ぐために用意すべき書類をご紹介します。
無断欠勤を続ける社員に考えられる理由
「会社を休む時は必ず連絡をすること」。これは社会人なら当たり前の常識です。しかし、それが分かっていてなぜ無断で休み続ける社員がいるのでしょうか?まずは考えられる理由と会社としての対応方法を考えてみます。
1.突然の病気やけが
急病で入院したり、事故で病院に運ばれたりした場合はなかなか連絡ができないでしょう。家族がいても慌てふためいて連絡を忘れてしまうかもしれません。この場合は、まず社員のご家族などに連絡をして安否を確認。家族も社員の様子を見ることが難しければ自宅まで行って状況を確かめます。症状に合った病院を受診後、診断書を提出させ休職扱いとします。
2.警察に逮捕された
何かしら事件を起こして逮捕されると、本人は会社に連絡ができません。この場合も、まずは家族に連絡を入れて様子を聞きます。釈放されて会社に連絡があれば、逮捕の内容を聞き出し、場合によっては会社側が警察まで事情を聞きに行くことになるかもしれません。逮捕の内容により出勤する前に該当する処分の対象とします。
3.メンタルヘルス不調となる
メンタルヘルス不調になる原因は、主にプライベートと会社の2つが挙げられます。メンタルヘルス不調になると人と話したくない、何もしたくないなど、まず人との関わりを絶ちたくなります。そのため会社に連絡を入れることが通常より困難になるのです。また、このようなメンタルヘルス不調は、ある日突然に起きるものではありません。職場でも何となく様子が変だ、といった前兆を感じていた他の社員がいるかもしれません。
プライベートが理由のメンタルヘルス不調で本人と連絡がとれない場合は、必ず自宅を訪問します。そこで、自宅に伺ったこと、職場の皆が心配していること、連絡が欲しいことなど、温かい言葉を連ねたメモを置いてきます。その後、病院に行くことを勧め、出勤できるようになれば元の職場に復帰させます。
会社が理由の場合は、少し対応が異なります。ハラスメントや長時間残業など、会社が原因となるメンタルヘルス不調者は昨今増加しています。電話やメールで本人から応答を得られない場合は自宅を訪問しますが、注意してほしいのは直属の上司が訪問しないことです。
たとえ上司が直接の原因でないとしても、何も対策せずに放置した責任は重大です。本人も上司を信頼していない場合があり得ますので、代わりに人事担当者などが行くと良いでしょう。また、このケースも職場の同僚などは原因に気付いています。自宅に投函する要連絡のメモは、慎重を期して温かい言葉を連ねてください。特に悩んでいるのなら相談に乗るという姿勢がポイントです。その後、出社が困難な状態なら病院に行くことを勧めます。病気の程度が軽く出勤できるようであれば、話し合いの下にしばらく定時退社としたり、部署を異動させたりしましょう。
4.会社を辞めたい
会社を辞めたいので、何も言わずにそのまま休むというケースです。このケースは、新入社員や中途採用の人が多く、「仕事がつらい」「思っていた仕事と違う」など、理由もさまざまなものが考えられます。この場合、会社として「働く意欲のない人はいらない」と考えて放置してしまうことがままあります。そうすると後々トラブルにつながることがありますので、必ず休んでいる社員への電話連絡と自宅訪問(メモ投入)はするようにしましょう。
ただし、会社を辞めたい理由がハラスメントの場合は、会社の責任問題に発展します。人事の担当者が話を聞き、職場の異動希望があれば叶えさせます。またハラスメントの加害者には指導をして二度と人格を傷付けるような言動をしないという誓約書を書かせることが望ましいでしょう。
以上、4つのケースを挙げましたが、すべてにおいて無断欠勤を理由とした解雇ができるわけではありません。緊急の病気やケガは仕方ありませんし、逮捕された場合も連絡は物理的に不可能なので無断欠勤については懲戒処分に該当しません(逮捕の内容が懲戒処分に該当することは考えられます)。メンタルヘルス不調の場合も、病気の症状から連絡が困難になるのは仕方ありませんので、懲戒解雇はできないでしょう。また、会社を辞めたい理由がハラスメントの場合も、無断欠勤を理由に解雇はできません。
無断欠勤を続ける社員への対応と手続き
無断欠勤を続ける社員には、どのように対応すべきでしょうか?
まずこちら側の連絡に出ない、返信がない場合は、自宅を訪問します。訪問しても本人が出てこなければ、メモを必ず置いておきますが、そこに出勤に関する命令書や連絡書をつけるかどうかはケースにより異なります。
連絡書は無断欠勤が続く社員に対して、就業規則に従い会社の正式な書類として使用するものです。その文言がきつい印象を与えるので、1回目の自宅訪問から連絡書を入れるかどうか悩むかもしれません。最初は「連絡がなくて心配しているから連絡が欲しい」と伝えるだけでも良いでしょう。それでも連絡がなければ2回目に書類を置いておきます。また、自宅訪問時は必ず日付入りのメモや連絡書のコピー、さらに会社までの公共交通機関の領収書を取っておきます。
≫長期無断欠勤者への連絡書
連絡書を渡しても連絡がない場合
連絡書を渡しても出勤しない社員を即懲戒解雇できるかというと、実のところできません。なぜなら必ず本人に弁明させる機会を与えなければならないからです。本人の弁解がない懲戒解雇は、裁判などでも無効であると判断される可能性があります。ここからは出勤命令を出した後の対処についていくつかご紹介しましょう。
1つ目は、何度自宅に訪問しても休んでいる社員に会えず、連絡書を置いたが、何の連絡もない場合です。この際、話し合いの日時を指定して通知、または就業規則に懲罰委員会で検討する旨の記載があれば、懲罰委員会の開催日を本人へ通知します。この通知書は、必ず内容証明郵便で出すようにしましょう。万が一決められた日時に本人が来なくても、検討する場を設けたことは必ず記録に残します。そして本人がいない場で懲戒解雇を決定します。
2つ目は、出勤命令は無視しているのに、話し合いまたは懲罰委員会などには出席してきた場合です。その場で本人に弁明の機会を与え、勤務状況や反省の度合いを鑑みて、懲戒解雇かどうかを決定します。そのために、勤務状況(遅刻やミスが多いので指導されているなど)をきちんと記録に残しておきます。社員を指導するごとに指導記録を作成すると良いでしょう。この記録がないと、本人は「私はきちんと仕事をしている」と反論して裁判に発展しかねませんので要注意です。
そもそも解雇には、普通解雇と懲戒解雇と整理解雇の3種類があります。この中で懲戒解雇とは、就業規則に基づき、社員の問題行動に対して懲戒処分を科すもので、その最も重い処分が懲戒解雇です。懲戒解雇の判断基準については、下記記事を参考にしてください。
≫【懲戒解雇になる理由と普通退職との違い】
解雇通知書の書き方
解雇予告通知書のポイントは、解雇日の日付です。解雇日は、①社員が通知書を受け取った日にするケースと②受け取った日から30日を経過する日付にするケースに分かれます。①の場合は、労基署の除外認定を受けない限り、解雇予告手当を支払わなければなりません。②の場合は、その月の社会保険料の会社負担はありますが、解雇予告手当は必要ないため、メリットがあると言えるでしょう。
社員を解雇する際の注意点
たとえ問題のある社員であっても会社は自由に解雇できません。労働契約法には労働者保護の観点から「①客観的に合理的理由を欠き②社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして無効とする」という記載されています。この条文の①と②が解雇の要件です。解雇に関するトラブルが発生した際に「不当解雇」とよく言われるのは、上記の要件を満たしていないからなのです。
逆に言えば、要件を満たせば解雇が可能です。問題行動を起こした社員を解雇する場合、以下の2点が大きなポイントとなります。
1点目は、問題行動を起こして会社に迷惑をかけていること。具体的にどのような迷惑をかけたのかを証明する必要があります。2点目は、解雇を回避するためにできる限りの対応を会社が行っていること。社員に問題行動がみられた際には、それを放置するのではなく指導を行い、その都度指導記録を作成しましょう。
まとめ
無断欠勤を続ける社員というのは、ある日突然問題行動を起こすのではなく、その前から「何となくいつもと違う」とか「会社を辞めたい」とよく言っているなどの前兆があるものです。それを上司が早めに気づき、相談に乗ったり指導したりして、解雇を避けるべきでしょう。本人のためにも会社のためにも、管理職は今一度職務を確認してみることが重要かもしれません。