いつまで軽減税率は続く?制度について改めて概要をおさらい

2019年10月、消費税増税とともに軽減税率制度が導入され、8%と10%の2種類の消費税率が併用されるようになりました。
施行から約10ヶ月が経過し、ようやく制度にも慣れてきたかと思われますが、制度について詳しく分かっていない方も中にはおられるでしょう。
今回は改めて軽減税率制度についておさらいするとともに、軽減税率の適用でどのような影響があるのか、消費者視点と事業者視点で解説していきます。
そもそも軽減税率とはどういう制度?
まずは軽減税率制度の概要を改めておさらいしていきましょう。
モノやサービスの消費に対して税が課せられる消費税は、日本では1989年4月に初めて導入されました。その後、導入時は3%だった税率は1997年に5%、2014年に8%と段階的に上昇。そして、2019年10月、消費税はいよいよ10%になりました。ただし、増税によって私たちの生活への負担を軽減するため、食品などの特定の品目は消費税を8%に据え置く措置が合わせて取られました。これが軽減税率です。
どの品目が軽減税率の対象になる?
軽減税率の対象となる品目、ならない品目
軽減税率の対象品目は大きく分けて「飲食料品」と「新聞」の2種類です。ただし、細かい例外が多数あるので詳細をチェックしていきましょう。
- 軽減税率の対象となる品目
- ・米や魚、肉、野菜などの一般食料品
- ・ミネラルウォーター
- ・ノンアルコールビール
- ・週2回以上発行され、定期購読される新聞
- 軽減税率の対象とならない品目
- ・お酒(みりんや調理酒も対象)
- ・保存用の氷
- ・家畜用動物
- ・水道水
- ・コンビニなどで買う新聞
飲食料品の中でも酒類や医薬品・医薬部外品は軽減税率の対象外となり、消費税が8%となりません。また、食玩などの食品と食品以外の商品が一体となっている「一体資産」と呼ばれる品目は、税抜価額が1万円以下かつ食品の価額の占める割合が3分の2以上の場合に限り、全体が軽減税率の対象となります。
外食との線引き
飲食料品の中でも外食の線引きは特に複雑で、8%と10%が混在するため注意が必要です。レストランでの食事や、店内で買った食べ物をお店の中の飲食スペースで食べた場合、外食として扱われ、軽減税率は適用されません。一方で、テイクアウトや出前は軽減税率の対象となり、8%の消費税が適用されます。例えば、お店で持ち帰りの食品を購入したが、気が変わって結局飲食スペースで食べた場合などは8%から10%の金額を支払い直さなければなりません。
このように適用範囲が非常にややこしいものになっているため、国税庁のWebサイトには外食の範囲について個別事例を掲載しています。気になる方はチェックしてみると良いでしょう。
軽減税率はいつまで続く?
現状、軽減税率に期間の定めはありません。軽減税率は改正された消費税法によって定められているため、法改正されない限りは軽減税率の措置は恒久的に続きます。
ただし、軽減税率と同日に始まったキャッシュレス決済のポイント還元は2020年6月末をもって終了しているため、こちらと混同しないように注意しましょう。
軽減税率の適用でどのような事業者には影響が考えられる?
ここまでは軽減税率の導入よって消費者にどのような影響があるのかを解説していきました。この項目では事業者観点から軽減税率の影響を考えてみましょう。
総額表示方式の特例措置
商品やサービスは、消費税を含んだ価格での表示が義務付けられています。これを「総額表示方式」といいます。
総額表示方式が実施された2004年以前は税抜価格表示のお店も混在していました。しかし、税抜価格では結局レジでいくら払えば良いのか分からない上に、税抜と税込の2つの値段が混在していると消費者の混乱を招いてしまいます。そこで、原則として税込の価格を表示するようになったのです。
ただし、事業者は消費税率が変わるたびに店内の値札や値段表を改定しなければなりません。そのような負担を考慮し、一定期間内は税抜の価格表示を認める「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(転嫁対策特別措置法)が制定されました。
この特例措置によって、消費者が税抜価格だと分かるように表記が配慮されていれば、2021年3月31日までの期限付きで税抜表示が認められています。そのため、軽減税率が導入されることで同一の商品に8%と10%が適用される可能性があってもひとまず簡略化して表示が可能です。
区分記載請求書等保存方式の導入
軽減税率の導入によって食品の仕入れなどを行う事業者は8%と10%の消費税の商品が混在するため、一律で8%を掛けて計算することができなくなりました。そこで、導入されたのが「区分記載請求書等保存方式」です。区分記載請求書等とは、「軽減税率の対象品目」と「軽減税率対象外の品目」を区分して記載するための請求書・納品書・領収書などの書類です。区分記載請求書等保存方式を採用した請求書の場合、これまでの記載項目に加えて「軽減税率の対象品目である旨(「※」印等をつけることにより明記)」と「税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)」が新たな項目として追加されます。
税率の区分ごとに金額が明記されているので、経理の際にいちいち集計する必要はありません。どれが軽減税率の対象でどれが対象外なのかがすぐに分かるため、書類を受け取る側としては便利な制度だといえるでしょう。
インボイスの制度の導入
一方で、2023年10月からは「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。インボイス制度とは、課税事業者(消費税を納める義務のある事業者)が適格請求書(売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類)を発行し、適格請求書に記載された消費税額のみを仕入税額控除の対象とする制度のことです。適格請求書の発行ができる課税事業者は、税務署で登録した事業者のみが対象となります。そのため、課税事業者が課税事業者以外の仕入先との取引を継続すると、導入前よりも消費税の納税額が多くなってしまうことがあり得ます。つまり、インボイス制度導入後は、仕入先に課税事業者となって適格請求書の発行を求めたり、課税事業者以外の仕入先から課税事業者に仕入先を変更したりすることを検討しなければならないのです。
≫【インボイス制度とは?経理業務の変更点や請求書の処理を解説】
まとめ
2019年10月に導入された軽減税率は消費者だけでなく事業者にとっても影響が大きい制度です。消費者はどれが対象品目でどれが対象品目ではないのかしっかり理解しておくようにしましょう。一方で、事業者側では2023年から始まるインボイス制度の導入に向けての準備が必要です。まだ導入までの期間はありますが、今のうちに制度の内容を把握して事前に準備を進めておくことを推奨します。