退職後にすぐ行いたい!役所・公的機関での各種手続きを紹介
会社を退職後は、税金や社会保険の各種手続きを期限内に行わなければなりません。
会社に在籍時は会社が代わりに対応していましたが、自分で行おうとすると意外と複雑で大変です。かといって、後回しにしておくと後々問題が生じるため、早めに手続きを済ましておくに越したことはありません。
そこで、今回は退職後に行わなければならない主な手続きとして、「健康保険」「国民年金」「雇用保険」「住民税」の4つをピックアップし、それぞれの手続きの仕方を紹介します。
退職日までに受け取る書類はどのようなものがある?
退職日が決まってから退職までに会社から受け取る書類は以下のとおりです。こちらの書類はこの後説明する各種手続きでも使用しますので、必ず退職前に会社から受け取っておくようにしましょう。
- 雇用保険被保険者証(会社に預けている場合)
- 年金手帳(会社に預けている場合)
- 源泉徴収票
- 健康保険資格喪失証明書
- 離職票
- 退職証明書(家族の扶養に入る場合に必要となる)
源泉徴収票や離職票は、会社側の手続きの都合上、退職後に会社から自宅へ郵送される場合もありますので、事前にちゃんと確認しておきましょう。
会社から受け取る書類がある一方で、会社から借りているものを返却する必要もあります。身分証や社員証、制服などの貸与されている備品や健康保険証は退職までに返すようにしておきましょう。
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健康保険の手続き
会社に在籍時は、会社が加入する健康保険組合の健康保険証が利用できましたが、退職時に資格が失効するため、返却しなければいけません。日本には「国民皆保険制度」という日本国民全員が平等に医療を受けられる制度があり、資格失効後は必ず何らかの公的医療保険に加入する義務が課せられます。
健康保険の切り替えの方法には「1.国民健康保険に切り替える」「2.任意継続制度を利用する」「3.家族の扶養に入る」という3つの選択肢があります。それぞれ期限も別々で設定されていますので保険料やメリットなどを比較しながらどれを選択するかあらかじめ検討しておきましょう。
なお、退職後に間を置かず、すぐに次の会社へ再就職する方は、就職先の会社に健康保険資格喪失証明書を提出するだけで手続きが完了します。
1.国民健康保険に切り替える
国民健康保険は市区町村が運営している健康保険制度で、加入の条件もない一般的な国民健康保険です。退職してフリーランスや自営業を始める場合は基本的にこちらを選択することになります。
国民健康保険は退職後14日以内に手続きを完了しなければなりません。手続きの窓口は居住地の市区町村の役所となりますので、開庁している時間に必ず訪れるようにしましょう。また、保険料は自治体によって異なります。もし再就職の意志があって、これまでの健康保険料より高くなる場合は、次の項で述べる任意継続制度の利用も検討してみましょう。
提出期限 | 退職後14日以内 |
届出先 | 居住地の市区町村役所窓口 |
手続きに必要なもの |
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2.任意継続制度を利用する
任意継続制度とは、退職前に加入していた健康保険に退職後も時加入し続けられる制度です。国民健康保険より比較的手続きの手間が少ない上に最大2年間の継続が可能となるため、次の就職先は決まっているが、就職までの猶予期間がある場合などはこちらを選択すると良いでしょう。
ただし条件として、資格喪失前に2ヶ月以上加入していたかつ退職後20日以内に申請を済まさなければなりません。申請期限を過ぎた場合は必然的に国民健康保険に加入しなければならないので、注意が必要です。
提出期限 | 退職後20日以内 |
届出先 | 会社または会社が加入している健康保険組合 |
手続きに必要なもの |
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3.家族の扶養に入る
最後の選択肢は家族が加入している健康保険の被扶養者になるというものです。「主として被保険者に生計を維持されている3親等以内の親族であり、年収130万円未満(60歳以上や一定の障害者は180万円未満)であること」などが条件で、自分が支払う健康保険料は0円となります。注意点として条件が厳しいことが多く、失業給付を受けていると要件から外れる場合などもあるため、事前に家族が入っている健康保険組合に確認するようにしましょう。
提出期限 | なるべく早く |
届出先 | 扶養となる家族の勤め先 |
手続きに必要なもの |
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年金の手続き
一般的な会社員の場合、毎月の給料から国民年金と厚生年金の保険料が天引きされていますが、退職後は年金の保険料も自分で支払わなければなりません。転職先が決まっていない場合や退職から次の転職先まで1日でも失業期間がある場合は必ず国民年金の切り替え手続きが必要です。退職後から14日以内に居住地の市区町村の役所の窓口で申請をしましょう。
なお、「配偶者が第2号被保険者(厚生年金または共済年金に加入している)」かつ「年収が130万円未満60歳以上や一定の障害者は180万円未満)」という条件はあるものの、家族の扶養に入れば「第3号被保険者」となり、国民年金保険料は不要なります。該当する可能性がある方は、配偶者の会社と年金事務所に相談しましょう。
提出期限 | 退職後14日以内 |
届出先 | 居住地の市区町村役所窓口 |
手続きに必要なもの |
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保険料 | 1ヶ月:16,540円(令和2年度) |
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度について
退職による収入の減少やケガ・病気などで働けない期間が長くなるなど、国民年金保険料の納付が経済的に難しい場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の活用をおすすめします。
これは前年の所得が一定額以下の方を対象に国民年金保険料を免除または納付期限に猶予を設けるもので、免除される場合は全額、4分の3、半額、4分の1のいずれかで控除されます。申請する方は、居住地の市区町村の役所の窓口で申請書類を記入し、年金手帳や雇用保険被保険者離職票等のコピーなどの必要な添付書類と合わせて提出しましょう。
たとえ、経済的な理由で納付が厳しいからといって保険料を払わないでいると将来の年金が満額支給されません。まずはお住まいの自治体の年金事務所などに確認してみることが重要です。
保険料免除・納付猶予の基準
全額免除 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
4分の3免除 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
納付猶予制度 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
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雇用保険の手続き
雇用保険とは、失業者を対象に受給される手当のことで、失業保険などとも呼ばれています。自己都合、会社都合のどちらでも失業していれば受け取ることが可能で、退職後の収入が不安な方にとっては大変有意義な制度と言えるでしょう。
申請には退職時に会社から渡される離職票や雇用保険被保険者証が必要で、居住地の管轄のハローワークへ提出します。ただし、雇用保険の手当は誰でも受け取れるわけではありません。受給対象は「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」ことが条件に挙げられており、専業主婦になる方や自営業を始める方などは対象外となります。また、自己都合での退職の場合、申請してから受給されるまでに最短でも3カ月程度かかります。受給期限も退職日から1年以内ですので、蓄えに余裕がない方は、離職票が届き次第すぐに申請するようにしましょう。
ちなみに、退職後すぐに再就職が決まった方は雇用保険の基本手当の代わりに「再就職手当」を受け取ることが可能です。こちらも一定の条件を満たす必要はあるため、ハローワークの窓口で確認しておきましょう。
提出期限 | 離職票が交付され次第すぐ |
届出先 | 居住地の管轄のハローワーク |
手続きに必要なもの |
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住民税の手続き
退職した後の再就職先が決まっていない場合、住民税を自分で支払う必要が出てきます。住民税は1年間の所得に対して課せられた納税額をその次の年の6月から翌年5月までに支払う仕組みとなっているため、対処方法が退職した月によって異なります。退職月の手取りの給与額が毎月のものより少なくなることもあるため注意しましょう。
- ・6~12月に退職した場合
- 退職月分の住民税は天引きされますが、以降の分は普通徴収となり、自分で納めなければなりません。普通徴収の場合、居住地の役所から「住民税決定通知書」が届くので、年に4回ごと(6月、8月、10月、1月)に役所で納税しましょう。
なお、退職する会社で最終月の給与や退職金から一括で天引きすることも可能です。自分自身の貯蓄や退職前の会社の人事ともよく相談をして決めましょう。 - ・1~5月に退職した場合
- 例えば、4月に退職した場合は、4月~5月の2ヶ月分、1月に退職した場合は、1月~5月の5ヶ月分といったように、退職時に前々年の住民税(5月までの分)が一括で天引きされます。
まとめ
退職後はさまざまな手続きを行わなければならず、面倒に感じる方もいるでしょう。しかし、手続きを怠ると後々困るのは自分です。後になってから慌てないために、早めの行動を心がけてスムーズに退職後の人生をリスタートしていきましょう。
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