聞き手の意識を柔軟に変化させる技術
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出来事をどう捉えるかが、私たちの反応や行動を左右する
私は研修講師として、多くのビジネスパーソンの変化を目の当りにしてきました。大手メーカーの営業部に勤めていたAさん(当時28歳)も、その一人でした。
Aさんは新卒からずっと営業一筋でがんばってきたのですが、あるとき管理部への異動を命じられたのです。営業部でやりがいを感じていたAさんは「なんで自分が?細かい数字や管理業務は苦手なのに・・・」と落ち込みました。
Aさんはこの後、どうなっていくのでしょうか・・・
実践心理学NLPのスキルに「リフレーミング」というものがあります。
これは、ある出来事に対して異なる視点の枠組み(フレーム)を当てはめることで、出来事の意味合いを変えることを言います。あらゆる「出来事」はそれ自体に意味はありません。意味づけをどうするかは、自由なのです。意味合いが変わると、反応や行動が変わってきます。
では具体的に、リフレーミングをする時の視点をお伝えしましょう。
相手の意識の「枠組み」を変化させる技術 ~リフレーミング~
≪枠組みの「状況」を変化させる視点≫
「私はいつも細かすぎると言われます」と気にしている人がいたとします。この場合「細かい」という性質がプラスに働く「別の状況」に光を当てて、その人を励ましてみましょう。例えば「数字をチェックする時などは、その細かさがとても大切だよ!」と言うと、相手は自分の性質が持つ価値を再認識することができます。
≪枠組みの「内容」を変化させる視点≫
状況はそのままで、「意味内容」を変えるアプローチです。「私は飽きっぽいんです」という人がいたとします。この場合「飽きっぽい」という性質は「ほかにどんなプラスの意味があるか?」と考えます。例えば「飽きっぽい」⇒「好奇心旺盛」という様に、意味内容を変化させることができます。その人に「あなたは好奇心旺盛なんですね!」と言って励ましてみましょう。相手の意識がポジティブになります。
「問題状況」を「チャンス」に変えるコミュニケーション
ここで、Aさんの例をもう一度見てみましょう。
管理部に異動になることを「嫌な仕事を押し付けられた」と捉えずに、どうリフレームできるでしょうか?
中長期的なキャリアの視点からすると、「苦手な計数管理能力を高める機会」となります。また、一時的に営業現場から離れたとしても「将来的に数字・経営が分かる営業マンとして脱皮する機会」ともなるでしょう。
効果的なリフレーミングをすることで、問題状況をもチャンスに変えるコミュニケーションが可能になるのです。
「目前の状況」をどう捉えるかが、生き方を変える
Aさんの後日談があります。
管理部で数字を扱う仕事は、最初はAさんにとって苦痛でした。しかし、今回の異動を人事部長から上手にリフレームされたAさんは、「数字・経営が分かる営業マンとして脱皮」するべく努力を続けました。
しばらくの間がんばっていると、現場の業務フローを熟知しているAさんは、数字と現場の動きをつなげて考えられるようになりました。
3年後、Aさんは営業部にマネジャーとして戻ってきました。
そして、3年前までは苦手意識があった顧客、特に数字にうるさい経営者や管理部長から、また社内でも一目置かれるトップ営業マンとなったのです。
「人間万事、塞翁が馬」。
人生の禍福は予測できません。ならば、目前にある状況を上手にリフレーミングして、日々を気持ち良く、しなやかに生きようではありませんか。