第1回 口ベタな社長の為の、 達成する経営計画作成と 社員を巻き込む目標管理
専門家に学ぶ!シーン別事業計画書の書き方
俺が口ベタ? 私が口ベタ?
コンサルタントとしてこれまで多くの経営者とお話させていただきましたが、計画が計画通り進まない一つの大きな要因として、「社長が口ベタ」であるという共通点があります。そして、その多く方に、更に共通しているのは、「自分は口ベタではない」と思っている事です。口ベタとまで言うと言い過ぎかもしれませんが、「言葉足らず」なのです。どういうことか?簡単に言うと、経営計画として立案したものの「真意」や「目的」が社員に伝わっていないのです。でも、社長自身は「伝えた」気になっている。
何故この目標値なのか?それにはどういう意味があるのか?その先に何があるのか?このような事を作成段階から伝え、社員を巻き込んで作る事にこそ意味があるのです。
出来上がった経営計画自体にはそんなに意味がない
ただ・・・実は、経営計画書そのものにはそんなに価値がありません。無いよりはあった方が断然いいですが、既に経営計画を作成されている企業においても、それを実際に「活用」出来ているのは、私の経験からすれば半数以下です。
計画書を作るところまでには躍起になって時間を割きますが、一旦事業年度が始まって数カ月もすれば、計画そのものが忘れ去られてしまう、などという事も良くある話です。
多くの企業が、期中に計画を下方修正せざるを得なくなっている事からも分かるように、「そもそも計画通りにいかない」という大前提を認識しておく必要があります。不確実性の高いご時世です。計画は狂うもの、という悲しい現実を受け止めましょう。
だからこそ経営計画の「作成プロセス」と「実行プロセス」が重要
作成プロセス、と言っても、実際に作成する作業の前にやるべき事があります。多くの場合、単年度の計画や3か年程度の中期計画を作成する際、前年実績から見込みを立ててまず数値目標を決めていく事から始めてしまいます。そして、その場合、「売上」をまず目標に据えて、そこから利益を算出する形で計画値を固めていくような流れです。
しかし、これでは、売上を上げる「理由」が明確になりません。経営計画を達成したいのであれば、そこに関わる社員全員が「達成したい」とまずは思える根拠が必要ですし、更には、「達成しなければ話にならない」とまで思える組織は、結果的に計画を達成し、事業を成長させています。
半自動的・自発的な運用には「目的」ありき
そして、先述の通り「計画は狂うもの」という前提で考えれば、どのような懸念材料があるかを事前に洗い出しておいて、その予防線を張る計画が必要になります。更に、それでも「計画は狂うもの」ですから、「実行」の段階で軌道修正できる「仕組み」を持っておく必要があります。それを半自動的に、自発的に行うものが目標管理なのです。
では、どうやってそれを半自動的に、自発的に行えるようにするのか?
答えは、関わる全員が心から「それを実現したい」と共感することです。そう思えるには、共感できる「目的」が必要になります。つまり、「何のためにやるのか?」という根拠です。そして、それを目指して進む先に、どんな未来があるのか?をイメージ出来た時に、初めて社員にとっても「自分の」計画となります。
口ベタ社長を卒業するために必要な要素
ですので、計画書には、下記の各要素がもれなく盛り込まれている事が必須となります。
- 目的 = 何の為にこれをやるのか?
- 目標 = どの位やるのか?
- 戦略 = どのような方針で実行するのか?
- 戦術 = どのような方法で実行するのか?
- 戦力 = 誰がやるのか?どう育てるのか?成長してもらうのか?
- 達成時のゴールイメージ = 会社はどうなっている?「私」はどうなっている?
- 想定される懸念材料とその対策
ここに挙げたうち、「目標」の一部が、所謂定量的な計画数値になります。この数値だけを発表しても伝わらないのは、ここまでお読みいただくとお分かり頂けたと思います。口ベタ、言葉足らずな経営計画とは、このことです。
では、次回以降で具体的な計画作成と運用についてお伝えさせて頂こうと思います。
今回のポイント
- 口ベタ・言葉足らずだから伝わらない、達成されない
- 経営計画そのものよりも、作成と運用のプロセスが大事
- 計画書に必要な各要素