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第1回 今さら人には聞けない!弁護士が教える、委任状の常識

ビジネスシーンはもちろん、学校や病院など、さまざまな場面でたびたび利用される委任状は、簡単に言えば「ある人に一定の事務を委託する意思を書き記した文書」です。

なんとなく利用方法を理解してはいるものの、基礎知識や活用シーンなど、細かく理解している人はあまり多くありません。

本記事では、委任状の活用シーンのほか、メリット・デメリット、委任状を作成する際のポイントなどを解説します。

また、第三者に事務を委託することは、その責任を自分が負うことになるため、利用時のトラブル防止策にも目を通しておきましょう。


この記事の著者
東銀座綜合法律事務所  経営者弁護士 

委任状の基礎知識と活用シーン

実は、普段あまり気付かないけど何気ないところで使われている委任状。
委任状には、当事者が一定の事務を第三者に委託することが記されていますが、通常はその事務処理のために必要な代理権が与えられ、その権限も記載されています。

例えば、宅建業者さんに不動産の売買を代理してもらったり、住民票を代わりに取りにいってもらったり、弁護士さんに訴訟を依頼したりといった、本来自分で処理しなければならないことを、委任状を使って第三者に代理で手続きをしてもらうことできます。

主に委任状が必要となるシーンは、

  • 不動産の売買等の契約を、宅建業者に依頼する場合
  • 住民票や戸籍謄本など、各証明書の交付請求手続を第三者に依頼する場合
  • 車の名義変更申請を、第三者に依頼する場合
  • 訴訟を弁護士に依頼する場合
  • 株主総会に出席できない株主が、代理人によって議決権の行使を行う場合
  • 不動産を取得する際や、会社設立をした際に、登記を司法書士に依頼する場合
  • 相続によって銀行口座を解約する手続等のために、相続人の代表者にその手続を依頼する場合

など多岐にわたりますが、これは、委託する事務に制限がないため、色々な場面で使われているからです。

なお、代理権を授与する行為と委任をすることは、実際上は区別する必要もなさそうですが、法的には別のものと考えられています。

他にも急遽必要となる場面がありますが、いざ必要になってから焦らないために、今回から委任状の簡単な基礎知識と活用する際の注意点について、4回にわたり解説をしてまいります。

委任状を活用するメリット・デメリット

委任状を活用する際のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

委任状を活用するメリットは、代理人を活用するメリットと重複します。つまり、本来自分でやらなければならない面倒な手続き等を、別の第三者にやってもらうことにより、自らの手間が省けたり、より専門的知識のある人に委ねられたりする点です。

例えば、忙しい経営者がある手続きのため戸籍謄本を取得したい場合、委任状と一定の書類があれば、代わりに社員に取りに行ってもらうこともできます。また不動産や会社の売買など専門知識を有する契約を締結する場合、専門家に委任をすれば面倒な手間を省くことができますし、専門家の知識と経験が加わるため、安心して契約をすることができます。

デメリット

逆に委任状を活用する際のデメリットは、代理人を活用するデメリットと重複します。
つまり、自分自身が、委任した相手が行った行為の責任を負わなければならないという点です。

例えば、委任した相手が委任状を悪用した場合でも、その責任を自分が背負わなければならない場合があるということです。

こういったデメリットを知らずに安易に委任状を作成し、あとから「そんなはずではなかったのに」「知らなかった」といっても通用しません。

以上のように、委任状を活用するメリットはもちろんありますが、それ以上に後からトラブルになりやすいのが委任状ですので、作成する際には十分な注意が必要になります。

委任状を作成する際のポイント

実は委任状は、法的に決まった書式がありません。
ですから、口頭でも委任は可能ですし、作成方法も、手書きでもWordなどを使って作成しても構いません。
また用紙の指定や縦書き・横書きの規定もないため、ご自身でいかようにも調整が可能です。

以上のように、委任状に決まった形式はありませんが、通常は、委任状には以下のポイントが盛り込まれています。
① いつ
② 誰が
③ どの様な内容(事務処理、権限)を
④ 誰に委任した(与えた)か
という項目です。

一番シンプルな例をご紹介します。

この書式に、様に①~④の内容を盛り込みます。

ここで重要なのが⑤のとおり、最後に「以上」と記載することです。
後から勝手に委任内容を追加されないために、添えておくことをオススメ致します。

委任状活用時のトラブル防止策

本来自らが行わなければならない行為を、第三者に代わりにしてもらうという事は大変便利な事ではありますが、やはり気をつけなければならないのは、委任を受けた人物が行った行為は、基本的に自分に責任が負わされるという点だと思います。

委任状を活用する際のトラブルとして多いのが、委任内容の範囲を超えて、代理人が契約・手続きを行ってしまうというケースです。

もちろん、委任状にしっかりと委任した内容が明記されており、それ以上行った契約に関しては自分で責任を負う必要はありません。

しかし、相手に誤認を与えるような委任内容や白紙委任ですと、後から「違いました」というのは通用しません。

委任状を作成する際は、相手に与える委任内容を限定し、作成されることが必須です。

今回のポイント

ポイント(1)

委任状を活用することで、面倒な手続きなどの手間を省くことができたり、専門知識を活用できたりできる

ポイント(2)

委任状には特に決まったフォーマットは無いが、盛り込む要素はある程度決まったものになる。

ポイント(3)

委任内容は限定的に与えることが重要。白紙委任は避ける。

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著者プロフィール

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野村 雅弘

東銀座綜合法律事務所 経営者弁護士

早稲田大学、慶應義塾大学大学院法務研究科卒業後、司法試験合格。司法修習を経て、2009年1月から東銀座綜合法律事務所に入所。現在、同所経営者弁護士。主に中小企業法務、民事事件、家事事件等を取り扱う。

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