看護休暇とは? 制度の概要や企業が就業規則を変更する際のポイントを解説
介護休暇という言葉を聞いたことはあっても、看護休暇という言葉は知らないという人のために、今回は看護休暇に焦点をあててみましょう。
ユニークな休暇制度を導入している企業もありますが、看護休暇は法定で定められているものになります。対象者は従業員全員です。
一体どのような休暇が看護休暇となるのか、どんな時に取得することができるのか、法律が改正されたことで企業側が注意すべき点があるのかを解説します。
看護休暇とは?
まずは、看護休暇の定義をみていきましょう。また、看護休暇制度とは何かを法律の観点から説明します。
看護休暇の定義
(子の)看護休暇とは、小学校就学前の子どもがケガや病気、病気の予防のために世話が必要になった場合に取得できる休暇です。
たとえば、子どもが熱を出して看病が必要な場合や、予防接種で付き添う場合などが取得できる条件です。また、看護休暇は有給休暇とは別に取得できるため、有給休暇を使わずに休暇を取ることができます。
なお、条件を満たしていれば正社員だけではなく、パート・アルバイトなど雇用形態にかかわらず取得が可能です。
法律で定められている「子の看護休暇制度」とは
子の看護休暇は、法律で以下のように定められています。
- 子の看護休暇とは、負傷または疾病に罹った子の世話、あるいは疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対し与えられる休暇である(育児・介護休業法第16条の2)※1
子どものケガや病気の世話だけではなく、子どもが予防接種や健康診断を受ける時にも取得できます。
- 事業主は、子の看護休暇の申出が労働者からあった時は、申出を原則拒むことができない(育児・介護休業法第16条の3)※1
子の看護休暇は有給休暇と異なり、事業の正常な運営を妨げる場合であっても事業主は申し出を拒むことができません。ただし、あらかじめ労使協定を締結していれば、以下のいずれかに該当する従業員の申し出を拒むことは可能です。
・継続して雇用されている期間が6カ月に満たない者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
- 1日の所定労働時間数または1年間における1日平均所定労働時間数に、1時間に満たない端数がある場合、1時間に切り上げるものとして取り扱う(育児・介護休業法施行規則第34条第2項)※2
子の看護休暇を時間単位で取得する場合に、1時間未満の端数がある場合は1時間に切り上げます。たとえば、1日所定労働時間が7.5時間だった場合は、8時間分が取得可能になるということです。
- 子の看護休暇の申出は、以下の事項を事業主に明らかにしなければいけません(育児・介護休業法施行規則第35条)※2
- 労働者の氏名
- 申出にかかる子の氏名及び生年月日
- 看護休暇を取得する年月日(1日未満の単位で取得する場合は、看護休暇の開始及び終了の年・月・日・時)
- 申出にかかる子が負傷し、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う旨
従業員が子の看護休暇を取得するうえでは、上記の情報を事業主に提示しなければいけません。事業主側は必要な情報を得たうえで、子の看護休暇を取得させるようにしましょう。
- 事業主は、労働者に対して申出にかかる子が負傷し、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができる(育児・介護休業法施行規則第35条第2項)※2
事業主は、子どもの世話をした事実確認として、従業員に証明書を求めることができます。
※1参考:e-Gov|育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
※2参考:e-Gov|育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
看護休暇と介護休暇の違い
介護休暇は、両親や親族などが要介護状態になった際に、家族の介護やそれに関わる世話をするために取得できる休暇です。食事や排せつの介助など、直接的な介護だけでなく、書類手続きや買い物などの間接的な作業にも適用されます。
日数は年に最大5日までとされ、介護者が複数人いる場合には最大で10日まで取得が可能です。
一方、(子の)看護休暇は小学校入学前の子どもがケガや病気になった場合に、その世話を行う従業員に対して与えられる休暇です。※
※参考:e-Gov|育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
看護休暇の給与・日数
看護休暇は、法定で認められているものです。給与は発生するのか、日数はどのくらいあるのか、わかりやすく説明します。
看護休暇は無給?有給?
看護休暇は、取得時の給与支給について法律で定められていません。よって、看護休暇が有給か無給かは事業主によって異なります。そのため、看護休暇の取得日が有給・無給どちらになるか、就業規則に定めなければいけません。
もし、無給と定めた場合は、取得時にトラブルにならないよう、事前に無給であることを従業員に周知したうえで取得させましょう。
看護休暇を取得できる日数
看護休暇を取得できる日数は、小学校就学前の子どもが1人の場合は1年間で最大5日、2人以上の場合は最大10日です。つまり、子どもが3人いたとしても、取得できる日数は最大10日になります。
なお、子どもが複数人いる場合であっても、同じ子どもに10日間取得が可能です。1人の子どもに対して5日ずつ、というような割り振りにはなっていません。
看護休暇制度について、企業が就業規則を変更する際の注意点
法律が改正されたことで、企業側は就業規則の変更をしなければなりません。その際の注意点は以下になります。
時間単位の取得に変更にする
看護休暇は2021年1月から時間単位での取得が可能となり、半日単位の取得は義務ではなくなりました。そのため、就業規則などの社内規定を半日単位から時間単位に置き換える必要があり、労使協定も時間単位に修正が必要です。
なお、労使協定の締結により時間単位での休暇の取得を除外になった従業員には、引き続き半日単位での休暇の取得を認めるよう、配慮が必要になります。※
※参考:厚生労働省|子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得について
看護休暇における勤怠管理
看護休暇を利用するにあたり、勤怠管理では欠勤やその他の休暇とわけて管理しなければいけません。
なぜなら、看護休暇は有給休暇の付与条件である出勤率の計算における分母となる全労働日から除かれるなど、扱いが異なるためです。
また、時間単位の看護休暇は1時間単位で計算する必要があります。残日数とあわせて残時間数の管理も必要となり、その他の休暇とわけて管理しなければいけません。このように、看護休暇の勤怠管理は複雑化しているため、勤怠管理には注意が必要です。
看護休暇についてのまとめ
看護休暇についてご紹介しました。まとめると、以下のとおりです。
- 看護休暇は、法律で定められている休暇である
- 看護休暇が無給か有給かは、企業側が決めるものである
- 看護休暇は2021年1月より、時間単位での取得が可能となった
- 看護休暇は複雑化したため、勤怠管理に注意が必要である
看護休暇について、法律改正により変更となった点などを、今一度ご確認ください。