給与から引かれる社会保険や住民税~控除の仕組みや徴収方法を解説~
会社員は毎月の給与から社会保険や住民税などが天引きされた額が、手取り額として支給されます。
その金額が徴収される理由や、どのように計算されているのかご存知でしょうか。
今回は、社会保険や住民税などの税金の控除の仕組みや徴収方法について、分かりやすく解説します。
若手の社員の方こそ知っておくべき内容ですので、ぜひ参考にしてください。
給与から天引きされるもの
会社員の給与から、主に引かれるのは社会保険や税金です。
まずは、給与から天引きされる社会保険や所得税、住民税について解説します。
社会保険
社会保険とは、健康保険と介護保険、公的年金、雇用保険、労働者災害補償保険(以下、労災保険)の総称です。
病気やケガ、死亡、失業などの保険事故が発生した場合、所定の給付が受けられる、国民の生活を守るための保険制度です。
所定の条件を満たした人は、保険料を負担して各保険制度に加入する義務があります。
会社員の場合、保険料は企業と従業員が原則折半して負担しますが、労災保険だけは企業の全額負担です。
また、介護保険については、40歳以上の人だけが加入対象となります。
税金
会社員の所得税と住民税は、給与から天引きされます。企業が給与から税金を天引きすることは源泉徴収と呼ばれています。
自営業者は、確定申告を行って税金を支払います。
しかし、企業は従業員に支払う給与から源泉徴収を行い、国(所得税)や地方自治体(地方税)に納付しなければなりません。
そのため、毎月の給与から所得税や住民税が天引きされます。所得税の金額は企業が概算して源泉徴収し、年末調整で精算します。
地方税は前年度の所得に対して課税され、当年6月から翌年5月までの給与から天引きされます。
そのため、前年の年収が、住民税の課税される基準を満たしていない社会人1年目は、住民税が課税されません。
社会保険とは?
ここからは、給与から差し引かれる社会保険の種類や目的、社会保険の計算方法を具体例を交えながら解説します。
社会保険の種類
会社員が加入する社会保険は、健康保険と介護保険(40歳以上の人)、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5つです。
社会保険料とは、毎月会社員の給料から天引きされる保険料のことです。
健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料は、標準報酬月額を基に計算し、企業と従業員が折半して負担します。
雇用保険料は、保険料のうち失業給付や育児休業給付に対する保険料のみ、企業と従業員の折半であり、その他の保険料は全額企業負担です。
また、労災保険料は企業が全額負担するため、従業員が支払う必要はありません。
社会保険の目的
社会保険は、万一の場合に日本国民の生活を守るために設けられた保険制度です。
各保険制度の主な役割は以下のとおりです。
- 健康保険:病気やケガで治療が必要になった時などの保障
- 介護保険:加齢に伴う要介護状態になった時の保障
- 厚生年金:老後や障害、死亡時の生活資金の保障(死亡の場合は遺族保障)
- 雇用保険:失業したり、育児や介護で就業が難しくなった時などの保障
- 労災保険:労災事故で損害を被った時の保障
社会保険料の計算方法と計算事例
健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料は、標準報酬月額(※)に各保険料率を掛けて計算します。
従業員が負担するのは各保険料の1/2です。
【社会保険の保険料率】
- 健康保険:約10%(加入する健康保険によって異なる、また協会けんぽ(全国健康保険協会)の料率は都道府県ごとに異なる、毎年度見直し)
- 厚生年金:18.3%(法改正がなければ一定)
- 介護保険:1.82%(2023年3月以降、毎年度見直し)
※社会保険料などを計算するため、その年の4〜6月の報酬を基に算出した金額。健康保険・介護保険の標準報酬月額は1等級(5.8万円)から50等級(139万円)、厚生年金は1等級(8.8万円)から32等級(65万円)に区分される。
標準報酬月額が30万円の場合、従業員が負担する保険料は以下のとおりです。
【保険料の計算例】
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健康保険と国民健康保険の違い
健康保険制度は、自営業者やその家族などが加入する「国民健康保険」と、会社員やその家族などが加入する「健康保険」の2つに分かれます。国民健康保険の保険料は、世帯主が家族全員分をまとめて支払います。
一方、健康保険では会社員が自分1人分の保険料を支払い、家族は会社員の被扶養者として保険料の負担はありません。
また、国民健康保険は市区町村が運営していますが、健康保険は企業が設立した健康保険組合や中小企業等が加入する全国健康保険組合(協会けんぽ)が運営主体となります。
住民税とは?
ここからは、税金のなかでも住民税とは何か、計算方法や注意点について詳しく解説します。
住民税の概要
住民税とは、所得のある人が地方自治体に支払う地方税のことです。住民税には、都道府県に支払う都道府県民税と、市町村に支払う市町村民税の2種類があります。
住民税は、年末調整や確定申告で確定した前年度の所得に対して、地方自治体が税額を計算して課税します。
自営業者に対しては、地方自治体が「住民税決定通知書」を送付して税額の通知と納付案内を行います。
会社員の住民税額は、地方自治体が企業に「住民税決定通知書」によって案内されます。
企業が給与から源泉徴収して納税し、従業員に対して納税額を通知する流れです。
所得税と住民税の違い
所得税と住民税はどちらも、日本国民の所得に対して課される税金です。会社員の場合は、所得税も住民税も企業が給与から源泉徴収して納税します。
ただし、所得税が国の税金(国税)であるのに対し、住民税は地方税です。当然、税額の計算方法も異なります。
また、所得税は毎月の給与から概算で天引きされ、年末調整で過不足金額を精算します。一方、住民税は前年の所得で確定した税額が、当年6月から翌年5月にかけて天引きされます。
住民税の計算方法と注意点
住民税である都道府県民税と市町村民税は、所得に応じて課税される「所得割」と所得に関係なく課税される「均等割」の合計額です。
地方自治体によって多少の違いはありますが、所得割は「所得の10%」、均等割は「5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)」となります。
住民税の計算の基になる課税所得金額は、前年の1月1日から12月31日までの所得の合計です。会社員は年末調整の際に、生命保険料や住宅ローンなど、所得控除できるものを漏れなく申告することで、課税所得金額を抑えられます。
参考:個人住民税|総務省
社会保険と住民税についてのまとめ
会社員が受け取る給与からは、社会保険料や住民税、所得税が天引きされています。
社会人として、給与明細から何が差し引かれているのか、しっかりと確認するようにしましょう。