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投資と節税 中小企業の人や物に対する投資を促進する税制もご紹介

投資と節税 中小企業の人や物に対する投資を促進する税制もご紹介

前々回は節税について、そして前回は投資について取り上げました。

そこで今回は、「人や物に対する投資」を対象とした税制について取り上げていきます。


この記事の著者
  税理士 

投資の結果、節税が可能

ここで前々回前回の簡単な復習です。
事業を継続、発展させていくためには、人や物に対する投資が必要不可欠です。新規雇用の創出、人材の育成、新しい設備の導入などを通じて企業が成長することは、社会全体の活性化にもつながります。そしてこれらの投資をすることは、経費が増えることになり、つまり節税にもつながっています。

大切なのは「節税のための節税」ではないという点です。
事業に役立つことをした結果、それが節税につながる。節税に対する考え方は色々とありますが、とりあえずこの点を押さえておけば、それほど悪いことは起こりません。

そして、行政として人や物に対する投資を促すために、特別な税制がいくつも用意されています。今回はその代表例について確認していきます。

なお、今回紹介している税制は2022年(令和4年)3月時点の法律に基づいています。税制は常に変更や廃止、新規制度の開始があります。人や物に対する税制も常に変動していますので、その時点で用意されている制度について、網羅的に調査する必要があることに注意が必要です。


「人」を対象にした税制

今回は代表的な税制である「所得拡大促進税制」について簡単に説明します。

所得拡大促進税制 (賃上げ促進税制)(中小企業庁HPより

人に対する投資を簡単に言い換えると、従業員に支払う給与を増やすことを意味します。企業が人件費の支払水準を引き上げていけば、回り回ってそれが内需拡大など経済上の課題解決にもつながります。

そこで、企業が従業員に支払っている賃金給与が前年と比較して増えている場合、その増加した金額に応じて税額控除を受けることができる制度が用意されています。それが所得拡大促進税制です。

ここでは簡単に説明していますが、実際の適用については、事業年度開始の時期に応じてもう少し複雑な計算が必要な場合もあります。また随時改正が行われており、令和4年4月1日以降に開始する事業年度からは「賃上げ促進税制」と呼ばれ、税額控除の幅が全体的に引き上げられます。また、同時に従業員に対する教育訓練についても後押しをするような内容になりました。

参照  https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

なお、所得拡大促進税制は大企業対象のものと中小企業対象のもので、制度が異なっている部分もあります。中小企業向けのもののほうが、適用要件や税額控除の金額を含めて有利ですので、適用時に間違わないように注意が必要です。

その他、地方拠点強化税制において雇用促進税制が用意されています。詳細は省略しますが、コロナ禍の影響もあり、本社機能を地方に移転する企業も出てきています。そのようなときには同制度の活用も検討の余地があるかもしれません。


「物」を対象にした税制

設備投資を対象にした税制は、経済活性化の観点から常に新しい制度が用意されています。特に大きな天災や社会的課題が生じた場合には、その対応を進めるための設備投資について、税制上の特例が設けられることが珍しくありません(例:コロナ禍においてテレワークを推進するための税制など)。

今回はもっとも基本的な「中小企業投資促進税制」についてご紹介します。

中小企業投資促進税制(国税庁タックスアンサーより

一定の条件に合致する中小企業が、所定の金額基準等を満たす機械装置、ソフトウェア等を取得した場合に、特別償却(通常の減価償却からの割増)を計上したり、取得価額に応じた税額控除(取得価額の7%)を受けることができる制度です。特別償却と税額控除は、1つの資産について両制度を同時に受けることはできず、どちらかを選ぶことになります。

特別償却を選べば、企業はより固定資産について、より早期に経費を計上できるようになります。結果、取得時期の利益を大きく減少させることが可能となり、税負担を大きく減らすことができます。税負担の軽減は資金効率に大きく影響するため、より積極的に事業拡大を目指したい場合に、とても有利です。ただし、あくまでも「経費の前倒し計上」である点には留意が必要です。

一方、税額控除を選んだ場合、固定資産取得直後の節税効果は特別償却に劣ることが多いです。ただし、税額控除は純粋なボーナスポイントのようなものなので、中長期的にみれば、税額控除を選んだほうがお得ということになります。

特別償却、税額控除、どちらを選ぶにせよ、設備投資を行うことにより節税を図ることができるのは大きな利点です。設備投資を検討する際には、購入する資産が税制の適用要件を満たしているか否か、事前に確認することを強く推奨します。


計画書の策定で対象になるものもある

また、税制の中には一定の計画書を策定することが適用要件となっているものがあります。ここでは代表的なものを2つ、ご紹介します。

経営力向上計画(経営強化税制)(中小企業庁HPより

経営強化法という法律に基づき、経営力向上計画を策定し、業種ごとの所管省庁から認定を受けた企業については、様々な税務上の特定が用意されています。具体的には、上で紹介した「所得拡大促進税制」や「中小企業投資促進税制」について、税額控除が上乗せになったり、即時償却(固定資産を導入後、全額をすぐに経費として計上できる)といった特典が用意されています。

経営力向上計画の策定および認定は、中小零細企業が円滑に事業経営を行うために欠かせないものになりつつあります。税制だけでなく、金融支援等も含めて様々な特典が用意されていますので、これから事業を発展させたいという事業者は、ぜひとも策定と認定を受けることを推奨します。

先端設備等導入計画(中小企業庁のHPより

あまり認識されていませんが、企業が導入した固定資産には、固定資産税が課されます。固定資産税というと不動産(土地や建物)にだけ課されているイメージがありますが、実際には機械装置や器具備品にも課されるのです(一定の免税点あり)。一般的には償却資産税と呼ばれている税金です。

そこで、設備を導入する前に先端設備等導入計画という計画を策定し、設備が所在する市区町村に提出し認定を受けることで、3年間、償却資産税が減免されます。多くの市区町村ではゼロまで減免されています。

償却資産税は、固定資産の所有に対して課される税金なので、企業が黒字でも赤字でも負担する必要があります。先端設備等導入計画の策定・認定を受けることにより、確実に税負担を減らすことができます。

経営力向上計画や先端設備等導入計画の策定・認定に当たっては、認定経営革新等支援機関の協力を得る必要がある部分もあります。支援機関は税理士などの士業、金融機関、商工会議所といった組織があります。

人件費の引き上げや雇用拡大、設備投資を考えている場合には、まず認定経営革新等支援機関に相談するのがオススメです。

その他、本当に多くの制度がありますので、上手に活用して事業経営を円滑に進めていきましょう!

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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