まだ間に合う! 年末調整・令和3・4年度の変更ポイント
前回のコラムでは、令和2年(2020年)度の年末調整の変更点と電子化について説明しました。
そこで本コラムでは、前回の変更点と併せて令和3・4年の年末調整の主な変更点について説明します。
令和4年度の年末調整変更点
令和4年度の税制改正では、特に大きな変更点等はありませんでした。
下記直近の税制改正に伴って変更されたポイントを解説していきたいと思います。
令和3年度の年末調整変更点
この年も税率や控除額など特段の変更点はありませんでしたが、各種書類に押印が不要になった点はポイントです。
【押印が不要になった年末調整関係書類】
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
令和2年度の年末調整、主な変更点はこの3つ
給与所得控除の引き下げ
給与所得控除は給与所得者に認められている控除で、給与所得を計算する際に、収入から差し引かれるものです。
給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除
この給与所得控除が一律に引き下げられました。
例えば、年収600万円の人は、給与所得控除が174万円でした。令和2年度からは164万円になります。
そうすると、給与所得は上がりますので、これだけを見ると増税ですが、後述する基礎控除という別の控除を見直すことによりバランスを図っています。
【新旧 給与所得控除の比較】
令和2年度以降 給与所得控除 | 令和1年度まで 給与所得控除 | ||
---|---|---|---|
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 | 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 | 1,625,000円まで | 650,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで |
収入金額 × 40% - 100,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで |
収入金額 × 40% |
1,800,001円から 3,600,000円まで |
収入金額 × 30% + 80,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで |
収入金額 × 30% + 180,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで |
収入金額 × 20% + 440,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで |
収入金額 × 20% + 540,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで |
収入金額 × 10% + 1,100,000円 |
6,600,001円から 10,000,000円まで |
収入金額 × 10% + 1,200,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) | 10,000,001円以上 | 2,200,000円(上限) |
参照:国税庁「給与所得控除」
基礎控除の見直し
基礎控除とは、誰にでも認められる一律の控除です。
令和1年度までは38万円の控除が認められていましたが、令和2年度からは、基本的に48万円に上がります。
ただし、合計所得が2,400万円を超えると段階的に下がり、2,500万円を超えた時点で、ゼロ円になります。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
参照:国税庁「基礎控除」
給与所得だけで2,500万円を超える場合は、年収ですと2,695万円です。大多数の給与所得者は当てはまらないと思いますので、基本的には48万円と考えていいと思います。
所得金額の調整控除の創設
給与所得控除の見直しにより、年収850万円を超える人は、実質的に10万円を上回る控除額の引き下げとなります。そのような負担を考慮して、所得金額調整控除が新設されました。
具体的には、年収850万円を超える給与所得者のうち、次のいずれかに該当する場合、総所得金額の計算上、一定金額を控除するものです。
- 本人、同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが、特別障害者に該当する場合
- 年齢23歳未満の扶養親族がいる場合
なお、所得金額調整控除額は以下のようになります。
所得金額調整控除額 = (給与等の収入金額※ - 850万円) × 10%
※給与等の収入金額が1,000万円超の場合は1,000万円
年末調整の電子化(ペーパーレス化)がスタート
ペーパーレス化のメリット
年末調整は、従業員自身が申告書に扶養状況や保険料等の金額を記入し、それを会社が受け取り、年末調整ソフトに入力して計算します。つまり、アナログに記入したものを、デジタル化するという作業を行っていました。
生産性が叫ばれる今日において、このような作業は非効率となったのでしょう。令和2年度より、条件付きですが、年末調整をペーパーレス化してもよいことになりました。
会社のメリット | 従業員のメリット |
---|---|
入力の手間が省ける |
控除証明書をなくした場合の再発行という手間が、そもそも電子なのでなくなる。 |
控除証明書データをインポートすれば、添付書類確認の事務が省ける |
|
記載誤りが減ると思われるため、従業員への問い合わせも減る |
|
申告書等の書類での保管が不要になる |
電子化のメリットを受けるのは、会社のほうが大きいです。アナログに書き記されたものをデジタル化する作業が省けるからです。
また、控除証明書データをそのままインポートしたものであれば、数字が変わることはないので、従来行っていた、控除証明書に記載された金額との付け合わせ作業もなくなります。
ペーパーレス化のデメリット
メリットがあればデメリットもあります。特に導入時は、その方法に関する周知、修得、習慣化に壁があったり、関係システム自体や、システム相互の対応が未成熟であるという影響が大きいと思います。
会社のデメリット | 従業員のデメリット |
---|---|
従業員にシステムの使い方を周知する必要がある。 |
全部電子化できないと、紙との併用になり、かえって手間がかかる。 |
全部電子化できないと、紙との併用になり、かえって手間がかかる。 |
参照:国税庁「年末調整電子化 ソフトダウンロード」
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