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契約社員の社会保険加入条件や手続きで覚えておきたい点を解説

監修者:西岡社会保険労務士事務所 代表  西岡 秀泰

契約社員の社会保険加入条件や手続きで覚えておきたい点を解説

フルタイムで働く社員のうち、雇用期間の定めがある社員のことを「契約社員」といいます。社会保険の加入条件を満たしている契約社員がいる場合は、正社員と同様に加入義務が発生するので注意しましょう。

この記事では、契約社員の社会保険加入条件や手続きで注意したい点を解説します。人事や経理のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。


契約社員も社会保険の加入義務がある

社会保険の加入義務は、健康保険法や厚生年金保険法に定められています。正社員や契約社員、パートなどの雇用形態に関係なく、労働日数や労働時間などから一定の雇用関係にあれば、社会保険の加入義務が発生します。

社会保険とは、健康保険や介護保険、厚生年金のことをいいます。雇用保険や労働者災害補償保険のことを広い意味で「社会保険」と呼ぶこともありますが、ここでは「労働保険」と呼び、社会保険とは区別して解説します。

厚生年金は70歳未満、介護保険は40歳以上という要件がありますが、それ以外は健康保険も厚生年金も適用される企業や対象となる従業員は原則同じです。

参考:e-Govポータル
健康保険法第3条
厚生年金保険法第9条


契約社員の社会保険加入条件

契約社員が社会保険に加入する条件は、次の2つです。

1. 原則1か月の所定労働日数と1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上

社会保険に加入義務のある従業員は、厚生年金保険法では「適用事業所に常時使用される従業員」です。「適用事業所」とは、法人や従業員が常時5人以上いる個人事業所(農林水産業などを除く)のことで、大半の企業が該当します。

「常時使用される」とは、正社員に加えて、1か月の所定労働日数と1週間の所定労働時間が、同じ会社で働く正社員の4分の3以上の従業員が該当します。この条件を満たせば、契約社員にも社会保険の加入義務が発生します。

参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構

2. 特定適用事業所で働く短時間労働者

従業員数が一定以上の「特定適用事業所」の従業員は、所定労働日数・時間が上記の基準を満たさない場合でも、次の条件を満たせば社会保険への加入が必要です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金が月8.8万円以上
  • 2か月よりも長期で雇われる見込みがある
  • 学生でない

所定労働時間に残業時間は含まれません。また、賃金に賞与は含まれないため注意が必要です。

特定適用事業所の従業員数は次の通り数年で改定され、対象となる企業は順次拡大しています。

  • 平成28年10月1日~:従業員数501人以上
  • 令和4年10月1日~:従業員数101人以上
  • 令和6年10月1日~:従業員数51人以上

令和4年10月1日からは、従業員数101人以上500人未満の企業に勤務し、条件を満たした短時間労働者が、新たに社会保険に加入することになりました。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構


契約社員でも社会保険加入の対象外となるケース

契約社員の社会保険加入条件を満たしている場合でも、加入の対象外となるケースがあります。詳細を見ていきましょう。

1. 学生の場合

大学や高校、専修学校などに通う学生は、1週間の所定労働時間や毎月の賃金が基準を満たしていても社会保険の対象にはなりません。

健康保険については、扶養家族として親の属している会社で加入するか、自分で健康保険料を支払って加入します。また、20歳になったら国民年金への加入が必要です。

ただし、卒業見込証明書を有する人で、卒業前に就職した事業所で卒業後も引き続き勤務する予定の人や、休学中、夜間の学校に通う学生は、他の条件を満たせば社会保険に加入できます。

参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構
参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

2. 季節労働者の場合

契約期間が4か月以内の季節労働者は、「特定適用事業所で働く短時間労働者」の条件のひとつである「2か月よりも長期で雇われる見込みがある」を満たしていますが、被保険者にはなれないと定められています。契約期間が4か月を超える場合は、社会保険に加入できます。

また、契約期間が6か月以内の臨時的事業で雇われる人も、社会保険には加入できません。短期間のプロジェクト事業など、事業が終了すると雇用関係がなくなる人が該当します。

どちらのケースも、「常時使用される従業員」には該当しないからです。

参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構
参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構


契約社員の社会保険手続き時に留意したい点

社会保険の加入条件を満たす契約社員がいる場合は、決められた期限までに手続きを行う必要があります。ここでは、契約社員の社会保険手続き時に留意したい点を解説します。

1. 加入条件を満たす場合に加入手続きをしないと違法になる

従業員が社会保険の加入条件を満たしているにも関わらず加入手続きを行わなかった場合は、法律違反になるので注意しましょう。

行政指導を受けても手続きが行われなければ、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、これまで支払っていなかった保険料を、過去2年に遡って徴収されるケースもあります。

社会保険料は労使折半であるため、企業にとっては負担になりますが、社会保険逃れは従業員や社会の信用を失うことになるため、絶対に避けましょう。

2. 従業員を採用した場合、加入手続きは5日以内に行う

社会保険の加入手続きは、雇用開始から5日以内に行うことが企業に義務付けられています。

協会けんぽを利用している場合は、日本年金機構の窓口などで健康保険と厚生年金の手続きを同時に行えます。従業員に年金番号などを確認して、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を記入・提出しましょう。

健康保険組合を利用している場合は、それぞれ手続きが必要です。

3. 加入時には配偶者や扶養家族も同時に手続きを行う

社会保険の加入手続きを行うときは、採用者の家族状況や収入などを確認して、扶養になる人がいるかどうかを確認しましょう。

厚生年金では、収入が一定以下の配偶者を「国民年金第3号被保険者」として扶養にできます。第3号被保険者になった配偶者は、保険料の支払いなしで国民年金に加入できるので忘れずに手続きしましょう。

健康保険では、収入が一定以下の同居家族などは「被扶養者」として勤務先の健康保険に加入できます。保険料負担は勤務する本人だけで、家族の保険料は不要です。

参考:た行 第3号被保険者|日本年金機構
参考:被扶養者とは?|全国健康保険協会


契約社員の社会保険のまとめ

契約社員の社会保険加入条件や手続きで注意したい点を解説しました。

契約社員や短時間労働者の社会保険の加入条件は変更になることがあるため、常に最新情報を確認しましょう。直近では、従業員数101人以上500人未満の企業に勤務し条件を満たした短時間労働者が、令和4年10月1日から新たに社会保険に加入することになります。

手続きの期限も明確に定められているため、社会保険の加入条件を満たしている従業員がいる場合は速やかに手続きを行いましょう。

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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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