法人の固定資産税とは? 納付期限や支払い方法、節税対策などを解説
法人所有の土地・家屋や製造設備などの機械装置、プリンターやパソコンなどの器具・備品には、固定資産税が課せられます。
この記事では、法人の固定資産税の課税対象となる固定資産や、税額の計算方法、納付期限や納付手続きの種類などをまとめました。
法人の固定資産税を節税できる可能性がある方法も紹介しているので、よく読んで参考にしてみてください。
法人の固定資産税とは
固定資産の毎年1月1日現在の所有者は、その価値に応じて固定資産税が課税されます。
ただし、固定資産のうち、車輛等については別途、自動車税が課税されているため除外され、「無形固定資産」についても、固定資産税の対象からは除外されています。
固定資産のうち、「土地や家屋等」については、所轄する市区町村で「固定資産課税台帳」を持っており、それに基づいて課税されます。
一方、それ以外の固定資産のうち事業用のものである「償却資産」、例えばプリンター、複合機、パソコン、看板、家具、工具、航空機、船舶などは、申告することによって、所轄する市区町村において賦課決定し、納付書が届く仕組みになっています。
課税対象となる固定資産のうち、代表的なものは以下の通りです。
- 土地:畑、田、牧場、山林、宅地など
- 建物:工場、店舗、倉庫、住家など
- 償却資税
-構築物・・・舗装工事、門扉、看板工事等
-機械装置・・・製造設備等
-船舶
-航空機
-車輛・運搬具・・・自動車税等の対象外の車輛等
-器具・備品・・・プリンター、複合機、パソコン、家具、工具 等
法人の固定資産税の計算方法
固定資産税は、課税標準額に税率を乗じて計算されます。
課税標準額は、土地及び建物等については、市区町村にある「固定資産課税台帳」に掲載されています。
ただし、土地の場合、軽減税率や優遇措置の対象になっている場合があり、減額されている場合があります。
償却資産の場合は、前年分に対して、本年1月1日に保有する償却資産について申告を行い、市区町村で賦課決定されて納付書が送られてきます。
税率については、1.4%が標準となっています。
ただし、市街化区域内にある土地及び建物に対しては、別途都市計画税が0.3%課税されます。
ここに挙げた固定資産税や都市計画税の税率は標準的なものであり、地域で加重されているところもあります。
法人の固定資産税の納付期限
固定資産税は、固定資産が所在する市区町村による賦課課税方式を採っています。
市区町村により計算され、決定された税額により納税通知書や納付書が届き、納付することで完結します。
納期限は納付書等に記載されています。
以前は全期分を一括で支払い、若干の割引を受けられる制度がありました。
現在でも全期前納は可能ですが、全納による割引制度はほとんどの市区町村で廃止されているようです。
各市区町村で独自に決められていますが、通常原則として4月、7月、12月、2月の4回に分納する方式となっています。
納期限については、支払い義務が発生してから約1ヵ月の期限を設けるケースが多いようです。
ちなみに東京23区の支払い時期は6月、9月、12月、2月の年4回に分かれています。
法人の固定資産税を支払う方法
法人の固定資産税を支払う方法は、一つではありません。
現金払いから、クレジットカードやインターネットバンキングを利用する形まで、さまざまな支払い方法を紹介します。
1.窓口にて現金払い
納付書と納付書に記載された額の現金を持参し、受領書と領収書を受け取って手続きは終了です。
納付場所としては、市区町村税事務所で支払うのが一番確実です。
それ以外には、郵便局やコンビニエンスストアでの支払が可能ですが、地域やお店によっては取り扱いがない場合がありますので事前の確認が必要です。
2.口座振替(自動支払)
市区町村税事務所や金融機関等に出向く必要なく、事前に届け出た口座から決められた日付に税額が引き落とされ、支払が完了します。
実際に経理部門の担当者が支払処理をする必要がなく、事務作業が軽減されるため、非常に便利な方法です。
しかし、会社側が支払自体を失念している場合、資金繰り計画から漏れてしまい、場合によっては利益計画にズレが生じる恐れもあるため注意が必要です。
口座振替を設定する際は、納付書に同封されている口座振替依頼書ないしは金融機関の市税等預金口座振替依頼書の提出が必要になります。
3.クレジットカード支払
最近増えてきた方法ではありますが、まだ全ての市区町村において支払が可能な方法ではないようです。
支払いする場合には、クレジットカード支払が可能であるかどうかを確認しましょう。
各市区町村の専用Webサイト、またはYahoo!公金支払いサイトから手続きができます。
クレジットカードを利用する場合、ポイントが貯められるからお得だという話をよく聞きます。
ただし、会社のクレジットカード利用でポイントが付与される場合、どのように経理上の処理をすればよいのか、確認が必要です。
また、ポイントを実際に利用した場合の課税関係についても注意が必要です。何について利用したのかを明確にしたうえで、税理士などに相談してください。
しかし、クレジットカード支払の場合、システム利用料等が徴収される事がありますので、損得を計算のうえ利用するようにしてください。
4.その他(ペイジー)
Pay-easyとは、インターネットバンキングや現金自動預け払い機などの手段を用いて、電子的に支払を行う仕組みです。
インターネットバンキングやモバイルバンキングを利用する場合には、事前申請が必要になります。
利用の際には、納付書に記載されている以下の情報が必要となります。
- 収納機関番号
- 納付番号
- 確認番号
- 納付区分
利用できる金融機関については事前に確認しておきましょう。
法人の固定資産税が減税になるケース
一定の条件により、法人の固定資産税が減額になる場合もあります。
以下で、法人の固定資産税が減税となる、さまざまなケースを見てみましょう。
1.土地に関する軽減措置が適用されるケース
不特定多数の人が通行する道路である場合、公共性が高いということで非課税にされる場合があります。
また、行き止まりの土地であったりして利用価値がないような場合、非課税になる場合がありますので、自治体の税事務所への問い合わせをお勧めします。
その他、軽減措置として、土地の地目変更の可能性もあります。
例えば、宅地であっても実態として農作物を作っているなどの事情がある場合、農地への宅地変更が認められる可能性もゼロではありません。
地目が農地であれば固定資産税は減額されるので、検討の余地はあります。
また、更地のままの土地であった場合、上物が建築されたタイミングで住宅用土地として土地の評価が減額され、減税となる可能性もあります。
2.家屋に関する軽減措置が適用されるケース
住宅を新たに建築する場合、多くの軽減措置が用意されています。
良質な住宅の建設を促進し、居住水準の向上及び良質な住宅ストックの形成を図るため、新築住宅にかかる固定資産税は3年間(マンション等の場合は5年間)、2分の1に減額になります。
なお、適用期限は令和6年3月31日までとなっています。
その他、新築の認定長期優良住宅については、固定資産税を5年間(マンション等の場合は7年間)2分の1に減額する特例措置もあります。
新築住宅を取得した際には確認しておきましょう。
3.事業収入が一定以上減少している中小事業者
新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が減少している中小企業者・小規模事業者に対して、固定資産税の減免が認められる制度がありました。
申請受付は原則2021年2月1日まででしたが、締め切り後の提出についても、やむを得ない理由があると市町村が認める際は、期限後の申告も認められる場合があります。
新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが激減しているような方は、申告先の市町村まで相談するのがよいでしょう。
法人の固定資産税の節税対策
法人の固定資産税を節税することは可能なのでしょうか。
以下に、法人の固定資産税の節税対策として有効となり得る手段をいくつか挙げてみます。
1.免税点を確認し措置を受ける
固定資産税にはその計算を行う場合、免税点があります。
土地の場合30万円、建物の場合20万円、償却資産の場合150万円になります。
その範囲までであれば固定資産税は課税されないので、名義を移す、贈与を行う、持分登記で名義を分けるなどの手法によって、可能であれば課税を受けない範囲へ持っていくのも一つの方法です。
2.登記簿上で分筆する
例えば、将来相続で土地等の名義を移す際、一段の土地だと評価は高くなってしまいがちです。
しかし、分筆を行ってそれぞれが別の用途で使用されていれば、各々の評価になる場合があります。
各々の評価となった場合、一段の土地より安い評価になる場合があり、トータルの資産価値を落とせる可能性があります。
固定資産税の評価額でも同じことが言えるでしょう。
このような手段も一つの方法となるのではないでしょうか。
3.不動産取得税・登録免許税の活用
通常の場合、不動産取得税の税率は4%ですが、現在は土地・家屋ともに3%の軽減税率が適用されます。
今の時点で、不動産の名義を動かすことは有利です。
ただし、令和6年3月31日が期限となっています。
また、土地と建物で同時に不動産取得税を計算する際には、課税標準額と税額を合わせて軽減させることができる場合があります。
この場合、土地については課税標準額を1/2とすることが可能です。
建物についても新築の時期に応じて、控除額があります。
ただし、要件がありますので、適用される前には税理士等にご相談ください。
固定資産税法人のまとめ
法人が所有する土地・建物や製造設備などの機械装置、プリンターやパソコンなどの器具・備品には、固定資産税が課せられます。
原則として年4回の分納となる固定資産税には、通常1カ月の納付期限が設けられており、窓口に現金を持参するほか、口座振替やクレジットカード、Pay-easyなど、さまざまな方法で納付できます。
土地や新築家屋に関しては、軽減措置が適用されるケースもあるほか、名義を分けたり、土地の地目を変更したりすることで、節税効果が望めます。
また、事業収入が一定以上減少している中小業者では、申告により減免が認められるケースもあります。
自社の所有する固定資産とそこにかかる固定資産税についてよく知り、適切な方法で節税をめざしましょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】