費用収益対応の原則とは? その必要性と形態・例外となるケースを紹介
費用収益対応の原則とは、費用と収益が計上されるタイミングを一致させなければならないという会計上の考え方です。
通常、企業が商品やサービスを提供する際には費用が先に発生し、あとから売上が立ちます。このタイムラグをなくすことで、財務状況を正確に把握することが可能になります。
この記事では、費用収益対応の原則の基礎知識や必要性、形態、例外となるケースを紹介します。経理に携わる方は、費用収益対応の原則についてしっかりと理解しておきましょう。
費用収益対応の原則とは
費用収益対応の原則とは、費用と収益が計上されるタイミングを一致させなければならないという会計上の考え方です。
費用と収益は支払いが行われたときではなく、発生したときに両方を計上します。
計上は発生主義に従って行うのが会計の基本的な考え方であり、「費用収益対応の原則」も、その原則に基づいています。
費用収益対応の原則が必要とされる理由
費用収益対応の原則が必要とされる大きな理由として、会社の財務状況を正確に把握できることがあげられます。
経営者や経理担当者が財務諸表を見る際は、売上に対する費用を差し引いて、どのくらいの収益になるかを判断します。
通常、企業が商品やサービスを提供する際には費用が先に発生し、あとから売上が立ちます。成果(売上)と、その成果を得るために必要な費用を分けて計上すると、正確な財務状況を把握しづらくなるという問題が起きます。
費用収益対応の原則を遵守することで、このタイムラグをなくすことが可能です。
費用収益対応の原則にある2つの形態
費用収益対応の原則には、次の2つの形態があります。それぞれの特徴を解説します。
1. 個別的対応
「売上高」と「売上原価」のように、商品・サービスを提供するのにかかった費用と売上を個別に対応させる形態です。売上高を計上する際は、それにかかった費用も同時に計上します。
売れ残った商品は対応する売上がないため、損益計算書には記載せず、在庫として貸借対照表に記載します。
2. 期間的対応
管理部門の人件費や事務所の賃料のように、個別の商品・サービスに紐づけられない費用を、会計期間で区切って対応させる形態です。かかった費用は、発生ベースで損益計算書に記載します。
費用収益対応の原則によるメリット
費用収益対応の原則によるメリットには、次のようなものがあります。
正確な業績の報告
費用収益対応の原則によって、内部・外部への報告を正確に行えるようになります。費用と収益が対応した適切な会計処理が行われることが、決算書利用者への有益な情報提供になります。
また、一貫した費用収益の対応がなされた会計処理を行うことで、自社の各期間の決算の比較、他社決算との比較を正確に行うことが可能です。
企業の収益性に対する適切な認識
内部管理のための情報を正確に得られる点も、費用収益対応の原則のメリットです。
企業が行う事業の収益性を正確に測れることは、内部の管理を行う従業員にとっても、外部の投資家にとっても重要です。費用収益対応の原則を守り、正確な決算を組むことがその基礎となります。
例えば、100万円の売上と、80万円の仕入を行った事業年度において、売れ残った在庫が存在する場合は、単純に「20万円の利益」とはなりません。売れ残った在庫に対する会計処理を行うことで、正確な事業年度の利益が算出されます。
例にあげた棚卸資産の決算整理のような処理を漏れなく行うことで、費用収益の対応が実現でき、企業や事業の収益性を適切に測ることにつながります。
費用収益対応の原則が例外となるケース
基本的に、費用収益対応は必ず行うべきものですが、例外もあります。具体的に見ていきましょう。
重要性の原則に基づいた対応
企業会計原則における重要性の原則の適用例として、消耗品の購入時の費用処理、経過勘定項目の未適用、引当金の未計上などがあげられています。これらは、費用収益対応の原則の例外にあたります。
税務上有利な方法を選択した場合の対応
「経過勘定項目の未適用」にも含まれますが、税務上、有利な選択を取る場合に用いられるものとして、「短期前払費用の特例」があります。
これは、支払日から1年以内に提供される役務であれば、役務提供期間が到来していなくても、決算処理上費用に計上して利益を圧縮することができるというものです。
費用収益対応の原則についてのまとめ
費用収益対応の原則は、企業の経営成績を適正に判断するために欠かせない会計上の考え方です。ただし、費用収益対応の原則には例外もあるため注意が必要です。
決められたルールに沿って費用と収益を正しく計上できるようにしましょう。
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