受取手形とは? 売掛金との違いや仕訳方法をわかりやすく解説
手形は現金化できる有価証券のことで、主に企業間の取引の決済手段でよく利用されています。すべての手形は「受取手形」という勘定科目で処理します。
この記事では、経理部の社員に向けて、受取手形の概要や売掛金や小切手などとの違いを、わかりやすく解説します。また、この記事の後半部分では、よくある受取手形の仕訳方法をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
受取手形とは
受取手形とは、企業の取引先からもらう為替手形と約束手形で、手形の支払期日に金融機関の窓口へ持って行けば、手形にある額面金額をもらえます。
また、手形割引は支払いの期日に達していなくても、割引人(銀行や金融機関など)へ提出し、手形割引料を払えば手形の額面の金額をもらえます。約束手形が廃止される理由や売掛金、小切手との違いを見ていきましょう。
約束手形は廃止される?
約束手形は、期日までに手形の代金を支払うということで、振出人が受取人へ約束する有価証券です。
- 振出人:手形を発行する側
- 受取人:手形をもらう側
しかし、約束手形は2026年を目処に約束手形が廃止されると決定しました。取引において、立場の弱い受注企業側に次のようなデメリットがあるためです。約束手形ではなく、原則として現金もしくは、電子記録債権で支払います。
- 受取人が現金を受け取るまでの期間が長い
- 手形割引料が高い
売掛金との違い
売掛金は銀行や金融機関などが介入しませんが、受取手形は処理のために介入するという違いがあります。
売掛金とは代金をすぐに受け取らずに後日受け取ることで、未収の販売代金や請負工事の未収代金などが当てはまります。売掛金は、企業の資産の一部であり、貸借対照表の流動資産へ計上します。
小切手との違い
小切手と受取手形は同じような役割がありますが、現金化できるタイミングに違いがあります 。小切手は、手形と同様に現金化できる有価証券のことで、金融機関へ提出すればすぐに現金を受け取れます。
しかし、振出人が決めた支払期日まで入金されないため、受取手形は小切手のようにすぐに現金化できません。
受取手形の仕訳方法
受取手形の仕訳方法をまとめました。ぜひ参考にしてください。
1.売上を回収したとき
ある企業がサービスの売上70万円分を、約束手形で受け取ったとしましょう。仕訳方法は次の通りです。なお、約束手形ではなく為替手形をもらった際でも、仕訳方法は同じです。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
受取手形 |
700,000 |
売上 |
700,000 |
約束手形や為替手形を用いて売上を回収した際、受取手形(資産)の勘定科目で仕訳します。
2.支払期日に決済したとき
70万円の約束手形を銀行(当座預金)で受け取った場合、仕訳方法は次のようになります。なお、為替手形でも仕訳方法は一緒です。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
当座預金 |
700,000 |
受取手形 |
700,000 |
手形の引き換えは原則として、支払期日までに支払場所の銀行で行いますが、自社の銀行に手形の取り立てを依頼できます。自社と指定された銀行の距離が遠い場合、不便なためです。
手形の取り立てを依頼した際、支払期日に決済と入金がなされたら、表のように仕訳します。
3.裏書譲渡したとき
70万円の約束手形を、A社に裏書譲渡したケースの仕訳方法を見ていきましょう。なお、為替手形の場合も同じ処理方法になります。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
買掛金 |
700,000 |
受取手形 |
700,000 |
受取手形を裏書譲渡すれば、現金がなく仕入代金をすぐに払えない場合に活用でき、すぐに現金にしたいときに役立ちます。
裏書譲渡は、満期日前に受取手形を他社に譲渡することです。手形裏面の必要事項を記載し、譲渡される人の承諾を得れば裏書譲渡できます。
ただし、もともと支払わなければならない人が代金を支払えなかった場合、支払い義務は裏書譲渡した人に生じます。
4.手形を割引に出したとき
25万円の約束手形で手形割引し、1万円の割引料が発生しました。当座預金に残高を入金している状況です。この際の仕訳方法を解説します。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
当座預金 |
240,000 |
受取手形 |
250,000 |
手形売却損 |
10,000 |
割引手形は支払期日に至っていない手形を、銀行や金融機関などの割引人へ提出し現金にしてもらえます。現金にする際に発生する手数料である手形割引料は、「手形売却損」で会計処理が可能です。
裏書手形と同様に、もともと支払う人が代金を支払えなかった場合、不渡手形になります。
つまり、銀行や金融機関に対して額面金額を返済する必要があります。割引手形は、運転資金に困った際に活用できますが、割引手形料が別途発生します。
自社の状況に応じて決めるとよいでしょう。
受取手形についてのまとめ
受取手形とは、企業の取引先からもらう為替手形と約束手形です。支払期日に金融機関の窓口へ提出すれば、手形の額面金額をもらえます。
受取手形は回収するだけではなく、割引や裏書など、使い方にはさまざまな種類がありますので、自社の状況を考慮しながら選択できるとよいでしょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】