借入金とは? 区分や種類、仕訳例からメリット・デメリットまで解説!
借入金は第三者から借りたお金のことで、企業が事業を継続するなかで、支払いや投資のために必要となります。
しかし、借入金には複数の種類や区分がありますので、会計処理方法をきちんと把握しなければなりません。
この記事では、企業の経理担当者に向けて、借入金の概要、種類、仕訳方法を解説します。また、この記事の後半部分では、借入金のメリットとデメリットを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
借入金とは?勘定科目の意味
借入金は他の人や団体から借りたお金で、借用証書や約束手形の提出、金銭消費貸借契約等のもとで金銭を借りる行為によって生じる債務です。決算書では、貸借対照表の負債の部に計上されます。
借入は、主に企業の設備投資やキャッシュフロー管理のため、金融機関や投資家などから行われます。
短期借入金と長期借入金
借入金は短期借入金か長期借入金のどちらかに区分・管理されます。
それぞれ詳しく解説します。
短期借入金
短期借入金は決算日から1年以内に返済が求められる負債です。
例えば、5月にお金を借り、4ヵ月後の9月に返すケースが該当します。短期借入金は、未来の一定の資金入手を見込みつつ、入金までの一時的な資金繰りのために使われます。
しかし、長期的な資金流動性の向上には、大きな効果を発揮しないかもしれません。
長期借入金
長期借入金は決算日から起算して、返済期限が1年を超えて先である借入金のことで、設備投資などの目的で利用されます。
返済期間は5年〜10年で、大型の設備投資では15年となるでしょう。ただし、具体的な返済期間は借入金の種類によって異なります。
大きな額の融資を受けられますが、返済期間が長期に渡るため、金融機関は企業の返済能力を厳正に審査します。
借入金は4種類
借入金は4種類あります。
- 証書貸付
- 手形貸付
- 手形割引
- 当座借越
詳しく見ていきましょう。
証書貸付
証書貸付は、金融機関と借り手が金銭貸借契約を結び、金銭消費貸付契約証書の提出で成立する借入金です。
一般的に、借入金は証書貸付を指す場合が多いでしょう。契約証書に記載される諸条件の一部を紹介します。
- 貸し出しの額
- 返済期限
- 利息率
証書貸付では、物的資産などの担保を用いて資金を調達することがあります。返済が遅れた場合、担保となる資産を売却し、その売却額で借入金を清算します。
手形貸付
手形貸付は銀行に提出した約束手形を用いて、手形の記載金額を借りる方式です。証書貸付のように手形貸付では担保を設けず、一般的に短期間の貸し付けで、運転資金確保や一時的な資金調達に使われることが多いでしょう。
しかし、返済が遅延すると不渡りとなり、企業の社会的な信用度が著しく低下するリスクがあります。
手形割引
手形割引は個人や企業が発行した約束手形を、支払い期日前に銀行や金融機関に購入してもらうことです。期日前に資金が必要な状況で、手形割引を利用するケースが多いでしょう。
しかし、手形の発行先の財務状態や実績によっては、購入の手数料(手形割引料)が高額になったり、手形割引を受けられなかったりすることもあります。
当座借越
当座借越はあらかじめ設定された融資上限内で、いつでも借入れや返済できる融資の形態です。専用の口座が用意されているため、金融機関に直接行く必要がなく、上限内であれば何度でも融資を受けられます。
借り手の返済能力や信用状況に基づいて融資が行われ、担保は必要ありませんが、審査基準は厳しいでしょう。
【パターン別】借入金の仕訳方法
借入金の仕訳方法を解説します。
1.借入金を受け取った
銀行から6,000万円の融資を次の条件で借入れした場合の仕訳方法を見ていきましょう。
- 入金先:普通預金
- 短期借入金:1,200万円
- 長期借入金:4,800万円は長期借入金に該当する。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
普通預金 |
6,000万円 |
短期借入金 |
1,200万円 |
長期借入金 |
4,800万円 |
2.利息の支払いをした
利息金1万円を支払った場合次のように仕訳されます。
なお、支払った利息分は、営業外費用の勘定科目である支払利息で処理します。
借方科目 |
借方金額 |
貸方科目 |
貸方金額 |
---|---|---|---|
支払利息 |
10,000円 |
普通預金 |
10,000円 |
3.借入金を返済した
100万円の借入金と1万円の利息を、普通預金から返済した場合の仕訳方法を見ていきましょう。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
短期借入金 |
100万円 |
普通預金 |
101万円 |
支払利息 |
1万円 |
4.長期借入金から短期借入金に振り替えた
短期借入金と長期借入金を分けて処理する場合は、決算時に来年度中の返済予定分について、帳簿上で借入金を長期借入金から、短期借入金に振替えなければなりません。
例えば、来年度の返済予定分である1,100万円を、短期借入金へ振替えたケースは次の通りです。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
長期借入金 |
1,100万 |
短期借入金 |
1,100万 |
借入金を用いるメリット
借入金を用いるメリットをまとめました。
- 事業資金にゆとりができる
- 将来への事業投資ができる
- 金融機関との信頼関係を築ける
- 会社の成長速度を早めることができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業資金にゆとりができる
会社経営において、借入金の利用は重要な戦略の一つです。必要なときに事業資金を得て、経営の安定性が保たれます。
例えば、赤字のある会社でも事業資金があれば、倒産しません。それに対して、利益を上げている会社でも、事業資金が不足すれば倒産リスクが高まります。
事業資金は会社の生命線ですので、借入金の活用は資金調達の悩みから解放されるでしょう。本来のビジネスに専念でき、事業の目標達成を目指せるはずです。
将来への事業投資ができる
製品やサービスのライフサイクルが短い昨今では、会社は常に進化し続けなければ、事業の好調を維持できません。経営者は必要に応じて、適切な資金を投下する必要があります。
借入金を使えば、事業に資金を用意でき、経営者は資金面で悩むことなく新しい事業に投資できるでしょう。
金融機関との信頼関係を築ける
融資を通しやすくしたり、事業の立ち上げに必要な口座開設をしたりと、会社と銀行の関係は非常に重要です。銀行との関係性を日々大切にし、少しずつ信頼関係を築く目的で、借入金が活用されることがあります。
会社として資金が必要でなくても、銀行からの借入れ実績を作っておくことで、資金が必要になったときに融資が受けやすいためです。
会社の成長速度を早めることができる
借入金の活用で将来への事業投資ができ、会社の成長速度を早められます。借入金には「レバレッジ効果」という言葉があり、少ない自己資金で事業を運営するより、借入れをプラスして事業投資するほうが効率よく利益を獲得できるという考え方です。
また、将来の事業計画や借入れによりもたらされる効果を、慎重に予測した上で借入金を利用するかどうかを決断するのがポイントです。
借入金を用いるデメリットやリスク
続いて、借入金を用いるデメリットやリスクを紹介します。
- 毎月の返済義務
- 経営判断の鈍化
- 経営指標の悪化
それぞれ解説します。
毎月の返済義務
借入金を利用するデメリットのうち、一番に考えられるのは資金繰りへの影響です。会社が経営難に陥った状態で返済資金を捻出するのが難しくなると、会社経営はより苦しくなります。
また、毎月返済の場合は徐々に返済が進みますが、短期借入金のように返済期日に一括して返済する場合、返済期日に資金が不足して返せないことがあるでしょう。普段から返済資金を蓄えるよう意識しなければなりません。
経営判断の鈍化
借入金を利用すると返済を意識するため、経営判断を大胆にできなくなることもあります。
例えば、次のような可能性が考えられます。
- 近い将来に好転が予想される市場環境へ投資したい
- 投資のタイミングと借入金の返済期日が重なる
- 借入金の返済に気を取られ、手元に資金を残してたい
- 躊躇して投資できない
- 投資判断に迷っているうちに、本来得られるはずの利益を逃した
借入金によって経営者の経営判断が狭まりやすいことを、十分に理解しなければなりません。
経営指標の悪化
借入金は、会社の決算書で負債項目に計上されるため、借入れすると貸借対照表に関連する各種の財務指標が悪化します。
例えば、次の2つの項目です。
- 流動資産を流動負債で除した流動比率や当座資産
- 流動負債で除した当座比率のような安全性の指標
これらの指標が悪化することで、株主や債権者などのステークホルダーにどのような影響を及ぼすかを意識する必要があります。
借入金の返済する力を判断する指標
借入金の返済力を判断する指標を解説します。ぜひ参考にしてください。
①借入金依存度
借入金依存度は、総資産に対する借入金の占有率を示す指標です。次の公式を用いて算出します。
- 借入金依存度(%) = (短期借入金 + 長期借入金 + 受取手形割引額) ÷ 総資産×100
経済産業省が2019年に行った調査の一部を紹介しますので、自社の数値と比較してみましょう。
- 全業種平均の借入金依存度の中央値:約60%で、2021年には約70%
- 宿泊業:中央値は約80%で、2021年には約100%
- 生活関連サービス業:中央値が70%で、2021年には80%超
②借入金月商倍率
借入金月商倍率は、月間売上に対する借入金の比率を示す指標で、次の公式を使用して計算します。
- 借入金月商倍率 = (短期借入金 + 長期借入金 + 受取手形割引高) ÷ (年間売上高 ÷ 12)
2016年の中小企業白書に基づくと、2014年度の借入金月商倍率は次のようになっています。
- 製造業の中小企業:平均4.81%
- 非製造業の中小企業:平均4.52
借入金についてのまとめ
借入金は他者から借りたお金のことで、借入金の種類や自社の状況により、借りられる期間や返済方法などが異なります。
それぞれのメリットやデメリットをしっかりを理解したうえで、自社にとって最適な借入方法を選びましょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】