営業外費用とは? 具体的な勘定科目一覧とよくある仕訳例をケース別に紹介
営業外費用は企業の本業以外で発生する費用です。例えば、支払利息や雑損失などが該当します。特別損失と混同されがちなため、しっかり区別して理解することが重要です。
本記事では、営業外費用の定義や該当する勘定科目一覧、仕訳例、そして特別損失との違いについてわかりやすく解説します。
経理担当者の方は、ぜひ参考にして日々の業務に役立ててください。
営業外費用とは
営業外費用とは、企業の本業以外の活動から生じた費用のうち、経常的に発生するものを指します。
借入金の利息や社債の発行に必要な費用、株式関連の損失などが主な営業外費用です。借入金が多い会社は、営業外費用が多くなる可能性があります。
経常利益の計算に必要
営業外費用は、経常利益の計算に必要です。経常利益は企業活動によって生じた利益であり、次の計算式で求めます。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
企業が得る利益には、本業で得た利益である「営業利益」のほか、不動産収入など本業以外で得た「営業外収益」も含まれます。
営業利益と営業外収益を合わせて、そこから営業外費用を差し引くことで、企業の経常的な活動によって生じた利益である経常利益が算出できます。
経常利益は「ケイツネ」とも呼ばれ、企業の収益性をはかるうえで重要な指標です。
該当する勘定科目一覧
ここでは、具体的な営業外費用の勘定科目を紹介します。各種利息や手数料、株式関連の損失などが主な営業外費用です。
勘定科目 |
詳細 |
---|---|
支払利息 |
ローンや借入金の利息 |
支払手数料 |
借入の実行に伴い発生する金融機関への手数料 |
売上割引 |
売掛金を支払期日前に支払ってもらったときの割引分 |
有価証券売却損 |
売買目的有価証券(時価変動による利益の獲得を目的に保有する有価証券)の取得価額より売却額が低かった場合に発生する損失 |
有価証券評価損 |
決算時に売買目的有価証券の評価額が取得価額よりも下がっていた場合に発生する損失 |
売上債権売却損 |
売上債権(売上代金の未回収分)の売却時に発生する損失 |
為替差損 |
決算時に外国通貨や債権債務を円換算する際の差額 |
開業費 |
事業の開始までに要した費用 |
開発費 |
新技術や資源の開発に要した費用 新経営組織の採用に要した費用 |
貸倒引当金繰入・貸倒損失 |
営業活動による取引以外で発生した貸倒れ |
雑損失 |
上のいずれの項目にもあてはまらない損失 |
営業外費用と特別損失の違い
営業外費用と間違いやすい勘定科目に、特別損失があります。ここでは、両者の違いを見ていきましょう。
発生が「経常的」か「一時的」か
特別損失とは、次の条件にあてはまる損失のことです。
- 一時的な損失
- 異常な事象により生じた損失
営業外費用は、企業の本業以外の活動から生じた費用のうち、恒常的に発生するものです。
一方の特別損失は、企業の経営活動では通常発生しない費用で、かつ一時的なものを指します。火災や地震、盗難といった、予測できない事態によって資産を損失した場合は特別損失として計上するのが一般的です。
また、同じ勘定科目であっても、その費用が経常的に発生する業種の場合は営業外費用、その他の業種では特別損失と仕訳されます。
金額が「通常」か「多額」か
営業外費用と特別損失は、損失の金額によって区別されることもあります。
多額の損失を「特別損失」とすることもありますが、どの程度が「多額」なのかという基準は明確に設けられておらず、企業の判断に委ねられています。
特別損失に該当する主な勘定科目
特別損失に該当する主な勘定科目は次の通りです。
勘定科目 |
詳細 |
---|---|
固定資産売却損 |
固定資産の売却時に発生する損失 |
固定資産除却損 |
固定資産を除却した場合に発生する損失 |
固定資産圧縮損 |
固定資産の取得時に補助金を受け取った場合、補助金に税金が課されないようにする目的で計上する損失 |
投資有価証券売却損 |
会計上の「その他有価証券」の売却によって生じた損失 |
子会社株式売却損 |
子会社の株式を売却した際に生じる損失 |
関係会社株式売却損 |
一定の株式を保有する関係会社の株式を売却した際に生じる損失 |
減損損失 |
資産の価値が投資に見合わず回収できないと判断した場合に行う「減損会計」によって生じた損失 |
盗難損失 |
盗難事件などによって生じた損失 |
災害損失 |
自然災害によって生じた損失 |
前期損益修正損 |
過去の会計期間に生じた損失を当期に計上することで発生する損失 |
社債償還損 |
社債を割引によって発行した場合の金額と額面金額の差額による損失 |
営業外費用によくある仕訳例
営業外費用として計上する項目の代表的なものとして、財務活動や投資活動に関する費用があります。最もポピュラーなものとしては、金融機関からの借入金に係る利息があげられます。
また、社債を発行した場合の金融機関への手数料や、企業が保有する有価証券を売却した際に生じる売却損も営業外費用です。
これらの費用や損失は、通常の営業活動により発生するものではありませんが、財務活動や投資活動という企業の経常的な活動によって生じるため、営業外費用に計上します。
仕訳例①金融機関からの借入金の利息
金融機関からの借入金の利息を計上する仕訳は次の通りです。
(例)銀行からの借入金の利息1,000円を、普通預金口座から支払った。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
---|---|---|---|
支払利息 |
1,000 |
普通預金 |
1,000 |
仕訳例②社債を発行時に金融機関に支払う手数料
社債を発行時に金融機関に支払う手数料を計上する仕訳は次の通りです。
(例)金融機関に社債発行手続きを依頼し、手数料1,000,000円を普通預金口座から支払った。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
---|---|---|---|
支払手数料 |
1,000,000 |
普通預金 |
1,000,000 |
仕訳例③有価証券を売却した際に発生する売却損
有価証券を売却した際に発生する売却損を計上する仕訳は次の通りです。
(例)500,000円で取得した有価証券を300,000円で売却した結果、200,000円の売却損が発生した。なお、売却金額300,000円は、普通預金口座に入金された。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
---|---|---|---|
普通預金 |
300,000 |
有価証券 |
500,000 |
有価証券売却損 |
200,000 |
営業外費用が企業に与える影響
営業外費用は、通常の営業活動とは関係ありませんが、企業が活動するうえで経常的に発生する費用を計上するための損益計算上の区分です。代表的なものとしては、借入金の利息や有価証券の売却損があります。
これらの費用は企業が行う営業活動とは直接的には関係がなく、借入金の実行や有価証券の売却といった、企業の財務活動の一貫として発生するものです。
したがって、企業の経営成績を表す損益計算書において、営業外費用を販売費及び一般管理費と区別することで、企業が本業(=営業活動)から稼得する本業の利益(営業利益)を適切に表すことができるようになります。
逆にいえば、営業外費用と販売費及び一般管理費の区別を適切に行わないと、営業利益が正しく算定されないため、本業が儲かっているのか否かが不明確となり、経営者が経営判断を適切に行うことができなくなる可能性があります。
営業外費用についてのまとめ
営業外費用は、企業の財務状況を判断するうえで重要な指標である「経常利益」を算出するために必要です。
営業外費用が多いと経常利益が減り、借入金の審査などで不利になることもあるため、正しく理解したうえで処理しましょう。
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