会費の勘定科目は複数ある! ケース別の仕訳例・消費税の扱い方を解説
会費の勘定科目について、どの勘定科目で処理を行えばよいか悩む人もいるのではないでしょうか。会費の勘定科目は複数あり、ケース別に判断が必要です。
科目を間違えると税金の金額に違いが出る可能性もあるので、正しく処理を行う必要があります。
そこで本記事では、会費の勘定科目と仕訳例、消費税の取り扱いについて詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
会費の勘定科目と仕訳例
会費の仕訳をどのように行うか、勘定科目はどれを選択すればよいのか悩む方も多いでしょう。
ここでは、主な会費の勘定科目とそれぞれの仕訳例を紹介します。
諸会費
会費を支払った場合に一般的に選択される勘定科目が諸会費です。諸会費には自治会や町会などの会費が該当します。
諸会費は1年間の短期間である会費で、比較的少額なものが多いです。
町会の年会費3,000円を現金で支払った場合の仕訳例は、以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
||
諸会費 |
3,000円 |
現金 |
3,000円 |
雑費
金額や取引数が少なく対価性のない会費は、諸会費ではなく雑費としての処理も可能です。
わざわざ諸会費という科目を作る必要性がない場合には、雑費として計上しましょう。
とはいえ、雑費の種類や額が増えると用途や内訳の管理が難しくなります。雑費勘定の使用は最低限にとどめ、出来るだけ個々の取引に応じた、具体的な勘定科目を利用するようにしましょう。
町会の年会費を3,000円で支払って、雑費として処理した場合の仕訳例は、以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
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雑費 |
3,000円 |
現金 |
3,000円 |
交際費
会費という名目であっても、取引先や得意先との親睦を深める目的で加入している団体への会費などは交際費として処理する必要があります。利用目的が接待などの事業性が高い場合は、諸会費では処理できません。
例えば、ロータリークラブの年会費20万円を普通預金から支払った場合の仕訳例は、以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
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交際費 |
200,000円 |
普通預金 |
200,000円 |
寄付金
名目は会費であっても実際には寄付に近いケースでは、寄付金として処理を行います。寄付金は、見返りなどを求めずに金銭などを支払う寄付を処理する科目です。
例えば、NPO法人や公共財団法人などへの会費は寄付金として処理します。
NPO法人の年会費5,000円を寄付として現金で支払った場合の仕訳例は、以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
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寄付金 |
5,000円 |
現金 |
5,000円 |
支払手数料
外部との取引などによる手数料などが発生する場合は、支払い手数料として処理を行いましょう。会費であっても手数料が発生する取引は多くあります。
例えば、クレジットカードなどの会費は支払わなければ利用できないため、手数料として判別できます。とはいえクレジットカードの場合は、会員資格の継続と判断することもできるので、諸会費での処理も可能です。
ただし、1度処理した勘定科目は変えずに継続する必要があります。決算書の信頼性を高めるためにも、同じ勘定科目で仕訳を行いましょう。
クレジットカードの年会費2万円を普通預金から支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
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支払手数料 |
20,000円 |
普通預金 |
20,000円 |
前払費用
会費を複数年分まとめて支払うケースもあるでしょう。
そのような場合に選択する勘定科目は、前払費用です。
経費として計上できるのは1年分なので、まとめて払った残りの分は前払費用として処理を行います。
5年分の会費5万円を普通預金から支払った場合の仕訳例は、以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
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諸会費 |
10,000円 |
普通預金 |
50,000円 |
前払費用 |
40,000円 |
借方 |
貸方 |
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諸会費 |
10,000円 |
前払費用 |
10,000円 |
翌年以降の会費はその都度、諸会費に振替をします。
繰延資産
繰延資産とは、支払いを行った費用の効果が1年以上に及ぶ資産のことです。
支払い後、長期間にわたって対価を生む可能性が高い場合には、一度資産として計上し複数年で償却する必要があります。
繰延資産は償却期間が決まっているものもあるので、その場合は決められた年数で資産を割り、均等に償却していきます。繰延資産は長期前払費用として処理するのが基本です。
例えば、フランチャイズの加盟金50万円を普通預金から支払った場合(この入会金は5年間で償却する)の仕訳例は以下のとおりです。
入会金支払時
借方 |
貸方 |
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長期前払費用 |
500,000円 |
普通預金 |
500,000円 |
決算時
借方 |
貸方 |
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長期前払費用償却 |
100,000円 |
長期前払費用 |
100,000円 |
会費の勘定科目における消費税の取り扱い
会費には、消費税がかかる取引とそうでない取引があるので注意が必要です。
消費税は、商品やサービスを受ける対価として支払う場合に発生します。
ただし、同業者団体への会費のように支払の対価を期待することなく一方的に支払う取引については、対価性が認められないことから不課税取引となります。
消費税の不課税取引とは、支払いに対価性が認められず、そもそも消費税がかからない取引です。
一方で非課税取引とは、本来であれば消費税がかかる取引ですが、政策的な配慮等から消費税がかからない取引を指します。
会費は、多くの場合で対価性を求めることなく支払われるため、消費税の「不課税」取引となります。
しかし、クレジットカードの年会費等の会費は、会費を支払うことでサービスを利用できるという対価を得るため、消費税の課税取引となります。
会費のなかに複数の勘定科目が混在するケース
会費の中に複数の勘定科目が存在するケースでは、勘定科目の使い分けはもちろん、消費税の課税区分にも留意して取引を計上するようにしましょう。
ひとくくりで会費として支払った場合でも、実際には複数の項目が含まれているケースがあるため、注意が必要です。
正しく仕訳を計上するためには、どのような項目がいくら含まれているのかを明らかにする必要があります。
請求書等に記載してあればそれを参考にすれば問題ないですが、必ずしも明確に記載されているとは限りません。
そのような場合には、請求書の発行元に問い合わせを行い、請求項目の内訳を明らかにしましょう。
複数の勘定科目が混在する具体例として、同業者団体に支払う年会費に会報誌の購読費用が含まれる場合が挙げられます。
同業者団体に支払う年会費は対価性がないため不課税取引となりますが、会報誌の購読費用は対価性のある取引であり課税取引となります。
このように、一言で会費と言っても、その内容に応じて仕訳が異なるので注意が必要です。
会費の勘定科目についてのまとめ
会費は一般的には諸会費として会計処理を行います。内容によっては他の勘定科目での処理が必要になることもあるでしょう。
処理を間違えると税金の金額に違いがでる可能性もあるため、理解を深めた上で正しい仕訳を行うことが大切です。
ぜひこの記事を参考にして、正確な会計処理を行えるようにしましょう。