棚卸減耗損とは? 発生原因やその対策、会計処理方法をわかりやすく解説
棚卸減耗損が発生してしまい、会計処理や原因特定に悩んでいませんか?棚卸減耗損は企業にとって避けたい問題ですが、その原因を知れば対策が可能です。
本記事では棚卸減耗損の基本的な意味に加え、計算方法や仕訳方法、発生原因とその防止策を詳しく解説します。
対策をしっかり理解して棚卸減耗損を未然に防ぎたい方や、正しい仕訳方法を知りたい方に役立つ情報をお届けしますので、ぜひご一読ください。
【関連記事はこちら】
もしも経理をやることになったら… 経理の仕事シリーズ⑤ 年次決算のポイント棚卸減耗損とは
棚卸減耗損とは、実際に存在する在庫の数量が、帳簿に記載されている数量よりも少ないときに、両者の数量を一致させるために行う会計処理です。
仕入れ時の受入れ数量の確認ミスや数字の入力間違い、商品の交換など、さまざまな原因から在庫数が少なくなります。反対に、実際の在庫数量が、帳簿上の在庫数量より多い場合もあります。
その際は実際に存在する在庫数量に一致するように、棚卸資産の金額を調整する仕訳の計上が必要です。
棚卸減耗損を把握することの必要性
棚卸減耗損の把握が必要とされている理由は、在庫管理を正確に行えないからです。
在庫を的確に把握できていないと、誤った受発注を行ってしまい余計なコストがかかる恐れがあります。単体での損失は少額だとしても長期にわたって在庫数に差が生じると、決算時に不足分が高額になる可能性もあります。
健全な経営を行うためにも、棚卸減耗損を把握することは重要です。
棚卸減耗損と関係する「商品評価損」
商品評価損とは、現在の商品価値が仕入れ時よりも低下している際に行う会計処理です。時間の経過や在庫過多などの原因により価値が低下して、その差分が商品評価損にあたります。
わかりやすくいうと商品評価損は商品の価値が低下、棚卸減耗損は商品の数が減少することで起こります。
商品の価値が取得原価よりも上がった場合には、会計処理を行いません。
棚卸減耗損の求め方と仕訳
ここでは、棚卸減耗損の計算と仕訳の方法をそれぞれ解説します。
計算方法
棚卸減耗損の計算式は以下のとおりです。
「棚卸減耗損=棚卸資産の取得原価×(帳簿棚卸数量-実地棚卸数量)」
帳簿棚卸数量とは、在庫の受払簿等に記載されている帳簿上の在庫数量です。
一方、実地棚卸数量とは、実際にカウントして把握された数量です。在庫の管理が適切に行われていれば両者は一致することになりますが、在庫を紛失したり受払簿の記入を誤ったりすると、差異は発生します。
例えば、棚卸資産の取得原価が100円で帳簿棚卸数量が50個、実地棚卸数量が45個の場合は、次のような計算をします。
「100×(50-45)=500」
この場合は、棚卸減耗損は500円です。計算時に取得原価ではなく時価を用いるミスが起こりやすいので、注意しておきましょう。
仕訳方法
具体的な仕訳例は以下のとおりです。
<仕訳例1>
販売用の商品在庫(取得価額2,000円/個、帳簿棚卸数量100個)について実地棚卸を行ったところ、実在の数量は97個であった。差異(3個)の発生原因について調査したが判明しないため棚卸減耗損を計上する。
▼仕訳方法
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
棚卸減耗損 |
6,000 |
商品 |
6,000 |
※算定方法
取得原価2,000円 /個 ×(100個-97個)= 6,000円
<仕訳例2>
販売用の商品在庫(取得価額500円/g、帳簿棚卸数量6,000g)について実地棚卸を行ったところ、実在の数量は5,800gであった。差異(200g)の発生原因について調査したが判明しないため棚卸減耗損を計上する。
▼仕訳方法
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
棚卸減耗損 |
100,000 |
商品 |
100,000 |
※算定方法
取得原価500円 /g ×(6,000g-5,800g)= 100,000円
棚卸減耗損の発生原因と対策
ここでは、棚卸減耗損の発生原因と対策について解説します。
棚卸しの記録ミス
棚卸しの記録・カウントミスが棚卸減耗損の原因になるケースは非常に多いです。特に人力で棚卸しを行っている場合は、商品の数え間違いなどが発生しやすいので注意が必要です。
他にも、データの打ち間違いなど入力ミスによる原因も考えられます。人為的なミスが多いため、できるだけシステムを導入するなど人のミスを防ぐ対策が有効です。
また、複数の担当者で棚卸結果をダブルチェックするのも有効な対策となります。
商品の破損・紛失
商品の破損や紛失により棚卸減耗が発生するのもよくあるパターンです。在庫管理が適切に行われていない場合は、商品の破損や紛失が多くなります。
商品によっては品質管理が難しいものもあるため、適切な在庫管理を徹底する必要があるでしょう。
また、マニュアルや管理ルールなどの共有も重要です。
盗難や窃盗
棚卸減耗損の発生原因には盗難や窃盗も考えられます。外部の犯罪だけでなく、内部の不正が原因で棚卸減耗損が起こる可能性もあるでしょう。
商品の陳列の改善や監視カメラや防犯ゲートの導入、内部の入室管理などの対策が必要です。
棚卸減耗損についてのまとめ
棚卸減耗損とは、帳簿に記載されている在庫数量と実際に存在する在庫の数量が合わない場合に、両者を一致させるために行う会計処理です。
経営者は、帳簿に記載されている数量に基づいて経営判断を行うことになるため、放置していると経営状態や戦略面で支障をきたす恐れがあります。
棚卸減耗損の計算や仕訳方法を正しく理解し、発生原因や対策も把握することで健全な経営を行うことができるでしょう。