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未成工事受入金とは? 負債に分類される理由や消費税の扱い方、仕訳方法を解説

監修者: 税理士・米国税理士・認定心理士  竹中 啓倫

未成工事受入金とは? 負債に分類される理由や消費税の扱い方、仕訳方法を解説

「未成工事受入金」は建設業会計で使われる勘定科目です。

請け負った未完成の工事に対して受け取るお金のことですが、一般会計では「前受金」勘定に当たります。

未成工事受入金は、契約時に採用した売上高計上の基準によって仕訳方法が異なるものです。

未成工事受入金の概要や、2つの基準ごとの具体的な仕訳方法を解説します。


未成工事受入金とは

「未成工事受入金」は、建設業の会計で使用される勘定科目です。未完成の工事に対して受け取ったお金を処理するために使います。

未成工事受入金は、建設業会計では当然に発生します。発生する理由は受け取った代金を自社の売上として計上できる時期と、工事を行うために費用がかかる時期とのズレがあるためです。

未成工事受入金を売上として計上できるようになるのは、工事が完成して発注者に引き渡し、建物の所有権が発注者に移った段階です。

しかし、工事請負業者は、たとえ請け負った工事が未完成でも、職人への人工賃はすぐに支払う必要があります。

そのほかの原材料費も含めると原価が高額になるため、事前にある程度の金額を未成工事受入金として受け取っているのです。

なぜ負債に分類されるのか

未成工事受入金は「前もって受け取ったお金」でありながら、仕訳の際は貸借対照表の負債の部に分類されます。その理由は、工事を完成させる義務が発生しているためです。

たとえ依頼人から代金を事前にもらっていても、建築中の物件の工事が完成して発注者に引き渡すまで、その代金はあくまでも「預かっているお金」に過ぎません。

もし、引き渡し前に発注のキャンセルがあれば、未成工事受入金も返還しなくてはならないのです。

言い換えれば、未完成の工事に対して受け取ったお金は、発注者からの借入と同様の性質を持っているのです。

そのため売上として計上できず、流動負債として処理されます。

負債はどんな勘定科目か

会計基準委員会の討議資料「財務会計の概念フレームワーク」では、負債を以下のとおり定義しています。

「負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物をいう。」

つまり負債は、未成工事受入金のように「将来的に引き渡す義務があるもの」を仕分ける勘定科目です。一般会計では、借入金や買掛金、将来の費用や損失に備える引当金などが負債に該当します。


未成工事受入金の消費税の取り扱いは?

未成工事受入金の消費税は、売上を計上するときに課税されます。

消費税法上、取引ごとに資産の引き渡しを受けた日や下請外注先が役務の提供を完了した日に計上することになっており、ほかの前受金同様、入金された段階では課税対象外です。

未成工事受入金を受け取った際は、一旦そのまま記帳し、後日、売上として振替処理をする際に消費税を忘れずに処理してください。

もし、事前に消費税額も含めた全額を未成工事受入金として受け取った場合も、対応は同様です。

なお、途中決算時に受注継続分と完成分が混在している場合は、次年度に繰り延べて、工事がすべて完成したときにまとめて消費税を計上できます。


未成工事受入金の仕訳方法

では、実際に未成工事受入金を仕訳する際の方法を解説しましょう。

なお、工事の売上高を計上する際、「工事完成基準」と「工事進行基準」のどちらの基準を使うかによって、仕訳の方法も異なります。

それぞれの基準の概要と共に、解説します。

工事完成基準を適用した仕訳

工事完成基準とは、工事が完成した後に売上を計上する方法です。

工期の短い工事で使用されることが、多くあります。

以下のケースを例に、仕訳方法を見てみましょう。

<例>
A社とビル建設の請負契約(請負代金は税抜5,000万円、税込5,500万円)を締結した。その際、手付金として100万円を受け取り、中間金2,400万円、残りの金額は工事が完成し、引き渡しをした後に受け取ることとした。

【手付金受領時】

借方

貸方

現預金

1,000,000

未成工事受入金

1,000,000

【中間金受領時】

借方

貸方

現預金

24,000,000

未成工事受入金

24,000,000

【工事完了時】

借方

貸方

完成工事未収入金

30,000,000

完成工事高

50,000,000

未成工事受入金

25,000,000

仮受消費税

5,000,000

工事進行基準を適用した仕訳

工事進行基準は、工事の進捗状況に応じて売上を計上する方法です。

工事が完了するまで、数回に分けて計上します。

工事完成基準と同じケースを例に、仕訳方法を見てみましょう。

<例>
A社とビル建設の請負契約(請負代金は税抜5,000万円、税込5,500万円)を締結した。工期は2年。手付金として100万円、中間金は初年度に2,400万円、2年目に1,000万円を受け取り、残りの金額は工事が完成し、引き渡しをした後に受け取ることとした。なお、工事進捗度は初年度の決算期で50%、2年目の決算期で30%であった。

初年度の仕訳方法

工事が長期に及ぶ場合、各年度で決算時の仕訳が必要です。

まずは、手付金と中間金を受け取ったタイミングで、以下のように仕訳します。

【手付金受領時】

借方

貸方

現預金

1,000,000

未成工事受入金

1,000,000

【中間金受領時】

借方

貸方

現預金

24,000,000

未成工事受入金

24,000,000

【決算時】
工事進行基準の場合、決算時の処理と消費税の取り扱いに注意が必要です。

まず、決算時の完成工事高は、税抜請負金額に工事進捗度をかけ合わせて算出します。今回の場合は、50,000,000×0.6=30,000,000となり、初年度の完成工事高は3,000万円です。

また、消費税は各年度の完成工事高を計上する際に認識します。これを踏まえて仕訳を行うと、以下のとおりです。

借方

貸方

完成工事未収入金

8,000,000

完成工事高

30,000,000

未成工事受入金

25,000,000

仮受消費税

3,000,000

2年目以降の場合

2年目の仕訳をする際は、初年度の状況を踏まえる必要があります。この段階の状況を整理すると、以下のとおりです。

借方

貸方

完成工事未収入金

16,500,000

完成工事高

15,000,000

仮受消費税

1,500,000

上記を踏まえつつ、初年度と同様に中間金受領時と決算時に、それぞれ以下のとおり仕訳をします。

【中間金受領時】

借方

貸方

現預金

10,000,000

未成工事受入金

10,000,000

【決算時】

こちらも1年目と同様、決算時の完成工事高は、税抜請負金額に工事進捗度をかけ合わせて算出します。

今回の場合は、50,000,000×0.3=15,000,000となり、2年目の完成工事高は1,500万円です。この時は消費税も認識する必要があるため、以下のように仕訳をしてください。

借方

貸方

完成工事未収入金

6,500,000

完成工事高

15,000,000

未成工事受入金

10,000,000

仮受消費税

1,500,000

工事進行基準で仕訳をする場合、工事進捗度は初年度だけではなく、かかった年度分すべてで計算する必要があります。

完成まで2年かかったなら、初年度と2年目の進捗度を合算しなくてはなりません。

また、入金額を完成工事未収入金のマイナスと、未成工事受入金のどちらで処理するかは、契約書を確認する必要があります。

どちらも似た勘定科目名ですが、中身は全く異なるため注意しましょう。


未成工事受入金についてのまとめ

未成工事受入金は、建設業の会計でのみ使用する勘定科目です。

一般会計の前受金に相当するものですが、建設業でも先に受け取った現預金をそのまま計上できるわけではないため、仕訳の際は注意が必要です。

加えて、工事の売上高を計上する際の基準には工事完成基準と工事進行基準の2種類があり、どちらを選ぶかによって仕訳の方法や消費税のルールが異なります。

どちらの基準で処理すべきなのかを確認し、ミスなく進めましょう。


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監修者プロフィール

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竹中 啓倫

税理士・米国税理士・認定心理士

上場会社の経理部門で個別決算を中心とした決算業務に従事する傍ら、竹中啓倫税理士事務所を主宰する。
税理士事務所では、所得税・法人税を中心に申告業務を行っている一方で、外国税務に関するセミナー講師を行っている。
心理カウンセラーとして、不安を抱える人々に対して寄り添って、心の不安に答えている。
税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

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