連結会計とは? 基礎から実務まで徹底解説

連結会計とは、親会社とその子会社などの個別の財務諸表を一つの財務諸表として、グループ会社全体の財政状態等を表すものです。連結会計は原則として子会社を持つ上場企業や一部の大企業に義務付けられています。
この記事では連結会計の基本的な内容から、連結会計の仕組みなどを詳しく解説します。連結会計の仕組みを理解し、自社の会計処理に役立ててください。

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連結会計は、企業グループ全体の財政状態等を表すためのものです。原則として子会社等を持つ上場企業や一部の大企業は、連結会計を行わなければなりません。
ここでは、連結会計に関する基本的な内容や、個別財務諸表と連結財務諸表の違いを解説します。
会計については以下の記事で詳しく説明しているので、ぜひお読みください。
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連結会計は親会社と子会社、その関連会社など、支配従属関係にある複数の企業を1つの組織体とみなして、決算を行うための会計のことです。
この制度により、企業グループ全体の財政状態や経営成績を把握できます。
連結会計が必要となる企業
連結会計は、子会社等を持つ上場企業や一部の大企業に適用が義務付けられています。具体的には、上場企業及び資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社で、有価証券報告書を提出する会社が対象です。
原則としてすべての子会社が連結会計の対象とされていますが、例外もあります。具体的な要件については、後ほど説明します。
個別財務諸表とは
個別財務諸表は企業ごとに作成する財務諸表であり、その企業単体の財政状態や経営成績等を示すものです。以下の財務諸表で構成されます。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュ・フロー計算書
- 株主資本等変動計算書
個別財務諸表も連結財務諸表と同じく、決算時に作成するものです。過去には個別財務諸表が重視された時代もありましたが、2000年3月に現在の金融商品取引法にあたる法律が見直されたことをきっかけに、決算時に対象会社の連結財務諸表の開示が義務化されました。
これは株式市場の公正性や、財務諸表の透明性を維持することなどが背景にあります。
連結財務諸表の決算日
連結財務諸表の会計期間は一年間で、親会社の会計期間を連結決算日とします。子会社の決算日が親会社の決算日と異なる場合には、子会社は連結決算日に決算または仮決算を行います。
個別財務諸表と連結財務諸表の違い
個別財務諸表と連結財務諸表の大きな違いは、企業単体のものか、親会社や子会社等を単一の組織体とみなしたグループ全体のものであるかです。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
|
特徴 |
作成対象 |
財務諸表の例 |
個別財務諸表 |
企業単位で作成する |
すべての企業 |
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連結財務諸表 |
各企業から個別財務諸表を集め、グループ全体で作成する |
子会社等を持つ上場企業や一部の大企業 |
|
個別財務諸表と連結財務諸表では、作成が必要な会社にも違いがあります。個別財務諸表はすべての企業に作成義務がありますが、連結財務諸表は子会社等を持つ上場企業や一部の大企業のみが対象です。
連結会計における財務諸表の構成
連結会計では、グループ全体の財政状態や経営成績等を正確に把握するために、複数の財務諸表を作成します。ここでは、以下の財務諸表について詳しく解説します。
- 連結貸借対照表
- 連結損益計算書
- 連結キャッシュ・フロー計算書
- 連結株主資本等変動計算書
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財務諸表とはどういうもの? その種類と見方を理解しよう連結貸借対照表
連結貸借対照表は、企業グループ全体の資産・負債・純資産を表示する財務諸表です。
連結財務諸表を作成する際は、親会社と子会社の個別貸借対照表で計上された資産、負債、資本の金額を基礎として、投資と資本、債権と債務を相殺消去することで作成します。
貸借対照表について以下の記事で詳しく説明しているので、こちらも併せてお読みください。
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連結損益計算書
連結損益計算書は、企業グループ全体の損益を表示する財務諸表です。
連結損益計算書を作成する際は、親会社と子会社の個別損益計算書の収益、費用等の金額を基礎として、連結会社相互間の取引高の相殺消去、未実現損益の消去をすることで作成します。
連結キャッシュ・フロー計算書
連結キャッシュ・フロー計算書は、企業グループ全体のキャッシュ・フロー(お金の流れのこと)を表示する財務諸表です。営業、投資、財務の活動別に表示されます。
連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法は、企業ごとのキャッシュ・フロー計算書をもとに作成する方法(原則法)と、連結貸借対照表、連結損益計算書をもとに作成する方法(簡便法)の2パターンです。実務上は簡便法がよく用いられています。
連結株主資本等変動計算書
連結株主資本等変動計算書は、企業グループの純資産の部の変動を示す財務諸表です。株主資本変動計算書により純資産の部のうち、株主資本の変動理由を把握することができます。
連結会計の手順
連結会計を正確に実施するためには連結範囲を決定したり、連結修正仕訳を行ったりするなどの手順があります。
ここでは、連結会計のそれぞれのステップについて詳しく紹介します。
1.連結範囲を決定する
基本的にはすべての子会社が連結の対象となります。
ただし、支配が一時的である子会社や、連結することで利害関係者の判断を誤らせてしまう恐れのある会社は、連結の対象外となります。
2.個別財務諸表の作成と会計方針の統一をする
まずは親会社、子会社それぞれで個別財務諸表を作成します。この段階で表示に間違いがあると、後の連結の段階で影響が出てきます。間違いを見つけた場合には、個別財務諸表の段階で修正しましょう。
また、連結会計ではグループ内での会計処理の統一が必要です。
会計方針の統一は合理的な会計方針を選択することが目的のため、子会社の会計方針を親会社の会計方針に合わせる方法でも、親会社の会計方針を子会社の会計方針に合わせる方法でも問題ありません。
3.連結修正仕訳を行う
連結修正仕訳とは、連結財務諸表を作成する上で、連結上あるべき金額にするための仕訳です。各財務諸表から資本連結、内部取引消去、未実現利益の消去など、グループ内取引の影響などを排除します。この過程では親会社と子会社間の取引や、子会社間の取引などを収集し、修正仕訳を行います。
連結修正仕訳には、以下の2つがあります。
- 資本連結:投資と資本の相殺賞与
- 成果連結:連結会社間の取引の相殺消去・未実現損益の消去
これらの仕訳を正確に行うことで、グループ外部との実現した取引のみを反映した正しい財政状態等を表示することが可能です。
4.連結財務諸表を作成する
最後に連結財務諸表を作成します。
まず修正後の個別財務諸表を合算し、次に連結修正仕訳を行います。そして、会計基準等に準拠した形式で表示を組み換えて完成です。
これにより、投資家や債権者に対して、企業グループの正確な財政状態や経営成績を開示できます。
連結会計のメリット
連結会計には、企業グループの経営管理や外部とのコミュニケーションにおいて、さまざまなメリットがあります。
ここでは、主要なメリットについて詳しく解説します。
経営判断の精度が上がる
まず、経営判断の精度向上が挙げられます。連結会計を実施することでグループ全体の業績傾向や、経営状況をより詳細に知ることができ、グループ全体の実態が把握可能になるためです。
経営者はより戦略的かつ効果的な判断を下せるでしょう。結果として、グループ全体の競争力向上や持続的な成長につながり、企業価値の向上を実現できるかもしれません。
投資家へ適切な情報提供ができる
投資家に対して透明性の高い財務情報を開示できるメリットもあります。
個別に財務諸表を作成するよりも透明性が高くなる理由は、連結会計により内部取引の消去等を行うことで不正を防止できることがあるからです。
適切な情報開示により、投資家は企業グループの将来性や潜在的なリスクをより正確に把握しやすくなります。その結果、長期的な視点での投資判断が可能となります。
連結会計を活用して企業グループの財務管理を強化しよう
連結会計は、親会社、子会社とその関連会社のグループ全体の経営状況や財政状態を把握するものです。原則として子会社を持つすべての上場企業や一部の大企業に義務付けられています。
連結会計は作成にかかるコストも大きいですがさまざまなメリットがあります。
連結情報を有意義に活用し、企業グループの効果的な経営戦略の立案や財務管理に役立ててください。
連結会計を効率化するための会計システムも開発されています。リソース不足や専門家不在などの課題があるのなら一度調べてみるのもおすすめです。
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