経理業務のDX化とは? 必要性や導入の進め方を解説

経理業務の効率化に悩んでおり、DX化を解決策の一つとして考えている企業も多いでしょう。経理業務のDX化は、業務効率化や生産性向上、リスク管理強化などのメリットをもたらします。
本記事では、経理業務のDX化の必要性やメリット、進め方、活用できるツールについて詳しく紹介します。
経理業務のDX化の必要性
経理業務のDX化とは、経理のアナログ作業をデータ中心の業務へ変えることを指します。紙の書類や手作業に依存した従来の経理業務では、テレワークへの対応や業務効率化が難しい状況でした。
労働人口の減少により経理人材の確保が難しくなるなか、DX化は喫緊の課題として認識されています。さらに、電子帳簿保存法などの法改正にも対応するため、経理業務のDX化が不可欠です。
また、取引先がデータベース化された請求書を主体とし始めている場合、自社もデータ中心の経理体制へ移行する必要があります。DX化の推進は、将来的な競争力の維持にもつながるのです。
経理業務をDX化するメリット
近年、デジタル技術の活用が重要視されているなかで、経理業務のDX化には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。経理業務をDX化する主なメリットは、以下のとおりです。
・生産性が向上して、業務が効率化する
・迅速な意思決定が実現できる
・リスク管理とコンプライアンスが強化される
ここでは、上記のメリットを詳しく解説します。
生産性が向上して、業務が効率化する
経理業務のDX化では、手作業ではなくシステムによる自動化を行うので、業務効率が大幅に向上します。請求書の発行や仕訳入力など、定型的な作業を自動化することで、経理担当者の工数を削減できるのがメリットです。
また、クラウド会計ソフトの活用をすれば、リアルタイムでのデータ把握と分析が可能になり、生産性を向上させる改善策も考案しやすくなります。事務的な業務が簡略化できれば、経理担当者も戦略的な業務に注力できるでしょう。
迅速な意思決定が実現できる
経理業務のDX化では、リアルタイムでの経営状況の可視化により、データに基づく迅速な意思決定が可能になります。承認フローを自動化できれば、従来の承認業務の負担から解放されるでしょう。
また、売上や費用、キャッシュフローなどの重要な経営指標を随時把握することで、経営判断のスピードが上がります。さらに、経理データと他部門のデータを連携させることで、より戦略的な意思決定にも活用できます。
リスク管理とコンプライアンスが強化される
経理業務のDX化は、リスク管理とコンプライアンスの強化にも役立ちます。人力ではなくシステムで入力と管理を行うので、ヒューマンエラーや不正のリスクが低減され、コンプライアンスの強化につながるというわけです。
クラウド上で経理データを一元管理することで、不正アクセスや改竄のリスクを軽減できます。また、承認フローの電子化により、適切な権限管理と監査証跡の確保が容易になるのもメリットです。
経理業務のDX化の進め方
ここまで、経理業務をDX化するメリットを紹介しました。では、どのような流れでDX化を進めればよいのでしょうか。
経理業務のDX化を進める手順は、以下のとおりです。
- 現状分析により、課題を明確にする
- DX化の目的と範囲を設定する
- DX化の実行とフォローアップ
- 業務フローの見直しと改善を行う
ここでは、ステップごとに詳しく解説します。
現状分析により、課題を明確にする
経理業務のDX化の第一歩は、現状のアナログ業務を洗い出し、非効率な業務プロセスを特定することです。紙の書類の利用状況や手作業の割合、システムの導入状況などを詳細に分析しましょう。
この際、課題を可視化し、DX化による解決策を検討することが重要です。現状分析は、DX化の方向性を明確にするために欠かせないプロセスになります。
DX化の目的と範囲を設定する
DX化の推進では、目標とKPIを設定し、全体最適の視点で優先順位を付けることが重要です。経理業務の全てを一度にDX化するのではなく、重点領域から段階的に進めていくことが望ましいでしょう。
また、DX化の目的を明確にし、関係部署との合意形成を図ることも大切です。どの業務を効率化したいのかがはっきりすれば、必要十分なシステムを選定しやすくなります。
DX化の実行とフォローアップ
DX化の実行では、段階的な導入とトライアルの実施により、効果を測定しながら課題にフィードバックすることが必要です。DX化のプロセスでは、関係者への教育・トレーニングを十分に行いましょう。
システムの運用状況をモニタリングし、継続的な改善を行うことが、DX化の効果を最大化するために欠かせません。システムを導入して終わりなのではなく、導入目標を達成することを第一に考えましょう。
業務フローの見直しと改善を行う
DX化を進めていくなかで、業務フローを変更し、関係部署との調整とルール化が求められます。DXならではの業務プロセスを設計し、無駄な作業を削減することが重要です。
また、新しい業務フローを文書化し、関係者に周知・徹底することも欠かせません。当初の目的だけでなく、DX化により、新たな課題や大元の原因が発覚するケースも多々あるので、柔軟に対応できる体制を整えておきましょう。
経理業務のDX化に活用できるツール
ここまで、経理業務でDX化を進める手順を紹介しました。経理業務のDX化には、さまざまなツールが活用できます。
経理業務のDX化に活用できる主なツールは、以下のとおりです。
・クラウド会計ソフト
・電子請求書システム
・経費精算システム
・RPAツール
ここでは、上記のツールを詳しく紹介します。
クラウド会計ソフト
クラウド会計ソフトは、インターネット上で利用できる会計ソフトウェアで、仕訳や決算などの会計処理を効率化できます。リアルタイムでのデータ共有や自動バックアップ、マルチデバイス対応などの機能により、場所や時間を問わず経理業務を行えるのが魅力です。
クラウド会計ソフトでは、オンライン上で書類の管理ができるので、従来の紙ベースや会計ソフトに比べて、紛失のリスクが低くなります。
電子請求書システム
電子請求書システムは、請求書の発行から受領、保管までをペーパーレスで完結できるシステムです。請求書の電子化により、印刷や郵送のコストを削減し、支払いサイクルを短縮することが可能になります。
電子データの請求書が中心であっても、逐一メールで送付する企業も少なくありません。ですが、電子請求書システムを使用すれば、メール送信よりも素早く送付できるのもメリットです。また、電子請求書システムと電子帳簿を連携することで、ファイリングも容易になります。
経費精算システム
経費精算システムは、従業員の経費申請から承認、精算までの一連のプロセスを電子化するシステムです。レシートや領収書をスマートフォンで撮影するだけで経費申請ができ、申請内容の自動チェックや経理データの自動転記などの機能により、経費精算業務を大幅に効率化できます。
また、経費データが見える化され、必要になったときに書類の種類や日付などから簡単に検索できるのもメリットです。データベースで管理するため、物理的な保管スペースも必要ありません。
RPAツール
RPAとは、ソフトウェアロボットによる業務の自動化を実現する技術です。定型的な経理業務、例えばデータ入力や仕訳作成、帳票の作成などを自動化することで、人的ミスを防止し、業務効率を大幅に向上させることができます。
RPAツールにより事務作業の多くが自動化されるので、経理担当者が他の高度な業務に注力できるようになるのは魅力的です。
経理業務のDX化を推進して、変革を実現しよう
経理業務のDX化とは、アナログ作業をデータ中心の業務に変えることです。経理業務のDX化は、業務効率化や生産性向上、リスク管理強化など、多くのメリットをもたらします。DX化を成功させるには、まず目的と意義を明確にし、全社的な取り組みで継続的な改善を目指すことが重要です。
経理のDX化は、単なる効率化だけでなく、企業の競争力強化と持続的成長につながる経営戦略でもあります。
DX化の推進には、経理部門だけでなく、IT部門や現場部門など、全社一丸となった協力体制が不可欠です。トップダウンの強力なリーダーシップのもと、DX化の意義を浸透させ、全員の意識改革を促しましょう。