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投資について

著者: 税理士  髙橋 昌也

投資について

前回、節税についてお話をしましたが、そのなかで設備投資について簡単に触れました。

どのような種類のおしごとをするにしても、大きく成果を出すためには何かしらの投資が必要不可欠です。

今回は「ちいさなおしごと」をする上での投資について考えてみます。


「人」か「物」への投資

税理士として開業をしたのが2007年なので、気が付けば新人とは言えないくらいの時間が経ってしまいました。結構な数のお客様とお付き合いをさせて頂きましたが、その経験を通じて学んだことの1つが「やはり投資は大切」という当たり前の事実です。

仮に社長さんがどれだけ有能であったとしても、一人でできることには限界があります。よほどの特異技能があり、かつ相当に高い利益率の業務であれば、社長さん一人で仕事をするだけでも十分な利益を獲得することができるでしょう。

しかし、そのような事例は稀です。大概の場合、どのような職種であっても、ある一定の規模まで事業が育つと限界に達し、その時点で獲得できる利益の上限もみえてきます。

そして社長さんの私生活も、年齢を重ねるに従って少しずつ豪華になっていくことが多いです(結婚や出産、住宅の購入など)。そうなると、現状で獲得している利益では生活が苦しくなってきますが、すでに事業は限界を迎えています。

そのような状況がみえてきたとき、必然的に何かしらの投資をすることが求められます。投資対象は「人」と「物」です。


人こそが企業のすべて、とも言える

人が増えれば、こなせる業務量が一気に広がります。また社員が一定の技術を習得することで、受けられる業務の幅が広がることもあります。外注先を活用する方法もありますが、外部へ仕事を回すと、どうしても単価は高くつき、それほど利幅は残りません。やはり、それなりの利益が欲しい場合には、自社の社員を育てる必要があります。

古今東西、職種、規模を問わず、すべての社長さんが同じような悩みを抱えています。

育てようと思っても人が来ない。人は来たけれど定着しない。育てようとしても、思うように話を聴いてくれない。育ったと思ったら退社して独立してしまった。そんな事例を何度も目にしてきました。

特に最近では、ちいさな会社でも福利厚生に力をいれるところが増えてきました。社宅の確保や研修制度の整備など、以前は大手企業しかやっていなかったような施策に取り組む小企業が増えています。もちろん、人件費そのものの単価設定も、以前に比べてかなり高い水準へと引き上がってきています。

加えて労使関係のトラブルも残念ながら増えています。弁護士や社会保険労務士といった人事労務関係の専門家も含め、法律レベルでの争いは確実に件数が増えています。人事労務全般に関する情報がネットを介して広まったこともあり、雇われる側の方々も「自分が行使できる権利」について、かなりのレベルまで知識を有するようになってきました。

人を雇うことの難易度は、確実に上がってきています。だからこそ、人を雇い、育て、仕事の量と質を引き上げられる企業は、顧客から、そして社員候補者からもますます選ばれるようになるという好循環が発生しています。もちろん、その逆もまた然りです。

もちろん、人を雇えば雇うほど良い、というような話ではありません。大切なのは「社長さんがやりたいと思っていることの大きさ」と社員の数が一致しているか否か、ということです。結果を出せる社長さんは、そのあたりの感覚がとても優れていることは間違いありません。


設備投資と小回りの実現

そして物への投資も本当に重要です。例えば製造業などが顕著ですが、やはり「どれだけ新しい機械装置を有しているのか」は業績に大きく影響します。機械を更新しないまま古いものを使い、自動化ができる作業も人手で賄っている。そういう会社は、自然と売上が減っていきます。

中小零細企業の強みは小回りです。顧客が求める品質の製品をすぐに提供できる。その環境を維持するためには、やはりそれなりの設備投資が必要不可欠です。製造業を事例にあげましたが、もちろん建設業や運送業、サービス業でも同じようなことが言えます。


無形資産への投資

また近年では無形固定資産への投資がとても重要になってきました。ここで言う無形固定資産とは「ITやDXなどの情報技術」と「ブランドや知財など」を含めます。

上でも触れた「小回り」を実現するためには、やはりITを欠かすことはできません。同じような仕事をしている場合でも、ITをきちんと導入できているか否かによって、そのスピード感は大きく異なってきます。小売業のレジ業務から建設業における進捗管理まで、本当に多くの分野でITの有無が決定的な差異を生むようになってきました。

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そしてブランドや知財と言うと、大きな企業のものだと考えてしまいがちです。しかし、実際にはこういった分野への取り組みは、小さな会社においてこそ有用とも考えられています。生活雑貨や理美容品の販売をしようとしたら、そのブランドを形成するための努力が必要不可欠です。SNSへの投稿、地道な広報活動などブランド化を目指した活動をしなければ、その他多くの代替品に埋もれてしまいます。

実は製造業でもブランド化は必須です。自社製品の品質について、取引先に対してきちんと提示し続けることを怠った結果、「どこに頼んでも一緒だろう」と判断されてしまい、受注がドンドン目減りして・・・なんて事例は山程あります。

既存の取引先に対して、自社製品の価値を常に提示し続ける内部広報活動を怠らないこと。建設業であれば作業報告書に一手間かける。製造業であれば取引先の課題を先読みし、ときには研究開発のような部分まで含めて代行する。これらは広い意味でのブランド化であり、また知的財産の形成とも言えます。


税制も応援をしている

このように、小さな企業が成果を出すためには、人や物への投資を欠かすことができません。そしてそのことは、国や地方公共団体もよく理解しています。そのため、人や物に対する投資を旺盛に行っている企業に対しては、それ相応の特典を用意しています。人件費を引き上げたり、一定の設備投資をする企業に対する節税策の整備です。

前回の節税、そして今回の人や物に対する投資の流れで、次回は「人や物への投資に対する節税策」についてご紹介します。

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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