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キャッシュアウトとは? 意味や手法、実際にあった事例を解説

キャッシュアウトとは? 意味や手法、実際にあった事例を解説

あなたは、本当の意味でのキャッシュアウトをご存じでしょうか。社内で使う意味と、企業全体で使う意味と二つの意味があります。

それに関連する、キャッシュインやキャッシュフローの意味を理解することは、経営に携わる人には必要なことです。

ここでは、キャッシュアウトの本当の意味、キャッシュフローとの違い、キャッシュアウトの手法など、さまざまな視点からキャッシュアウトを解説します。また、キャッシュアウトと企業の関係性を過去の事例と併せながら紹介します。


この記事の監修者
  税理士・米国税理士・認定心理士 

キャッシュアウトとは?

まずは、キャッシュアウトそのものの言葉の意味を解説します。

キャッシュアウトの意味

キャッシュアウトとは、文字どおり会社からお金が出ていくことを指します。キャッシュアウトの種類によって、大きく三つに分けることができます。

  1. 営業・・・通常の営業活動から生じる支払い。在庫仕入れや営業経費の支払いなど
  2. 財務・・・会社の調達資金の返済から生じる支払い。借入金の返済など
  3. 投資・・・固定資産の投資から生じる支払い。有価証券の購入、車両の購入など

キャッシュアウトとキャッシュフローの違い

キャッシュフローとは、会社のお金の流れをあらわしたものです。お金が入ることをキャッシュイン、お金が出ることをキャッシュアウトといい、二つを合わせたものがキャッシュフローと呼ばれています。

会社を維持していくためには、資金が回らないといけないので、会社経営にはキャッシュイン、キャッシュアウトのどちらも注意していくことが必要になります。


キャッシュアウトと企業の関係性

前項では、キャッシュアウトとは会社のお金の流れに関する言葉だということをお伝えしました。ここからは、会社法上においてのキャッシュアウトについてです。

株式等売渡請求

会社法上のキャッシュアウトは株式等売渡請求を意味し、スクイーズアウトとも呼ばれます。10%未満の少数株主によって100%子会社化が阻害されることに対して、その株式全部を直接売り渡すことにより、100%子会社化するよう請求できる制度です。

2014年、会社法改正により、当該子会社の株主総会決議ではなく、取締役会決議によって行うことができるように。株式等売渡請求制度の導入により、少数株主の退出を促進することとなりました。

キャッシュアウトによって、子会社化を迅速に進めることが可能

キャッシュアウトを実施することによって、100%子会社化を迅速に進めることができるようになりました。仮に1株所有することによって認められる権利(単独株主権)や少数株主権もあり、それにより大株主の権利が制限されることがあります。

たとえば、株主総会における議題提出権(会社法第303条)や株主総会における議案提出権(会社法第304条)などがそれに相当します。


キャッシュアウトで用いられる手法

会社法においてのキャッシュアウトには、さまざまな手法があります。ここでは特によく使われる手法を三つ挙げました。細かく解説します。

全部取得条項付種類株式による手法

対象会社の株式を全株式、全株式全部取得条項付き種類株式に変更することです。

これは、株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、当該株主の議決権の2/3以上の賛成を要する決議)によって、定款を変更して種類株式を発行することを記載します。

現在の株式をすべて全部取得条項付種類株式に変更して、すべての株式を取得することを決定することによって、100%子会社化を実施できます。

株式併合による手法

株主総会の特別決議によって、株式併合を実施することになります。少数株主は株式併合により、自己所有の株式が1株未満になってしまいます。

逆に言えば、1株未満になるように設定することができ、株主としての権利を制限することが可能です。実質的に100%子会社と同等の権限を取得することができます。

たとえば、100株を1株に株式併合するとなると、もともと50株もつ株主は、0.5株になるため、株式としての効力が消失します。

すると、株主としての権利を行使できなくなります。最終的に、端株は売却するしかなく、必然的に株主から強制的な退場を促されることになるのです。

株式等売渡請求による手法

株式等売渡請求による手法は会社法改正により、2014年に新たに導入された制度です。

総株主のうち議決権の9割以上を有している特別支配株主が、会社を通じて自分以外の株主に株式売却を請求する方法です。少数株主は、一定の手続きのもと、売渡請求に同意することが要求されます。


実際にあったキャッシュアウトの事例紹介

実際に行われた企業のキャッシュアウト例を見ていきましょう。どのようなメリットがあるのかがわかります。

佐渡汽船の事例

2022年、みちのりホールディングスと第四北越銀行に対して第三者割当増資を行い、さらに第三者割当増資により、みちのりホールディングスの子会社としました。

最終的には株式併合により、株主がみちのりホールディングス、新潟県、佐渡市、佐渡農業協同組合、第四北越銀行のみとなり、経営方針決定のシンプル化ができています。

みずほフィナンシャルグループの事例

みずほフィナンシャルグループ(旧称:株式会社みずほホールディングス)は、上場会社である(株)日本興業銀行、(株)第一勧業銀行および(株)富士銀行により、全面的な統合を通じ、我が国の金融システムを支える中心的な存在として、持株会社として設立された会社です。

三行は株式会社みずほホールディングスの100%子会社として存在することとなり、三行の株主は株式会社みずほホールディングスの株主となりました。


キャッシュアウトについてのまとめ

ここでは、キャッシュアウトについて紹介しました。まとめると以下のとおりです。

  • キャッシュアウトには二つの意味がある
  • 金融においてのキャッシュアウトは、お金が出ていくことを指す
  • 会社法においてのキャッシュアウトは、株式等売渡請求のことをいう
  • 会社法においてのキャッシュアウトの手法はいくつかある

経理担当者にとってはただのお金の流れを指す言葉でも、経営者にとっては会社の未来に関わる言葉であるキャッシュアウト。きちんと意味を知ることは、より理解を深める一歩となるでしょう。

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監修者プロフィール

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竹中 啓倫

税理士・米国税理士・認定心理士

上場会社の経理部門で個別決算を中心とした決算業務に従事する傍ら、竹中啓倫税理士事務所を主宰する。
税理士事務所では、所得税・法人税を中心に申告業務を行っている一方で、外国税務に関するセミナー講師を行っている。
心理カウンセラーとして、不安を抱える人々に対して寄り添って、心の不安に答えている。
税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

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