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利益剰余金とは? 内訳や配当と処分・マイナスになるのはどんな時?

監修者: 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー  内山 智絵

利益剰余金とは? 内訳や配当と処分・マイナスになるのはどんな時?

経営や経理の業務のなかで利益剰余金という言葉は、よく使われるのではないでしょうか。利益剰余金とは、純資産である株式資本のうち、資本金や資本剰余金、自己株式を除いた部分のお金です。

この記事では、経営層や経理部に向けて、利益余剰金の内訳や利益余剰金がマイナスになる理由などをわかりやすく解説します。

また、この記事の後半部分では、利益剰余金の仕訳方法をまとめました。ぜひ最後までご覧ください。


利益剰余金とは?

利益剰余金とは、純資産である株式資本のうち、資本金や資本剰余金、自己株式を除いた部分のお金です。

利益剰余金は企業の純資産の一部であり、次のような用途で使用されます。

  • 資本金の増資
  • 新事業への投資
  • 負債の返済

企業が利益剰余金を適切に運用することで、企業の成長や株主価値の向上につながるでしょう。

利益剰余金と内部留保の違い

内部留保とは、企業が過去の利益を蓄積して保有する資金のことで、これには利益剰余金や積立金が含まれます。

任意積立金とは、企業が将来の事業拡大や設備投資などの目的で自主的に積み立てる資金で、企業の成長や安定を支える役割があります。

しかし、一般的に内部留保は利益剰余金のことを指して使われており、正式な会計用語ではありません。

利益剰余金の内訳

利益剰余金の内訳は次の3つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

  • 利益準備金
  • 任意積立金
  • 繰越利益剰余

①利益準備金

利益準備金と(法定準備金)は会社法で積み立ての義務が定められているお金のことです。

企業は株主に配当をする際、配当金額の10分の1を利益準備金に積み立てなければなりません。企業がすべての利益を配当に回すことなく、一定の利益余剰金を保てるためです。

また、利益準備金は貸借対照表の純資産の部において株主資本項目と記載されています。

(出典:会社法 第448条

②任意積立金

任意積立金とは、会社が自由に決めて積み立てるお金です。貸借対照表の純資産の部に属し、利益準備金以外の「その他利益剰余金」に含まれます。

任意積立金は株主総会の決議などで設定されます。また、任意積立金は次の2つに分類されます。

  • 特定の使用目的がある:目的積立金
  • 特定の使用目的がない:別途積立金

(出典:会社法 第452条

③繰越利益剰余金

繰越利益剰余金とは、利益剰余金に含まれる任意積立金と利益準備金以外のお金です。

貸借対照表において「その他利益剰余金のうち任意積立金以外のもの」へ属しており、株主への配当の原資になります。

繰越利益剰余金は次の式で求められます。

  • (当期純利益 + 繰越利益 + 任意積立金の取り崩し額)- 期中配当額 - 配当に伴う利益準備金積立額

利益剰余金と当期純利益の関係性

利益剰余金と当期純利益は、貸借対照表と損益計算書において、唯一密接な関係がある項目です。

なぜなら、積み上がった当期未処分利益が利益余剰金へ計上されるためです。

  • 当期純利益:一会計期間(1年間)で最終的に残った純利益を株主へ分配
  • 当期未処分利益:株主へ分配されず残った利益

会社の財務成績が好調なほど当期純利益が高くなり、結果的に利益剰余金も増えるでしょう。


利益剰余金がマイナスになる理由

利益剰余金がマイナスになる理由を解説します。

業績の悪化

赤字経営などで業績が悪化している場合、過去に積み上げた利益を取崩して経営している状態ですので、利益剰余金がマイナスになるでしょう。資金繰りも苦しい状態だと想定できますので、経営状態の改善が必要です。

ただし、日本では、会社法で剰余金の配当に関する財源規制が定められているため、過剰な配当により利益剰余金がマイナスになることはありません。

(出典:会社法 第459条

過去の累計損失

過去の累積損失を、新たに得られる利益でカバーできない状況に陥った場合、企業の利益剰余金がマイナスに転落するケースがあるでしょう。このような状況に陥ると、資金調達や資本政策に影響が出ると考えられます。

企業は過去の累積損失を解消するために、業務改善や効率化、新規事業の立ち上げなどさまざまな改善策を講じなければなりません。


利益剰余金の配当と処分とは

利益剰余金の配当とは、企業が獲得した利益を株主へ支払う分配のことで、企業財産の社外流出を意味します。

一方、利益剰余金の処分とは、利益剰余金をどう使うのか決定し、社内に企業財産が残ることです。剰余金の処分には次のような項目が含まれます。

  • 事業拡大
  • 投資目的の資金確保
  • 財務状況の改善

利益剰余金の適切な処分は、企業の成長や株主価値の向上に貢献します。


利益剰余金の仕訳

利益剰余金の仕訳例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

繰越利益剰余金を配当する場合

繰越利益剰余金から、1万円分の剰余金を配当する場合、次のようになります。

ただし、剰余金を配当する場合、一定の金額を準備金として積み立てなければならないという内容が会社法で定められています。

繰越利益剰余金

110,000円

未払配当金

100,000円

利益準備金

10,000円

(出典:会社法 第454条

利益準備金を処分する場合

次の条件を元に利益準備金を処分してみましょう。

  • 繰越利益剰余金:95万円
  • 利益準備金:5万円
  • 株主配当金:90万円

繰越利益剰余金

950,000円

未払準備金

50,000円

未払配当金

900,000円


利益剰余金についてのまとめ

利益剰余金とは、純資産である株式資本のうち、資本金や資本剰余金、自己株式を除いた部分のお金です。

この記事で解説した会計上の定義や仕訳方法は経営で役立つ知識ですので、これから企業の経理や財務に携わる方は、この記事の内容を覚えておくとよいでしょう。


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監修者プロフィール

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内山 智絵

公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー

大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した後、出産・育児をきっかけに退職。

2021年春に個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。

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