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移動平均法とは? 総平均法との違いや棚卸資産管理に役立つ計算方法を解説!

移動平均法とは? 総平均法との違いや棚卸資産管理に役立つ計算方法を解説!

棚卸資産や売上原価の管理は、企業の利益を正確に把握するための重要なプロセスです。

しかし、多くの企業がその計算に悩んでいるのが現実です。「移動平均法」は、こうした悩みを解決し、より正確に利益を算出するための有効な手段です。

本記事では、移動平均法の基本的な概要に加え、具体的な計算例や総平均法との違い、さらにはどのように企業の利益管理に貢献できるのかを専門家の視点も交えて解説します。

移動平均法を理解し、企業利益の管理を効率化したい方は、ぜひご覧ください。


この記事の監修者
もりやま会計事務所  公認会計士・税理士 

移動平均法とは

移動平均法とは、棚卸資産の評価方法である平均原価法の1つです。

商品を仕入れるとき、その都度平均単価を計算します。算出された単価を払出単価として、期末の棚卸資産評価に用いる方法です。

移動平均法を採用すると、仕入れをするたびに平均単価を計算するため、期末だけでなく期中にも棚卸資産の評価ができます。

また、平均原価法には移動平均法だけでなく、総平均法など他の方法も存在します。


移動平均法と総平均法の違い

総平均法は、一定期間の仕入れをまとめて計算する方法で、仕入れのたびに計算しないという点で移動平均法と異なります。

そのため、移動平均法と総平均法では、計算にかかる手間にも違いがあります。

移動平均法は仕入れをするごとに毎回計算をするので、その分計算回数が多いです。

逆に総平均法は、一定期間の仕入れをまとめて計算するため、計算にかかる手間は少なく済みます。


移動平均法の計算方法と計算例

ここでは、移動平均法の計算方法と計算例について紹介します。

移動平均法の計算方法・公式

移動平均法に用いる公式は次のとおりです。

平均単価=(受入棚卸資産取得原価+在庫棚卸資産金額)÷(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量)

受入棚卸資産取得原価は受け入れた仕入れの金額で、在庫棚卸資産金額は受け入れる前の在庫の金額です。

具体的な計算例は次のとおりです。

例:期首が4月1日、毎月1日に仕入れをした場合

  • 4月1日:仕入れ100個・単価50円・仕入れ原価5,000円
  • 5月1日:仕入れ30個・単価100円・仕入れ原価3,000円
  • 6月1日:仕入れ50個・単価200円・仕入れ原価10,000円

上記の例では、5月1日の移動平均原価を計算をします。

(5月仕入れ額3,000円+在庫5,000円)÷(仕入れ個数30個+在庫個数100個)=61円

5月1日時点での平均単価は61円です。次に6月1日の計算をみていきましょう。

(6月仕入れ額10,000円+在庫8,000円)÷(仕入れ個数50個+在庫個数130個)=100円

6月1日時点での平均単価は100円とわかります。

とはいえ、実際には仕入れのみではなく販売も行うので、在庫が減少した分は在庫棚卸資産金額、在庫棚卸資産数量から差し引きましょう。

商品有高帳を使用した移動平均法の計算例

商品有高帳とは、商品の仕入れや販売の日付、数量や単価、金額、商品ごとの残高などを記録する帳簿です。

在庫状況や売上原価を正確に把握するために作成します。

商品有高帳を記載するときにも、移動平均法を用いることができます。

具体的な例は次のとおりです。

  • 7月5日:商品100個を単価300円で仕入れた
  • 7月6日:商品200個を単価400円で仕入れた

このように記載する場合、7月6日に単価が変わる仕入れを行っているので、移動平均法で計算をします。

(5日仕入れ額30,000円+6日仕入れ額80,000円)÷(5日仕入れ個数100個+6日仕入れ個数200個)=366円

7月6日の仕入以降に商品の払い出しがあった場合、商品有高帳の払出単価は、7月6日時点の366円を記載します。


移動平均法のメリット・デメリット

ここでは、移動平均法のメリット・デメリットについて解説します。採用する前によく確認しておきましょう。

移動平均法のメリット

移動平均法のメリットは、平均単価により棚卸資産評価額をリアルタイムで把握できることです。

評価額をその都度正確に把握することで、市場やトレンドに合わせた販売戦略を考えられます。

また、より正確な平均単価や評価額を把握できるのもメリットです。移動平均法を用いない場合は、前年度の実績などから感覚的な評価額を想定してしまうケースもあります。

しかし、移動平均法を採用すれば、感覚ではなく正確な数字を把握できます。

移動平均法のデメリット

移動平均法のデメリットは、計算の手間です。手計算の場合、仕入れのたびに計算をする必要があるため、取引数が多い企業ではかなりの手間になります。

また、計算の数が増えるとミスのリスクも同時に増加し、正確な数値が算出できない恐れがあるのもデメリットです。


移動平均法に関するよくある疑問

ここでは、移動平均法に関するよくある疑問について紹介します。

移動平均原価の算出方法は?

移動平均原価は、棚卸資産の仕入金額と在庫金額の合計値を、合計の数量で割って算出できます。

計算式は次のとおりです。

「(棚卸資産の仕入金額+在庫棚卸資産の金額)÷(仕入れた棚卸資産の数量+在庫棚卸資産の数量)」

移動平均法と先入先出法の違いは?

移動平均法は仕入れるたびに計算し直すのに対して、先入先出法は先に仕入れた商品から先に払い出すという考えの計算方法です。

移動平均法は、新しく棚卸資産を取得するごとに計算する必要があります。


移動平均法のまとめ

移動平均法では手計算の場合、計算の間違いが次の仕入れにも影響し、不正確な単価の更新が続く可能性があるため、会計処理や管理には手間がかかることを理解する必要があります。

とはいえ、期中でも棚卸資産の評価が可能で、柔軟な販売戦略の検討につながるでしょう。

移動平均法のメリットとデメリットを総合的に理解し、棚卸資産を正しく評価することが重要です。


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監修者プロフィール

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守山 幸史朗

もりやま会計事務所 公認会計士・税理士

2013年に公認会計士試験合格後、事業会社及び監査法人勤務を経て、2022年にもりやま会計事務所を開業する。

現在は主に関西地方の中小企業をメインに税務顧問のサービスを提供している。ITを積極的に取り入れ、顧客のビジネスのIT化・DX推進を得意としている。

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